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ジェノサイドに怯える俺

 俺がベッドでぐっすり眠っている間に砦で何があったのか。

 一言で言えば、同士討ちとしか思えない。もしも俺が砦から逃げ出すのが遅れていれば、あれに巻き込まれていたかもな。


 そういう意味からすれば砦からの脱出ミッションは成功だと思う。

 あの正規部隊は、2回も森の前を通ったんだからな。でも森に一瞥をくれる事もなく通り過ぎたんだよ。

 馬の死骸や俺が脱いだ服とかを見つけて調べたけど、それだけな。


 だから俺がここにいるという事はバレていない。少なくとも、俺を探し出して殺そうという奴はいなくなったと思うんだが。

 でも… なんかなあ。そいつを素直に喜べないんだよ。

 何となく心の奥底にこう… しこりのようなもんがな。


 だってさ、あの正規部隊の目的は仲間を助けるとかじゃなかったんだ。

 同じ帝国の人間なのに、それも皇女サマが拠点にしていたところだよ?

 それなのにさ、あいつらがした事は……


 ジェノサイドだ。


 対地観測衛星から送られてきた──ホロンが加工する前のデーターを見る限りでは、そうとしか言いようがない。さすがに動画は無理だったが、数分おきに受信した画像を見る限りではそうとしか解釈できないよ。


 あいつらは砦に入ったら、動く者は全て……厩舎にいた馬や家畜からペットに至るまで──全部殺して回ったように見えたんだ。

 それに、だよ。あいつらがやった事はそれだけじゃない。

 焼け残った建物にも火をつけたんだ。


 使ったのは油か何かだけじゃなくてさ、魔法も使って… だ。

 それも、だ。ここまで念入りにやったら、生存者なんかいないだろって思えるほど、徹底的に焼き払ったんだよ。


 なにせ皇女サマが魔法がらみで何かをしてるって事くらいは、他国も掴んでいるんじゃないかな。どんな国でも──よほどの弱小国家でもなければ──諜報組織くらいは持ってるだろう。

 そいつらがどこまで優秀なのかは知らんけどな。


 だが帝国は、砦で起きた事を誰にも知られたくない。

 たぶん異世界召喚に失敗したと思ってるんだろうからな。

 そいつは大掛かりな国家事業が大失敗の終わった… ってヤツだ。


 その切り口から考えると、正規部隊がやった事も納得も出来ないでもない。

 全てを無かった事にでもしたかったんじゃないのかな。このジェノサイドが証人に対する… いわゆる口封じ… って奴だとすれば、だ。

 だから、あそこまで徹底的にやるしか無かった……


 たしかに生存者がいたら都合が悪いだろうなぁ。

 だからさ、森の中に逃げ込んだ俺も捕まるんじゃないかと思ってたんだ。

 ここは街道から、そんなに遠くない。さらに白い奴と戦った跡なんか、誤魔化しようもないだろうからな。


 砦の連中には気の毒だけど、もし正規部隊が攻撃する前に砦に戻れてもどうにもならんかったと思う。だから、あいつらがジェノサイドされた事は、過ぎた事として割り切るしかない…… くよくよ悩んでいても仕方がない。

 頭では分かってるんだ。頭ではな……


 でもさ、人間ってのはな、感情の生き物なんだよ。

 割り切りたくても割り切るしかないってのは分かるんだ。

 それが唯一の選択肢だって事くらい、分かっちゃいるんだ。

 分かりたくないけど、分からなきゃならんのだろうなぁ……


『ねえねえ宿主さん?』


 っとぉお!?

 なんだよ、いきなり出て来るんじゃねぇ!


『まだ主様から言いつかったお仕事が残ってるんですけど?』

「……キャラクターメイキング、だと?」


 んなぁこたァ、聞いてねぇぞ。いくら古城のおっさんでも……


 ……いや、待てよ?


 おっさんなら、さ。今の佐久間君なら出来るんじゃないのか、って無理難題をふっかけてきそうな気がするんだよね。

 というよりも色々な意味でデフォって言うかさ、そんな気がするんだよね。

 口の悪い言い方をすりゃあさ、進級試験みたいなもんかな。


 というかさ、ゲームとかでもよくあるじゃん。

 レベルアップしたとかシナリオ進めたら出て来るイベントってさ。

 あのおっさんさ、前にも同じような事をしたもん。今から考えればさ、ウインドウの表示をラジルポ語になってたのも偶然じゃないだろ。


『じゃあ、私の真名とかから始めてくれませんか?』


 まあ、キャラクターメイキングならゲームとかで慣れてるからなぁ。

 さすがに初期値のままだと味気ないだろ。キャラ名にああああ、なんてのは俺じゃなくても、どうなんだって思うよね。

 安易にポチと命名しようとしたら言語中枢に介入されたし……


 しゃあないな、真面目にやるか。

 ウインドウの思考制御にも慣れてきたから、ちゃっちゃと済ませるぞ……


 ええと、ウインドウをもうひとつ… よし、出たな。

 ここにレジストリエディター呼び出せば良いはずだ。古城のおっさん、こんなモノまでインストールしてたんだなぁ。手間が省けるから文句は言えんけど。

 それに本来ならホロンと話しながら設定するはずだが、この方が断然早い。


 ……ふうぅう。これで、クエストクリアだ。


 属性だけは専用エディターを使わなくちゃならなかったけど、なんとか全属性を付ける事に成功したぜ。

 全属性持ちってのは、真名の意味を考えりゃ当然だからな。

 いやぁ、頭使ったぜぇ?


 6つの属性にパラメーターを割り振ってフラグを立てれば良いんだが、これがパズルになってたんだよな。フラグ同士が干渉して、一定の法則で属性が変化したり消えたりするんだ。

 メタリオンの法則を知らなかったら、全属性持ちは無理だっただろうなぁ。


 その法則を使えば属性の2重掛けとかも出来るけど、今はいいや。

 俺が対応する魔法を使えるようにならないと意味が無いんだ。分かりやすく言えばパソコンのドライバーとデバイスの関係みたいなもんだからな。


 で、性別はオンナ。種族は電子の妖精とか無かったから、近い所で妖精かな。

 あとは、そうだなあ… アシモフ・コードは有効にしとくか。


 運動中枢への介入なんかはさ、機能は残すけど制限を入れなきゃ拙い。こいつは文字通り最後の手段だから、制限解除の条件は緊急事態──たとえば俺が意識を失ったとか──に限定すべきだと思うんだ。


 あれれ? ホロンがブロックノイズになって消えちまった?

 レジストリの修正、間違えたか? ……いや、大丈夫だ。間違っちゃいない。


 じゃあ、再起動するまで気長に待つとするか……

父が持っている80年代のパソコン。まだ動くんです。

基本的なOS(それもカセットテープ!)や、5インチディスクとかも健在。

で、それで遊べるゲームの中にやり込み要素満載のゲームがあって。

さすがにグラフィックはアレですが、内容的には完璧に沼! でした……

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