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異世界の皇女様と俺(後編)

 まぁ、スカリット姫の話は想像通りと言えば想像通りだな……

 しかし、魔王……ねえ?

 どこぞの御伽噺か、良くあるRPGみたいだねぇ。

 要は、俺に魔王退治をしろってか?


「どうか勇者さま。我が民を、帝国をお救い下さいませ」


 あのドールハウスで古城のおっさんが言っていた事とは全然違うな。

 でもまあ、彼女の口ぶりでは、すぐに殺されるといったこともなさそうだ。

 この皇女サマとやらの頼みを引き受けたら… 何かヒーロー的な何かをさせるつもりなんだろうけど。それだけじゃないかもな。


 たぶん徹底的に洗脳して逆らえないようにした上で、戦力として… たぶん周辺国家を侵略するための手先としてコキ使われるかもな。

 もしそうだとしたら、この願いとやらは断るっきゃないよね。


「……勇者様?」

「姫様、どうやら勇者様は御気分がすぐれぬご様子で御座います。ここは身体を休めていただくのが得策かと」


 あれは皇女サマの側近… 違うか、どっちかって言うとお世話係の爺や的な存在なのかも知れない。お世辞にも声の感じとかは年寄りだかんね。

 顔は他の4人の神官と同じように動物の頭の骨をかぶってて見えないけどさ。

 こいつの被り物とか服装は何となく、他の奴より豪華に見えるんだよね。


 ……あ、そうか。

 細かい所に金色の──たぶん純金だろう──細工が入ってるからだ。

 服装もちょっといい生地を使ってるんだろ。こいつのだけは絹か何かに見える。


 それに比べると、鎧を着てる奴の服なんか、ありゃあ木綿か麻じゃないか?

 軟らかそうに見えるけど、たぶん着潰す寸前で生地がヘタってるだけだ。

 どう見たって、ありゃ決して上等なもんじゃない。それでもあの2人は王族の護衛をしてるんなら、階級的にも上の方なんじゃないか?


 でもなぁ、逆にそこんとこが腑に落ちないんだよな。

 王族の護衛だったらさ、みすぼらしい恰好なんかできない筈なんだよ。

 ある意味、王族の護衛なんざ国の広告塔みたいなもんだ。だから、目立たない服装をする事があっても素材自体の質は落とさない。


 もっと正確に言うと、だ。質を落とせないと言うべきだ。

 そんな事をしようもんならさ、やばいなんてもんじゃない。

 絶対に国の威信に関わる大問題になるはずだ。

 それなのに、だ。それを承知で、こう… だとしたら?


 おそらくこのままここに居続ければ取り返しのつかない状況に追い込まれそうな気がしてきたぞ。一刻も早くこの場から逃げた方がいいと直感が告げている。

 初めは漠然とした勘… のようなもんだったけど、これを見たらもう駄目だ。

 誰が何と言おうと、古城のおっさんが言ってたのが正解だぞ。


 だとすると、ここから逃げ出さないと拙いな。


 ……だが待てよ?


 最初はここから脱出して、召喚した奴らへの破壊工作と… 首謀者の──つまり帝国の皇帝とやらを潰せばいいだけだと思ってた。

 だけどなぁ、俺が逃げた事で、その埋め合わせをする為に奴らが、再び勇者召喚をするかも知れないじゃないか。


 地球からまた人が召喚されるのは、避けておきたいよなぁ。


 単なる神隠しなら、まだ分かるんだよ。

 山神様に魅入られたとか、妖怪たちに化かされたとか、そんなのだからな。

 だから浦島伝説のように時間がずれる事はあっても、最終的には帰ってくる事は出来るんだからな。


 だけど、異世界召喚は一方通行で、帰りの切符は無いんだよ。

 ……だとしたら、どうすればいい?


「勇者様、どうかこちらにいらしてくださいな。くつろげる部屋を用意させましたから、そちらでお休みになりませんこと?」


 っと、皇女様が近づいてきてたか…


『はいは~い、宿主さんお待たせ。無事にメンテ終了しました…… って、よく意識が残ってましたね。 あの召喚魔方陣、洗脳系の術式が混ざってるよぉ』


 やっぱりか!

 最初の想像通り最初から洗脳つか、自我を奪った上で奴隷の扱いかよ。

 とんでもねー奴らだな。もし洗脳されてないのがバレたら…


 おいホロン、知恵を貸せ。こっから逃げるぞ!

 アシモフ・コードは無視でいい。つかここにいる奴を全滅させなきゃ拙い。

 目撃者の口は封じなくちゃ、逃げてもすぐに捕まっちまう。

 だから、ここは殺るしか無いんだ。


 妙な仏心を出すんじゃない… って、おっさんも言ってたからな。

 それも、スピーディに、確実に片付けなきゃ駄目だ。

 問題は敵の数だが… 8人いるとなると、一気に片付けるには……


『お手紙を使えば良いじゃないですか』


 !? ああ、あれ… か。たしか超次元通路から出たら ……って待てぇい。

 残り時間は?


『あと10秒ですがなにか?』


 うわあああああああ!

 どこっ? 手紙はどこなんだっ!


『右のポケットの中です。 とってもファンシーな封筒ですからから、そのまま目の前のBBAに渡しちゃってくださいね』


 くふふふふ… ってなんか黒いくないか、お前。

 ……まあ、いい。じゃあ…… 殺戮を、始めようじゃないか……

 俺はのろのろと右手を動かして… これか?

 ゆっくりとポケットの中から封筒を取り出したんだが……


 うわぉう…


 よく見ると、とんでもなく派手な… ディープな封筒だな、おい。

 で、こいつを目の前の、あいつに……

にょほほほ。

このお手紙って、とってもとってもホットな奴ですよねぇ……

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