白い悪魔に襲われた俺
宿主さんが対峙した相手。
それは、白ずくめの全身鎧を装備した騎士っぽい何か。
身長は1.8メートルくらいかな。
全体的には曲線で構成されているのに、無機質な感じがする。
そして、その戦闘は唐突に始まったんだよね……
「くそおっ、なんだこいつは!」
森の中を歩き回っていた俺なんだが。けっこう適当でな。秘密基地を探し出すために三角測量の要領で、電波の発信源を突き止めようってやつだから、そうせざるを得ない訳だ。
しばらく歩いているうちに、ちょっと開けた場所を見つけたんだが。
『宿主さん、左!』
うわっとお!
いきなり目の前に現れたのは白ずくめの鎧武者… つか騎士って感じの奴だ。
それも中の人が見えないくらいに、ガチガチに決まってる。
こんなの着ていて重くないのかね……
最初はそう思ってたんだけどね。
見た目は無機質な… なんて言ったらいいかな。そうだ、スーパーロボだ。
たしか愛称は白い悪魔とか言う、アレだ。全身鎧をモチーフにしたんだっけか。
そいつと目があった途端に、レーザーソードで斬りかかってきたんだよ。
ぶおん……
うおっとぉ! あれもマジもんかよ。
避けるのが遅かったら、あの木とおんなじ運命だったよ。太さは俺の胴回りの倍はあるぞ? それに切り口は焦げてもいないし。
どういう切れ味なんだよ…… それに体さばきも早い。
ごぉん!
全身鎧を… 手近にあった木の枝で殴った感触から、たぶんあいつの鎧は金属製だと思うんだけど、だとすると、鎧の重さは最低でも100キロ近いか?
博物館で見た戦国時代の鎧だって、重さは40キロくらいだ。
それでも試しに着せてもらったら動けなくなったもんなぁ。
「よっ… と!」
ごがぁん!
手地下な所に落ちていた木の枝で胴体を殴りつけてみたけど、お寺の鐘っぽい音がして終わりだ。腕くらいもある太い──あいつが振り回すレーザーソードのお陰で、棍棒には困らねぇ。そして全身鎧の一番の欠点は、これだ。
いくら外側が頑丈でも、中の人まではそうとは限らねぇ。
物理で殴れば、鎧は無事でも中身まではそうもいかんだろ。
それにレーザーソードだって、いつまでも使えるわけじゃない。そのうちエネルギーが底をつくはずだ。だから、そうなるまで殴り続ければいい。
こんな所まで来て、ガチで我慢比べするなんて思わなかったな。
それも、掛け金はお互いの生命ときてる。
『宿主さん、その攻撃って効いてないみたいだけど?』
じゃあ、どうするんだよ。逃げたくても隙はないぞ?
何かいい作戦は無いか?
『主様のファイルを検索… あった! これならパワーアップ出来るよ!』
なんでもいい! 物理が効いてないんだろ?
なら、このままではジリ貧… 何とかしないと、俺は死ぬぞ。
『わかったの。じゃあ、なんとか時間を稼いで! 5秒あればいいから!』
そのくらいなら……
この──ぶっとい丸太を思いっきりぶつけりゃ、何とかなるっ!
「どおりゃあっ!」
ごおぉおおん!
持っていた太い丸太を、白ずくめに思いっきり投げつけた。
よし、直撃か。これなら…… 丸太と一緒に白ずくめが吹き飛んだ。
これでどうだ?
『じゃあ、ウインドウ出すね。まず左手を引いて… そうそう。右手は……』
ホロンはウインドウに棒人間を表示させると、ゆっくりと動かした。
左手は軽く握って、引き付ける。その反動で右手を斜め上に…… か。
そのまま円を描くように右に… なんか気を練るような感じかな。
へそのあたりを中心に、何かエネルギーが集まってきた……
そして右手を腰のあたりに引き付けると、左手を…… 斜め上に振り出すと集まったエネルギーが一気に解放されて、全身を包み込んだ。
おおっと、こいつは凄い… な……
急に時間の流れがゆっくりになっって、とてつもなく感覚が鋭くなった…
周りの音が急に聞こえなくなって、きた……
『宿主さん、今だよ!』「とうっ!」
ホロンに言われるまでもなく、俺は本能的に飛びあがっていたんだ。
そして落下する勢いそのままに、白ずくめに1発の蹴りを……
ぼごぉ……
蹴りを喰らった白ずくめは、明らかにさっきとは違う奇妙な音と共に森の奥に飛ばされて、太い木にまともにぶつかって動かなくなった。
……やった、のか?
俺は、恐る恐る白ずくめに近付いてみた。
つか、あの蹴りの威力って半端なくね?
胴体の部分は、完全に潰れているよ。背中まで行ったんじゃないか?
木にぶつかったショックで左手とか肩から取れてるし。左足もこれだけ変形してりゃ、動けないだろ。
だが、それよりも何よりも驚いたのは……
吹っ飛んだ兜… 鎧もそうだけど、中身が入ってなかったんだ。完全にがらんどうってやつ。ホロンは魔法の発動は感知しなかったって言うけ… ど……
だったら、こいつは… 何なん…… だ… ?
連邦の白い奴… 私的には続編以降は邪道だと思っている派です。
もちろん、異論は、受け入れますとも。