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ヤバいモノを見た俺

 砦を出てから、おおむね1時間。


 ぽくぽくと馬上の旅を進めていた俺たちは、ようやくウインドウに表示されてた森の近くまで来た。

 これだけ時間がかかったのは、馬の足が遅かった訳ではない。

 かと言って、荷物が重い訳でもない。


『宿主さんは、馬に乗った事ないもんねぇ』


 そりゃあそうだ。地球じゃ馬に乗る必要なんか無いからな。ドゥーラでも馬を触った事がある奴すら、ほとんどいないと思って良いぞ。経験があると奴でも、観光牧場とかでの乗馬体験ってやつだろうからな。

 それだって馬に乗って決まったコースを歩くだけだ。馬の方も慣れたもんで、乗ってさえいれば勝手にゴール地点に連れて行ってくれるってヤツだよね。


 今の状態ってのが、まさにそれと同じなんだな。

 だって俺、馬に乗った事ないもん。だってさ、馬に乗るにも色々あるんだよ!

 身長制限とか、色々とな! それにだよ、鞍の上に横座りしてるんだぞ。

 いいか、跨ってるんじゃないぞ? 横座りしてるんだ。


 門番の… マルダーっておっさんがその方が楽だと言って聞かないんだよな。

 とにかく、そいつが悪いんだ。横座り専用の背もたれの付いた鞍を付けてくれたのは良いんだけどさ。

 この姿勢だとさ、別の意味で乗りにくいんだよな。


『その服装じゃ、仕方がないかも? ぷぷぷ……』


 おいこらホロン? 言いたい事があるならはっきり言えよ。

 慣れないことしてるから、いい加減疲れてんだ。


『データーベースを見つけたから、アクセスしたんだけどねぇ……』


 そう言えば人工衛星あるって言ってたな。だったら、地上にコンピューターがあっても不思議はないかもな。つかネットくらいあるだろ?

 というよりも、あるわきゃないか。電波飛んでないんだもん。

 って事は、どういう事なんだ?


『中身を見ていたらホビー用のマシンみたいだけどねぇ。それも近くにあるから辛うじてアクセス出来たけど、そうじゃなかったら無理』


 いったいどうやって… まあ後で聞けばいいか。とにかくスタンドアローンのマシンがあって、そいつはネット対応だって事だよな。

 で、そこから先にあるはずのネットには繋がらん、と。

 じゃあ、さ。そこに行って行ってみないか?


 正直言って、けつが痛いんだよ。さっきも言ったけどさ、馬に乗るの初めてなんだ。馬はこういう事に慣れてるのか、俺に負担がかからないように静かに歩いてくれてるらしいがな。

 どっかで休みたいし、コンピューターがあるってのも気になるじゃないか。


『じゃあ宿主さん、馬から降りよう。手綱を引っ張れば止まるからさ。

 言っとくけど、そうっと、だよ。じゃないと馬から振り落とされるよ?』


 ……こうか?


 ようし、止まった。あとは腰に巻きつけられてたハーネスを緩めて…

 ふぅううぅぅ、身体がバキバキだぜ。っと、いけねぇ。リュックを降ろしとかないとな。こいつには食糧をみっちり詰め込んであるんだ。

 昔から腹が減ってはなんとやら、って言うだろ。


 それに馬も疲れてるみたいだからな。放しておけば勝手にそこらへんの草をもしゃもしゃするだろ。喉が渇いたんなら近くに川があるし。

 俺も何か飲むとするか。そういや門番のおっちゃんが水筒くれたっけ。


 中身が何か知らんけど、途中で喉が渇いたら飲んだらいいって言ってたな。

 さっそくゴチに…… なあああっ!?


「鞍にぶら下げておいた水筒を取りに行ったら、馬が死んでいた件について」

『……間違いなく遅効性の毒だねぇ。たぶん(じしゅく)系かなぁ。

 ここに来る途中で(けんえつ)を見ちゃったし……』


 おっちゃんが膝にでも載せておけって受け取った水筒だが、ウザいから鞍にぶら下げておいたんだよね。で、いつの間にか中身がこぼれたんだろう。

 そいつが皮膚から沁み込んで… ついには… ってわけ。

 マルダーのおっさん、親切そうな顔をして、とんでもねえヤローだな。


『えーっとね、話は変わるけどね、宿主さんが着ている服の事なんだけどさぁ。

 ぷぷぷ… それってお稚児さん用なんだよね。それも高貴な人のお世話をする子が着るものだって』


 お稚児さん? 高貴な人のお世話… だと?


『そういう人たちって、主人から離れて単独行動なんか出来るはず無いよねぇ?

 だからさ、宿主さんは最初から疑われてたんだよ、きっと』


 ヲイ? それじゃなにか?


 あのおっちゃんは最初から俺を殺す気でいたって事か?

 というかさ、水筒の中身につてはそういう訳なのね。

 それ知ってたんなら、なんで教えてくれなかったんだよ!


 それに、この毒… か? かなり強烈だな。

 身体にかかったのはコップ半分くらいなのに、それだけで馬が死んじまったんだよ? ひとくちでも飲んでたら、アウトじゃん。


『私、悪くないもん。

 宿主さんが着てるのお稚児さん装束だって、ついさっき知ったんだもん。

 あのマシンにアクセスしなかったら、ずうぅっと分からなかったもん!』


 …えええええ? こいつかよ。ホロンがウインドウに表示した画像はすごく鮮明で、すんげー分かりやすいっつーか。ちょっとヤバすぎるくらいにな。

 ここがヤポネスだったらさ、単純所持だけでタイーホだよね……


 ……ごく。


「ね? すごいでしょ? で、ね。これなんかどぉ? もっと凄くない?」


 やめろおぉぉおおお! ぶっちゃけなくても(けんえつ)って奴だよね?

 それも映ってるのが(さくじょ)とかってさ。


 あと俺、ここに映ってるやつと会ってるよね?

 ひょっとしなくても、この服着てたのって、あいつじゃね?


『蓋然性は95%を超えるからぁ。間違いなく本人だと思うけどねぇ。

 ひょっとするとさ、あのマシンってBBAが使ってたのかも?』


 ……なんてこったい!

わ、わ、わ…… 危なかった。

マジで佐久間君に毒を飲ませるとこだった……

サイコロの神様、ありがとうございますぅ。

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