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無謀なミッションと俺

 俺の背後には祭祀場… だったものの跡地がある。

 本来は国境防衛のための砦か何かを改造したものって感じだけどさ。

 砦って言うより宮殿… にしては小さいか。離宮ってやつ… かもな。


 ぶ厚い石塀…つか城壁っぽい壁に囲まれた敷地の真ん中にはさ、でっかい西洋風の──これこそ貴族の屋敷でござい! てな感じの屋敷が建っててさ。

 それに連なるように祭祀場があったんだ。

 そこが本丸で、頑丈な壁に囲まれてるんだな。


 それを囲む城壁と本丸の間には倉庫とか奇妙な建物が建っていたんだが、ほとんど焼け落ちたようだ。そろそろ、最後の1発が……


 どおぉ…… ん


 これでよし、と。城壁の一部に仕込んでおいた花火が爆発したか。

 どう見ても外部から侵入した工作員の仕業に見える… と、いいな。

 その惨状を見届けた俺は、その場を後にする事にした。

 行く先は…… 俺を乗せてる馬次第ってやつだ。俺は知らん。


 まあ、どうしてこんな事になったのかと言うと…… だな。


 召喚された祭祀場で、この国はヤバいという事が分かったからだ。

 ホロンの分析で分かったんだが、あの魔方陣には…… だな。

 異世界から人を呼び寄せる召喚陣としての機能のほかに、召喚した人物を洗脳して、奴隷化するための機能もあったんだ。


 それに気が付いた俺は、ソッコー逃げ出す事にしたんだよね。

 その第1段階として、祭祀場にいる奴を皆殺しにして… おもに口封じだ。

 俺の顔を知っているのは、あの場にいた奴らだけだから。


 そして誰かの服をかっぱらって… あ、これ第2段階な。

 誰かに俺の服を着せたら、そいつを惨殺死体に見せかけるって寸法だ。

 念のために顔とか見分けがつかないように(自主規制)したり、死体の数が合わないとか思われないように(けんえつ)とか(さくじょ)もやった。


 ここまでは順調だったんだよ。ここまでは、な。


 だが、問題は… だな。


 予想通り、部屋の中にいた奴らは瞬殺する事が出来たのは、古城のおっさんが身体を強化してくれたお陰だ。人を殺したのに罪悪感を感じてないのは、俺の精神に何かしたからかもな。

 そして祭祀場に中は火の海になっているのも、計画通り… にしておこう。


 そこまではいい。


 はぎ取った神官の服を着て、あのお面をかぶるまではな。

 そこまでは、計画通り… だったんだ。あとは神官のふりをして、この部屋から逃げ出すせばいい。

 その予定だったし、そこまではすんなり行ったさ。


 部屋の外を歩いてて、誰かに何か聞かれてもさ『姫様は勇者様とのお話に興じられて…』とか言っとけば、誤魔化せるだろ。

 いやいや、姫様に命じられて…… くらいが無難かな。


 それでも皇女サマが出て来るまで時間がかかり過ぎる事を怪しんで、誰かが祭祀場に入ろうと思いつくまでは、そこそこ時間がかかると思うんだ。


「だけどなぁ… あのおっさん、色々計算を間違えてないか?」

『なかなか派手な事になりましたねぇ、宿主さん』


 派手過ぎるよ、全くな。いいか、この計画のキモは、だな。

 砦の連中が祭祀場の惨状に気付くまでに、俺がどこまで移動できるかが勝負の分かれ目って事だ。ホロンがこのあたり一帯の地図を手に入れたから、逃げるにしても大体の目星はついていたんだよ。


 だが、問題は… だな。


 おっさんがくれた手紙の破壊力は予想以上だったって事だ。

 手紙を受け取った皇女様だけじゃなく、周りにいた何人かが巻き添え食って消し炭になっちまったんだ。皇女様も異世界から来た、かわいい男の子からお手紙を貰ったんだから本望だろうけどさ。


 それだけじゃなくてな、あの手紙は予想以上に長く燃えててさ。

 石で出来た床まで熔けちまったんだよね。床に刻み込まれた魔方陣もおじゃんになったのはラッキーだと思う。魔方陣てのは、術的な集積回路っぽいものなんだよね。だから作り直すにしても時間が掛かると思うんだ。


 それもまあ、いい。

 これで俺の代わりに誰か追加で召喚とかは、出来なくなった筈だ。


 仮に、だよ。

 この魔法員を再建するにも、予備の魔方陣を使うにしてもさ。

 そう簡単に召喚の儀式は出来ないだろう。

 召喚儀式のキーマンはスカリット姫じゃないかと思うんだ。


 王家の血とかが重要なファクターって事はよくある事だからな。

 そのあたりは、あとで検証するから良いとして、だ。

 ヤポネスが血統主義に拘ってるのも、そんな理由があるらしいぞ?

 そんな事を、つらつら考えながら、扉を開けた俺なんだが……


 ど… ごおぉおおお…… ん……


 まさか扉を開けた途端に、フラッシュバックが起きるなんてなぁ。

 祭祀場の建物がさ、一気に吹き飛んじまったんだよ。

 崩れ降ちた建物の残骸にも火が回っちゃってさあ……

 もうな、辺り一面火の海ってヤツだ。


「こうなったら、プランBだ!」

『あの…宿主さん、そんな計画ありました?』

「…………言ってみたかっただけじゃないかよぅ」


 ホロンの奴もノリが悪いな。まあいいか。

 こっそり抜け出す事が出来なくなったから、騒ぎを起こすしかないだろ。

 だが普通に逃げ出しても、すぐに追手がかかるのは目に見えてる。


 さて、どうするか……

佐久間君のお爺ちゃんって、たしかテロリスト?

いったい何を教え込んだのやら……

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