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気になるアイツと修一郎

番外編(用語解説的な何か)を18時に投稿します。

本編とは直接関係がありませんが、ネタバレはあるかも。

 俺がいるのは、ただひたすらに続くチューブ状の空間だ。

 どのくらいの広さがあるのかなんか、わからん。

 いや、分かるんけど、分かりたくないというのが本音だ。

 なにしろこいつは、2つの宇宙をつなぐ超次元チューブだからなぁ。


 で、この超次元通路の先にあるのがこれから行く宇宙というやつだ。

 そして、後ろにあるのが俺が生まれた宇宙。んん、めんどくさいな。

 元いた宇宙は… そうだなぁ。ガイアとでも呼ぶ事にして、と……

 今いる宇宙はだ… ふむん、そうだな、シラフェイアにしておこう。


 で、俺をここに送り込んだ神々の説明では、この超次元通路はシラフェイア宇宙で新型宇宙船のテスト航行中に事故を起こしたらしい。

 そいつがガイア宇宙に突っ込んでだな……


 なんだかんだあって…… いやなに、宇宙船のナビゲーションシステムのバグが原因で宇宙船のエンジンが暴走しただけだ。結果として周辺のいくつかの大宇宙を巻き込むという宇宙的災害に発展したってェ訳なんだなぁ。

 あいつらの口ぶりだと… それだけでは無さそうだが。


 ああ、言い忘れたが、俺の名前は古城(こしろ)修一郎(しゅういちろう)

 ちなみに59歳。それでわかると思うが、元化生まれのアラカンだ。

 そして今の立場はと言うとだな…… 人柱、みたいなもんだろうなぁ。

 いやいや、生贄じゃないぞ。シラフェイア宇宙に送り込まれただけだ。


 それが証拠にはほれ、ガイア宇宙を管理する神々から、加護とか宝玉とかをたんまりと授かっているからな。今の俺なら宇宙を崩壊させる事くらいは…

 できるぞ。たぶん、おそらく… な。


 言ってしまえばだな、大宇宙ってのは超次元空間に浮かぶ泡のようなもんだ。

 膨らませたゴム風船に針を刺せば、ぱぁん! っていっちゃうだろ?

 あれと同じようなもんだ。だからな……


 ……やらんぞ? 絶対にやらんからな?


 で、俺がなんでこんな所にいるかと言えば、だ。

 超次元通路を使って、誰かがこっちの宇宙に来るのを察知したからなんだ。

 てっきりガイア宇宙から救援隊が来たと思ったんだが、どうやら違うようだ。

 シラフェイア宇宙の誰かが、ガイア宇宙から魔術的に人間を──異世界召喚をしたらしいな。と言う事は、だ。拉致られたって事かも知れんなぁ。


 という訳で超次元通路までやってきたんだよ。で、どんなのが来たかと思ったら年端もいかないガキときたもんだ。高校に上がったばかりだと言っていたが、俺の姪っ子よりも可愛いく見えるんだな、あくまでも見た目だけは、だぞ。

 話を聞く限りでは、と苦学生… だな。


 学校での勉学以外は飲食店で給仕をしていたというから、生活も苦しかったに違いない。15歳という若さで、よりにもよって飲食店の給仕とはなぁ…

 それも飲み物メインの店だというじゃないか。そういう店ならば、たしかにカネにはなるが、あまりお勧めできるような職業とも思えん。


「言っておくが、俺は魔王でも、邪神でも、その手先でも、ないからな?」

「じゃあ、さ。異世界召喚… だっけか? 事前に防ぐとか出来なかったん?」

「無茶を言うな。創造神にだって、そんな事は出来んぞ」


 古武道ベースの格闘術をマスターしているらしいが、なんかなぁ。

 とんでもなく中途半端な奴だ。いや、決して悪い奴じゃないんだよ。

 ヤンキーとかヒャッハー野郎だったらこのまま放り出して帰ろうと思ってたんだが、そういう要素は皆無なんだからな。


 一言で彼を評価するなら、ちょっとヲタの入った凡人といったところだ。

 で、中途半端だと言ったのはだな、相手に武器を──いや、彼の場合は拳をと言った方が良いか──向けると言う事の意味を知らんのだ。

 あとは、生命を失うと言う事の意味… か。


 こっちは俺たちが、死というものに目隠しをしてきたからだ。

 生命を失い、だんだん身体から温かさが失われてゆく──

 そうやって俺は、親父やお袋を送ったのだが……

 こいつには、ペットを飼った経験すら無いらしいからなぁ。


 むこうの──戦国時代が始まりつつあるシラフェイア宇宙の──惑星ゼルカでは生命の価値は低い。それに地球の常識なんぞ通用せんのだ。

 それに、奴が武術を修めているとはいえ、その腕前はあまりにも中途半端だ。

 知力は… 冷静な状況判断葉できるようだし、思いきりは良いな。


 それならば、ちょっとこいつをいじってやるか……


「なっ、なにwo……」

「なぁに、同じヤポネス人の誼というやつだ。遠慮せずにギフトを受取れい!」


 ぬっふっふ。


 悪の大魔道士よろしく、両手を広げて指先から稲妻のエフェクトを出して、と。

 こやつの脳に、色々な知識をインストールしてやろう。ユーティリティもな。

 この方法が一番効率の良い情報伝達方法だからな。

 もっとも、やられた方はたまったものではないけどな。


「おぼががががが……」


 おうおう、身体をビックンビックンさせておって。

 よし、これならもう少し…… ふひひひひ、痛くなぁい、痛くはないぞぉ。

 次にお前が目覚めた時は、おまえは人間を超える存在になっているのだあ……


「ふむ、これで良いだろう」


 そろそろ、あいつらの魔術に干渉するのも限界のようだな……


 そろそろ装置のエネルギーも底をつくな。いわゆるタイムアウトって奴だ。

 あの少年の脳には主に常識や言語なんかをインストールしておいた。

 肉体的、精神的な面も大幅に強化する事も出来たな……

 ああそうだ、最後にこいつを忘れてたか。


 ぴがが……


 これでよし、と。

 やれるだけの事は済ませたな。あとは、こいつを少年の身体にくくり付け…

 面倒だな、足から鎖でぶら下げておけばいいか。要は彼から3メートル圏内にありゃ良いんだ。


 ふうぅ、こんなものでいいか。この先、超次元通路をシラフェイア宇宙に流れていく少年の後ろ姿をながめている俺に出来る事は、あまり多くはない。

 エールを送ってやるくらい、だろうなぁ。


 ──成功を、祈っているぞぉ……

ごめん、修一郎さん。

あんたのこと、血も涙もない人非人(にんぴにん)だと思ってた……

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