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天真爛漫すぎる妹と俺

 俺の名前は佐久間(さくま) 結馬(ゆうま)

 紛いもなく、誰がなんと言おうとピッカピカの高校1年生だ。

 年上の女性(じょうきゅうせい)から可愛いと言う評… 童顔言うな。

 まだ成長期が来てないだけだかんな。だがな、15歳の俺をなめんなよ。


 伸びしろは100パーセントだかんな。むしろ伸びしろしかないんだぜ。

 まぁ、そのあたりは別に気にしなくていいし、むしろ聞かなくてもいい。

 気にする所じゃないからな?


 牛乳は毎日欠かさずに飲んでるし煮干しも食ってるんだ。

 成長期さえ来てくれれば、身長だって伸びる筈だ。目指せ20センチ。


 それに高校生になった俺は中学の頃には出来なかったバイトをしても文句を言われるこたぁない。やってるのは喫茶店の給仕って奴だ。

 店の名前? 無何有郷(むかゆうきょう)だよ。マスターが高校の30期以上も大先輩でだな、夫婦そろって帝大出てるんだってさ。


 強いて言うなら店で着ている制服だが… 他の連中とデザインが違うんだよ。

 ちょっとアレはなぁ… とは思うけどさ、実入りが良いから辞められんのよ。


 バイトを始めたきっかけはキャンプ行くための資金稼ぎだったんだが、色々と本業以外にも儲かってる。最近よく来るようになったお客さんから使わなくなった道具一式を譲ってもらったりとかな。

 それも春に売り出し始めた最新型、それもほとんど未使用ときてる。


 いつもマイバッハ… とか言う豪華な車に乗って来るんだが、仕事の方は大丈夫かね。高そうなスーツを着たおっさんがさ、こんな場末の喫茶店に超がいくつもつく高級車で乗り付けるんだぜ。

 暇人というか物好き過ぎねーか?


 で、午前中の──学業優先なんで午後は休み──仕事を終えてた俺は、ほくほくしながら道具一式を背負って家に帰ってきたんだが……


「……問題はこの事実だ」


 箪笥を前にした俺は、非常に困った立場に置かれている。


「服が、ない… だと?」


 バイトから帰ってきた途端に母さんから汗くさいから風呂に入れって言われたんだが、それはいい。ここ数日はセミの鳴き声すら聞こえないような殺人的な暑さが続いてるんだ。

 ちょっと外に出ただけでも、すぐに汗だくになっちまうからなぁ。


 で… だな。軽く汗を流した俺が風呂から出たら、このざまだ。

 着替えを風呂に持ってくのを忘れたから、急いで部屋に行ったんだが……


「おい、みつき。洗濯してくれるのは有難いどなぁ……」

「だあぁってぇ…… 最近お兄ちゃんの服、なんかオトコ臭いんだもん」


 そのために、わざわざ煮沸レベルの消臭効果があるとかいう洗剤買ってきて、箪笥の中身を──それも靴下から下着に至るまで──全部洗濯するなんて。

 今の俺はバスタオルを腰に巻いてるだけなんだぞ。

 仕方がないな、汗くさいけど…


「結馬、みつきぃ。もう洗濯ものはないわねぇ? 洗濯機、回すわよ~」

「母さん、ちょぉーっと待ったぁ!」


 しゅごごごご……


 慌てて洗濯機に駆け寄った俺の前で、洗濯機に給水が始まって……


「ぷぷぷぷぷ。困ったねぇ、お兄ちゃん」


 ヲイ妹よ。中学に上がって少しは成長したかと思ったが、こういう所がな。

 ……ったく、身体ばっかり大きくなって肝心な所が抜けているというか。

 まるで息をするように、こういう事をやらかしてくれるんだよ。

 それでいて、本人は何の罪悪感も感じてないんだよな……


「困ったねぇ… じゃねえ! 着るもんが無いじゃねーか」


 真夏だからこの格好でも別に風邪は引かんけど、そろそろ芹那(せりな)が来てもおかしくないんだぞ。家が隣り同士という事もあって、あいつとは幼稚園以来の腐れ縁だけどな。と言っても、だ。

 いくらなんでもこの格好は拙いだろ?


 それに、だな。

 あいつも最近になって、ようやく男として見てくれるようになってきたんだ。

 つか、中学の制服を着た俺を見て言われた一言がなけりゃ、今ごろは幼馴染からランクアップしたかも知れんよ。

 だけどなぁ、あれだけは何を忘れようとも、ぜってー忘れん。


 だってさ、気になってた女の子にこんな事を言われたら… どうよ?


『ご、ごめん。すごくズボンの似合う女の子… だと思ってた……』


 つまり東山芹那ってオンナはさ、幼稚園小学校と、ずーっと一緒にいたのにも関わらず、俺をオトコとして見ていなかったと言う事なんだよね。

 どうりでファッション雑誌とか持ってくるはずだよ。

 それもとにかくガーリーなものばっかだ。


 服なんぞ着られればいいやと思うようになったのは、その反動かもな。


「お兄ちゃんたら服装に無関心すぎるよ。いつもおんなじ服着てるじゃない」


 やかまし。分かりやすくて良いじゃないか。それにだな。詰襟学ランは万能だ。

 これさえあれば、冠婚葬祭なんでもいける万能礼服にして基本装備だぞ。

 こいつがあれば何の問題もない。対して私服なんて着られりゃ良いんだ。

 それにだな。いつも同じ服を着てるわけじゃないぞ。Gパンだって替えはある。


「むう… 仕方がないなぁ、じゃあ私の服、貸したげるから」


 服ったって、おいチビスケ… サイズとか、どーすんだよ?


「ふふ~ん。私だって成長したんだよ。だからサイズはお兄ちゃんのと一緒」


 いや、そういう問題じゃなくてだな……

佐久間君はちっちゃこくて可愛いんです。


昴の君には遠く及びませんけれど…… メタ言うなって?

……ごめんなさい。

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