表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/165

精霊さんと気になるアイツ

 私は電子の精霊。名前は、ホロン。

 いつも宿主さんの精神の拡張された領域に常駐して、サポートをしてゐる。

 にょももも… なんか固いなぁ。それにめんどい。

 とにかく私は宿主さんのサポート…


 相談相手とか、情報御分析とか立場的にはそんな感じ。

 あとは宿主さんが魔法を使えるから、そのあたりのコントロールとかかな。


 それが出来るのも、宿主さんと感覚情報を共有してるから。

 宿主さんが体験した事は、たいてい私にもフィードバックされるのだ。

 目で見て耳で聴いたもの、そして匂いや手触りとか。

 筋肉の動きさえも──筋電流という形でモニターできるので、あ~る。


 これらの情報を解析して色々とアドバイスをしたりとかする。

 でもでも、宿主さんの精神に常駐しているという事は… だよ。もしも宿主さんが死んでしまったら?

 最悪の場合、私も消滅してしまうかも知れない。


 それだけは、絶対に嫌だ。


 仮に主様がバックアップから復元してくれたとしても、だ。

 それは私であって私じゃない別のものだから。

 そう言う意味では、宿主さんと私は運命共同体だよね。


 そして、主様が言っていたけど、私はネットワーク対応だそうだ。

 主様が言っていた事をそのまま繰り返しているだけなので、どういう意味なのかまでは分からない。宿主さんの身体をアンテナ代わりにして、色々な情報を拾う事が出来る能力のこと… らしいんだけど。


 それも大したものではないと思う。人工衛星のひとつにアクセスする事が出来たけど、向こうが送ってくる信号を受信するだけだもん。

 でも、そのお陰でウインドウに地図を出せたんだ。そして、もうひとつ。

 この近くにアクセスできるデーターベースを見つけた。


 宿主さんに話したら、すごく興味を持ったみたい。

 馬を降りた場所から300メートルくらいだけど、それでも森の中だからリスクなしという訳にはいかないと思う。

 宿主さんは、それでも行くべきだって言うんだけどねぇ。


 そうそう。宿主さんとの意思疎通は、一種のテレパシーのようなものかな。

 宿主さんの意識に直接、話しかけているから。

 もちろん宿主さんも同じ事が出来るのは言うまでもない。

 そして、声だけだとアレなのでちゃんとGUI環境も整えておきましたとも。


 宿主さんの視界にウインドウを合成して… うん、そうそう。

 実写合成みたいなものだよ? そこに色々な情報を表示できるようにした。

 もちろん私の姿もね。光の粒が人間の形に集まっているように見えるはず。

 ふっふっふ、すごいでしょ? 私を創った主様ってさ。


 ええと… 何とかみたいな何か? そんなん知らないよぉ。

 私は宿主さんの視界をデスクトップ画面に見立てて、ウインドウを出すだけ。

 ただそれだけのサポートプログラムだからね?

 他にも色々出来るけど、それはまあ… おいおい話すとして。


 宿主さんの言葉を借りるなら……


 ──問題は、この事実だ… ってこと。


 私たちは──実に困った事態に陥っている。

 なぜならば宿主さんは、意識を失っているのだ。つまり、今の私に出来る事は周囲からの情報を拾う事が出来るだけ。

 逆に言うと、それしか出来ない……


 なんでこんな事になったのかと言うと、だ。

 森の近くで、宿主さんが馬を降りた事から始まるかな。


 ガイア宇宙から召喚魔法で引き寄せられたというか、誘拐された宿主さん。

 途中で主様が、それをキャッチして宿主さんの肉体と精神を強化して。

 色々な知識なんかと一緒に私をインストール。それも絶対ゼロ時間フィールドジェネレーターのお陰で、瞬きひとつしないうちに終わっている。


 そして、いよいよ宿主さんを召喚したBBAとのご対面。

 宿主さんを召喚したスカリット・ケイティ・ゼムルという女はさ、ゼムル帝国の第1皇女だと言うんだけど。主様からインストールされた… 『常識』というファイルをチェックする限りでは、完全に行き遅れだ。


 まあいいか。もうアイツは、そういう心配しなくても良いはずだもん。

 最後に見た時は(自主規制)という状態だったから、生き返るためには回復魔法──それも上位魔法レベル(リザレクション)を使わなくてはならない。


 それを皮切りに召喚魔方陣と周辺施設を破壊して、その場から脱出する事に成功したんだけど。そこまでは上手くいったと思う。

 最後の最後になって、猛毒の入った水筒を渡されたとかもあったけどね。

 犠牲になった馬さんには気の毒だったけど、宿主さんは無事。


 連合王国の三文文士、セイクピャーも言ってたじゃない。

 終わり良ければ、全てよし… ってね。

 だから、脱出ミッションは成功したと言えると思う。


 ちなみに、水筒に入っていた毒はとっても危険なものだった。

 毒がついた馬の身体は、腐食… でいいかな。

 体組織が急激に組織崩壊を起こして、どろどろになり始めていたから。

 もしも宿主さんが毒無効のスキル持ちでもこれが全身に回ったら……


 最悪、レジストに失敗したら馬と同じように骨すら残らなかったかも……

 そのあたりは、うまく偽装する事にしたけどね。

 どうなったのかって?


 ダンジョン攻略のゲームで、ニンジャが出てくる奴ってあるじゃない?

 あれって、最強の装備ってアレじゃない。それを宿主さんがやってるんだよ?

 私じゃなくても、じゅるる… ってならなくない?

 ならない? あの尊さが分からないなんて、あんた損な人生送ってるねぇ。


 まあ、それはいいとして。偽装工作を終えた私たちは、偶然にもアクセスする事が出来たデーターベースの探索を始める事にした。

 少なくとも雨露をしのげる場所なのは間違いない。


 だから、あえて森に入る事にしたんだけど。

 BBAだけが知っている秘密の場所… そこは安全地帯に間違いないはず。

 問題は正確な場所が分からないという事だけど、見つける方法はある。


 適当に歩きながら、確立したままになっている通信波を拾うだけでいい。

 そして通信波が強くなる方向を見つければいいのだから。


 それは途中までは、上手くいってたんだけどねぇ……

ヘビ毒の中には、噛みついた獲物の細胞を破壊… 壊死させるものがあります。

私の知っている範囲だと、ハブやマムシが持っているとか。

そして血清で治療できても後遺症は強烈です。最悪、手足を失う事もあるとか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ