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テロリストになった俺

 プランBってのは、海外のアクション映画なんかで時々出てくる強行突破ってやつだ。やらんよ? やらんからな。

 それよりも負傷者のふりをして、行ける所までは行ってだな……


「ホロン、ここの地図は出せるか?」

『ほいほーい、おまかせあれぇ』


 例のウインドウが開くと、祭祀場周りの地図が出てきた。

 緑色のワイヤーフレームで表示… って、ずいぶんクラシックな表示だな。

 それに何だよ、ここ。まるで馬鈴薯の切り口みたいじねーかよ。

 こいつは城… やっぱり違うな。ちょっと強力な砦ってとこか。


 じゃあ、騒ぎをもっと大きくしてやるか。

 その混乱にまぎれて脱出できればしめたものだ。


「おい、そこの神官!」


 わざと肩を押さえて、ふらふらと歩いていたら、案の定だ。

 駆けつけてきた兵士に見つかったよ。ったく、どこに隠れていたんだか。

 庭の雑草みたいに、あとからあとから湧いて出てきやがって……


「う… あ……」「おいっ、大丈ぶべしっ」


 ふっ、ちょろいな。辺りを見回すと… 他の連中は祭祀場の消火に気を取られていて誰も見てないか。ならこいつの剣を… 両刃の剣か。

 地球では西洋剣の… ツヴァイハンダーって奴かな。こいつは斬り裂くための剣じゃない。その重量を使って、叩き切るためのもんだ。


 とにかく貰っておくか。


「……と、色々入り込んでみたんだが」

『ここは食糧倉庫のようですね。ここにも火をつけとく?』

「当然だ。と言っても、すぐに燃え上がると足取りがバレちまうからな……」


 そんな時には爺ちゃんから教わった方法が役に立つ。

 さすがはテロリストだな。スナイプだけじゃなくて、こういう事まで知ってるんだからなぁ…… っと、これで10分くらいしてから燃え始めるだろ。

 じゃあ、次、行くか。


 とまあ、こんな感じであちこちの建物に時限発火装置を仕掛けたり、目についた兵士を襲って動けなくしておく… とかだけどな。


 とにかく今はあいつらを仕留めなくてもいい。ヤポネスは古くから一撃必殺というのを有難がる傾向があるよな。アニメや時代劇なんかだとさ、かならずこういうシーンがあるじゃん。


 でもね、そんなのは2次元の世界だけなんだな。

 現実の戦闘ってのは、そうそう都合よく進む事なんてない。

 どちらかというと、もっと泥臭いもんだよ。


「怪しい奴め。貴様、何ものべらばっ?」


 そりゃ怪しいわな。祭祀場で神官の着ていた上着と骨のお面をかぶってるとはいえ、サイズ全然違うからな。そのうえ、でっかい剣を抱えてウロウロしてるんだから、怪しさマックスって奴だ。


 だから、見つかったら──いや、敵に見つからなくても、目についた奴は有無を言わせずに剣でぶん殴ってるってわけだ。

 さっきも言ったが別に殺さなくてもいいんだ。大怪我すりゃ、それでいい。


 俺的には、生きていてもらった方が都合がいいんだよ。

 戦死者はあとで遺体を回収すれば良いけど、生き残った──重傷を負ってうめき声をあげてる奴を放置は出来んだろ。

 そいつらを手当てをしたり、安全地帯に連れ帰ったりするには人手がいる。


 そうすりゃさ、俺を追いかけ回す奴らの数が減るってもんだ。

 そのうえ、あちこちで火事が起きたりしてりゃあ、ほんと大変だよな。

 帝国の兵隊さんとやらもさ、恨むんなら俺じゃなくて花火倉庫なんか作ったお前らの上司を恨むこった。


「さて、いい具合にカオスになってきたな」

『……息をするように破壊活動をして、惨殺死体を量産する宿主さんが怖い』


 やかましい。殺してねぇよ。それに苦情なら古城のおっさんに言え。

 たぶん罪悪感とかの感情をブロックしたのは、間違いなくおっさんの仕業だかんな? 俺の本性ちゃうからな?


 いいかホロン。俺はな、平和主義者なんだ。


 とにかくこれだけ騒ぎが起きたら、中央にある屋敷の警備も手薄になるだろう。

 ここで最後の仕上げをするぞ。たぶんこの服は連中に憶えられちまったから、もう一回着替えをしといた方が良い。その方が、足も付きにくいだろ。


 なぁに、この屋敷なら…… うっひょう、こいつは都合が良いねぇ。


 騒ぎに驚いて、慌てて外に飛び出したやつがいるよ。

 ふん、おとなしく部屋の中で震えていれば良かったものを…… なまじ外に出たキミが悪いのだよ。

 おとなしく明日の俺のための布石になるがいい……


 一瞬で10メートルの距離を詰めた俺は、ターゲットの背後に回り込んで…

 気配を殺すのなんか、親父との特訓で慣れたもんだ。親父から護身術を教わるつもりが、いつの間にか爺ちゃんが混ざっててなぁ。


 するりと左腕をそいつの首に巻きつけると。ぐいっと力を込めて……


「きゃ…」


 っと、ちょっと浅かったか…… っと!


 今度は動かなくなったか。これでよし、と。

 どこか適当な部屋にこいつを引きずり込んだら、最後の仕込みをするか。

 これが上手くいったら…… ここから逃げ出す事にしよう。


 けっこう広い範囲に時限発火装置を仕込んだからな。

 最後の発火装置が作動するまで30分ちょい… か。


 さて、急いで逃げ出す算段を付けないとな……

ぎりぎり残酷表現は避けられた… はず。

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