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初めて馬に乗った俺

 こうして砦を無事に脱出する事が出来たんだが。

 そして、俺は街道を馬に乗ってぽっくりぽっくり進んでいるんだよ。

 いやはや、門番の奴らも雑と言うか… 碌にチェックもしなかったよ。

 そればかりじゃなくてな……


「……お前、見かけない奴だな?」

「新入りなんですぅ。なかなかお屋敷からも出してもらえなくてぇ……」


 それを聞いて門番は、頭の先から爪先までじろじろと眺めまわしやがってさ。

 なんかこういう視線って、時々感じる事があったんだよね…… 電車に乗るときとかさ。で、どうなったかって?

 決まってるだろ。そいつの手首の関節をバラしてとっとと逃げ出したさ。


 どうも、この世界にもそういう奴がいるらしいな。

 正体がバレないように俯き加減で話してたんだが、声を作るってのは、けっこう難しいな。それで逆に怪しまれたって事はないよな?

 髪の色とかは、屋敷からかっぱらってきた帽子で誤魔化せると思うんだが…


「やっと外に出られると思ったら、姫様から急ぎでお使いに… って……」


 やたらひらひらの付いた服を着て、背中にどでかい荷物を背負ってりゃ怪しまれるのも当然ちゃあ、当然だわな。でも、近くに集落なんか無いからなぁ……


「お前… 歩いていくつもりか?」

「どうしていいのか分かんないですよぅ……」


 あー、もう。こうなったら、どうにでもなれってんだ。

 いざとなったら強行突破できるだろ… と思ってたんだが……


「……ついて来い。お前、姫様の小姓なら馬に乗れるよな?」

「え? まあ… ずいぶん練習させられましたから」

「なら、こいつに乗っていけ。それからな、俺の名前は兵隊さんじゃない。

 マルダーだ。憶えておけ」


 ……てな感じでな。

 馬を1頭貸してくれて、踏み台まで用意してくれたんだよ。

 何で踏み台かって? 悪かったな。身体が小さいからだよ!

 どうせ俺の身長は155センチしかないからな。


 それで、だ。マルダーのおっさん… つか、あんちゃんかな。

 どっちでもいいけどな。わざわざ地図と水筒を渡してくれてな。

 懇切丁寧に道順まで説明してくれたんだよ。


「気を付けて行ってこい! 急げば夜のうちにはセトラニーまで行けるはずだ」

「ありがとうございますぅ……」


 本当に、ありがとうございますぅ、だよ。

 あいつの言ってるセトラニーには行かんけどな。

 さすがに、何の準備も無しに帝国の首都に殴り込みかけるなんて無茶だろ。

 城門にたどり着けるかどうか… それさえ怪しいぜ。


「ホロン、もう一度地図を頼む」

『はいは~い、50キロ四方の地図でい~い? それより外は無理だけど』


 ホロンの地図のお陰で逃走経路の設定もバッチリだ。これだと途中から街道をそれて森の中にでも逃げ込めば、とりあえずはオッケーだと思う。

 けっこう広いし、狩りをすれば食糧には困らないかも。

 森を通り抜けたら国境線らしいから、そっちに行くのもアリかも知れん。


 というわけで、ぽっくりぽっくり。

 1時間も進んでいたら、ようやく森が見えてきた。


 それにしても、だな…… 本当にこれが街道なのかよ。

 だだっ広い草原の中で、ここだけ土がむき出しで舗装とかも全くない。獣道よりはマシって感じの道が艇国の首都につながってるなんてなぁ。

 ところどころに轍の跡がなかったさ、そんなの誰も信じないぜ。


「そう言えばさ、なんでホロンはこの辺りの地理が分かるんだよ」


 砦の中でもそうだったんだが、こいつがウインドウに地図を出してくれたんで迷子にならずに済んだんだ。建物の中までは表示してくれなかったんだけどな。

 そして地図だけじゃなくて、俺の現在位置なんかも表示されてたんだ。

 不思議に思わんほうがどうかしてるだろ。


『それはですねぇ、私が電子の精霊、ホロンちゃんだからで~す♪』


 どうやらドヤ顔をしたいようだが、光の粒が人の形をしてるだけだからなぁ。

 いまいちよく分からん。それでだな、さっきの疑問に答えろってんだ!


『ええとぉ… 人工衛星からのデーターと、あとは…』「えっ?」


 ……おい、今なんて言った?


 ここは、どう見ても中世になりかけの世界にしか見えないぞ。

 俺が知ってるのと細かい所は違うけど、あいつら着てたの皮鎧だよね。

 腰からぶら下げてたのツヴァイハンダーだったよね?

 あれってコスプレだったん? それにしては身体になじみ過ぎてない?


 それに、だよ。どう考えても、あいつら着てた鎧はマジもんだぜ?

 兵士からかっぱらった剣だってさ、どうみても本物だった。

 あれが模造刀だったら、もっと軽いからな。それにバランス調整してあるし刃も付いてた。模造刀だったらさ、刃なんか付けないし、あっても潰してるだろ。

 それに、俺、あの剣でさ、何人か斬ったよね?


『でもぉ、人工衛星あるよ? 地理情報そこから貰ったもん』


 懊悩! そんなのって、ありえないでしょおぉおおお?


『宿主さんに分かるように言うと、気象衛星とか地表観測衛星とか、だねぇ。

 ほとんどが故障してるか何かで動いてないけど』


 だ-かーら。なんで? ここって中世になりかけの世界なんだよね?

 文明社会にありがちな電磁波──ラジオとかテレビなんかの電波とか──は全く見つからなかったって言ってたじゃん。

 あの使用人通路とか台所だって、電気通ってなかったみたいだし。


 それに、なんでか知らないけど魔法だって使えるよ、俺。使ったよね?

 使ったとこ、見てたよね? つか照準とか魔力の制御やったのホロンだよね。

 あと、砦にいた兵隊さんの武器や鎧も、全部マジもんだったでしょぉおお?


 唯一の例外は武器庫にあった、アレだけじゃん。


 俺は武器庫から装備ベルトごとかっぱらってきたアレを見た。

 間違いなく、こいつは、場違いな物体(オーパーツ)だと思うんだ。

小さい頃の話ですが、豚さんに乗った事があります。

あれは何と言っていいか… 妙に感動したのを憶えています。

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