表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/165

あの子に振られた俺

 俺の名前は佐久間(さくま) 結馬(ゆうま)

 紛いもなく、誰がなんと言おうとピッカピカの高校1年生だ。

 爺ちゃんがテロリストだったとか親父が特殊工作員とかは関係ない。

 いや、そう邪険にも出来ないんだよな。


 学校では教えてくれないけど、凄く実用的なワザ… ってのを、な。

 爺さんと親父が色々と…ね。特訓を…ね。


 前は込み合った電車バスに乗るとけっこう多かったんだよね。腰のあたりとか胸元を触って来る奴が。

 女性ならまだいいが、それが脂ぎったオヤジとかだったら、どうよ?

 そういう事には、すごく役に立ったよ。特訓はきつかったけどな。


 お陰で混雑した電車やバスで悪さを仕掛けてくるような奴はいなくなったぜ。


 ちなみにな、こういうのは音をたてたり、相手に痛みを感じさせたらアウト。

 気が付いたら関節が妙な方向を向いてたというのがベストだそうだ。

 教えてもらったのは他にも色々とあるけどな。基本的には世紀末的覇者のアレに似てない事も無いような気がする。


 信じられない、だって? じゃあ、ちょっと手ェ貸してみ?

 こことここを… こうすると… な? プラーンってなっただろ。

 涙目になんなよ、痛いはずねえべ。すぐ戻してやるから。

 …ほら戻っただろ。


 じゃあ、続き… いいか?


 俺の日常てのは、いつものように俺を起こしにきた妹を布団から蹴りだして、朝飯を喰ったら自転車に乗って山ひとつ向こうにある学校に行く。

 授業が終わったら家に帰って、アニメを見るかエロゲをして寝る。

 週末は喫茶店でバイトを頑張る。


 まあ、夏休みに入ってからバイトしかしていないんだがな。

 店のマスターも現役時代に色々と苦労していたらしくてさ、午後からはバイトは強制的にオフだ。

 学生の本分は勉学にあるのだから、ちったぁ勉強しろってさ。宿題とかで分らん所はマスターの奥さんが教えてくれたお陰でかなり片付いたよ。


 で、だな。学力だけでは世の中渡っていけないというのが、学校の方針だ。

 大学に入って江戸の官庁街で働くのもいいが、給料は30年前の民間企業の平均的な水準という薄給だ。

 それなのに、過労死寸前まで残業がデフォというブラックな環境だそうだ。

 それで心を病んでいる人も少なくないそうだ。


 そうなりたくなかったら、いろいろ学べという事らしい。

 知識や技能を磨けば、将来自分がやりたい事への選択肢が増えるからな。

 たとえばあの天才中学生なんかがいい例だろ。無意識のうちに高等数学にあるような方程式をサラッと解いちゃうそうだ。


 その能力で相対性理論の特殊解を2個も見つけたって話だが、ここまで行くと都市伝説っぽいな。でも、クオーターハーフのエルフがいる事は、去年悪友共に連れられて、見物に行った夏の祭典とやらで──壁際にあるお誕生日席で本の売り子をしていた──姿を見たから間違いない。


 その子は方程式の解の件で国際科学技術庁にしょっ引かれたって話だが、その後は知らん。だってさぁ、地球の頭脳って言われてるアインシュタインの特殊相対論の特殊解だぜ?

 それにあの子はまだ中学2年だって言うじゃないか。


 ……まあとにかく、学力試験だけが全てじゃないって事なんだな。

 学力がからっきしでも、何かの才能を持って生まれてきたって事だろ。

 そういうのを見出して才能を開花させるのが本校のうんたらかんたら……

 たしか入学式の時に校長の訓示とかで言ってたような気もする。


 というわけで、うちの高校の夏休みの宿題には夏休みの工作というものもある。

 基本的には何を作っても良いんだが…… 浴衣ってのはどうなのかな。


「あら、いいじゃない。あなた、裁縫くらいできないと行き遅れるわよ?」


 そういうもんかな。

 まあ大先輩の言う事だから、間違った事は言ってないだろ。

 ちなみに店主夫妻は、そろって帝大出た後にめでたくゴールイン。大学進学じたいが、どの学校でも何人もいない一握りの天才なのに、帝大だもんなぁ。


 とにかくあの2人は、商売人として、料理人としては神がかったモノがある。

 この店の名物メニューに、うはぁんというのがあるんだが、ほかの店では絶対に作れないよな。かく言う俺も、奥さんと一緒に厨房で作らせてもらった事があるけど出来たものは… 何か分からないオブジェクトだったし。


 そんな事よりも、今日の俺には、もっと深刻かつ重要な問題があるんだ。

 高校生活で重要なイベント──告白だ。


 相手は同じクラスの里中のぞみちゃん。

 どこが気に入ったんだって? うん、お互い猫派ってところかな。

 彼女のディープに猫を愛する姿に心を打たれたというか… 彼女の周りにはどこからともなく猫が集まる。それが猫の王国のお姫様みたいに見えたんだ。


 で、思い切って告ってみたんだけど……


「私が、あなたと?」


 ええと、なんか俺、間違った事言ったかな。

 一緒に買い物行ったり映画見たりカラオケ行ったり。

 この前ふたりっきりでプールにも行ったよね。


「……ごめんなさい。そ・れ・だ・け・は、無理!!」


 ゑっ?


「自分よりスカートが似合う男子と付き合う女子がいると思う?」


 その晩は……


 ……マジで泣いたよ。

ふっふっふ、泣け。泣いてしまえ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ