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エピローグを語るわし

 わし、神様。

 ホントは神様なんかじゃないけど。


 でも天変地異を起こして大陸を沈めることなんか、腕のひと振りだ。

 それを知って飛んできた──あれ上級神か──程度なら簡単に捻ったし。

 いちおう、無人惑星での出来事だから、人的被害はゼロ。問題はない。

 仮に大神様が見ていたとしても、大丈夫。問題はない! ……はず!


 と、まあ… 軽くボケをかました所でだな。あの少年の話をしよう。

 こうして見ていて、しみじみ思うのだが… シラフェイア宇宙にある惑星ゼルカは、とても悪運の強い惑星だな。

 いやいや、決して貶しているんじゃないぞ。


 実はな、この時空間を中心にして観測できる6つの時空間のうち、4つの時空間にはゼルカ星は存在していないんだ。すべて、蒸発してしまってな。

 残る2つのうち、ひとつは無人惑星だが…… もうひとつは…… 凄いぞ。

 太陽系そのものを移動させる事に成功したんだからな。


 そのために人為的に太陽フレアを発生させるとは思わなかったなぁ。

 特大の太陽フレアの反動を利用して、恒星系そのものを動かす事に成功したんだよ。それに恒星から噴き出した質量は、あとから補充したから何の問題も起きてはおらん。


 ちなみに太陽フレアを発生させるために使ったのは、反物質だ。

 そのために、近くの伴星から大量の反物質を持ち帰ったんだからなぁ。

 ……聞いているだけでも胸のすくような豪快な作戦ではないか。

 うん? あの太陽も伴星はあるぞ?


 大宇宙では連星系というのが普通だから、伴星が無い方がおかしい。

 どちらかと言えば、あって当然と考えた方が良いね。

 我々の太陽系にも伴星はあるだろう? 1.4光年先にあるネメシスだよ。

 もっとも、あれが反物質で出来ているかどうかまでは、分からないけどな。


 前に道祖神から聞いた事があるんだが、月に隠したアマノトリフネの燃料は、ネメシスで手に入れたらしいぞ。うむ、シオカの猫神社に遊びに行った時に直接聞いた話だから間違いない。遺跡基地の管理頭脳(エスター)なら、ネメシスについて詳しいデーターを持ち合わせているかも知れないな。


 とりあえず、あの佐久間少年のその後の話なんだが。

 500光年先の赤色超巨星は、すでに超新星爆発を起こした後だ。

 ほぼ光速に近い速度で放射されたガンマ線ビームが、ゼルカ星に到達するのは時間の問題だ。実際にはゼルカ星から30光年くらいの所まで来ているからな。

 実はこの事で、ある存在と賭けをしていたんだ……


 うん、そいつの正体はわからん。年齢も性別も、何もかもがだよ。

 かなり上位の神じゃないかと思うんだが、分かるのはそのくらいだ。

 なにせ腕のひと振りで、恒星を1ダースも作ったんだ。それも、太陽系の天体と同じ配置ときている。さすがに『デキる神』を自称するだけの事はあるな。


 でもな、あいつも結構抜けたところがあるんだよなぁ。

 ひとしきり話をしたところで、じゃあメシでも食おうって話になってね。

 奴の奢りだというから、ウナギを食おうと思ったんだ。

 江戸に猫屋という旨い店があるんだが、そこの特重2段盛りは絶品でなぁ……


 やつの腕のひと振りで出てきた猫屋の特重だが、見た目『だけ』は完璧だったとも。だがなぁ……

 あれはヤバい。最悪を通り越していたぞ。


 だってオムライスだぞ?

 せっかくのウナギが、オムライス味だったんだぞ?

 味や香り、そして食感。どこをどう評価しても……あれはオムライスだった。

 悪夢としか思えないだろう?


 で、その『デキる神』と、いくつか賭けをしたんだな。

 そのひとつが、ゼルカ星の運命についてだ。周辺500光年以内に2つも赤色超巨星があるとはなぁ。そのうちのひとつが超新星爆発を起こした結果、とんでもないレベルのガンマ線ビームが放出されたんだ。


 もちろん当たれば、惑星なんぞ一瞬で蒸発だ。

 掠っただけでもそこに住む生命の7割8割は絶滅するだろう。

 そうなりたくなかったら、避けるか払いのけるしかない。

 避けるのに成功したのはパラレルワールドの… うん、さっき話した連中だ。


 で、佐久間少年のいるゼルカ星では後者… 払いのける事にしたんだな。

 惑星全体を覆ったバリヤーで、ガンマ線ビームを受け止めるんだよ。

 少なくとも、1発目はそれでうまくいったんだ。

 問題は、2発目だが……


 そこで、『デキる神』と賭けをする事にしたんだ。

 あの少年は次の超新星爆発を、どう対処するか…… って事でな。


 奴はバリヤー衛星の運用に成功、私は、バリヤー衛星の運用に失敗。


 お互いに予想を立てた所で、『デキる神』との賭けは成立した。

 賭けに負けた方が、次のメシを奢る事になるんだよ。


 ふむん。惑星の運命を賭けのネタにするのは不謹慎だと思うかね?

 おいおい、こっちはゴーディアを持って来たんだぞ?

 こんな時に使わんでどうする。たった30兆キロメートルしかない、ちっぽけな笹船だが、あの程度のガンマ線では装甲に焦げ目すら付けられんとも。


 そもそもゴーディアの装甲はだな、ニュートロニウム製のハニカム構造体だ。

 こいつは全宇宙で最も重いくて頑丈な物質なんだからな?

 ガンマ線ビーム程度、屁でもないわい。


 それこそ撥水加工をしたレインコートに、霧を吹き付けるようなものだぞ。

 それにな、ゴーディアを守る防御バリヤーは2重になっているんだな。

 外側のものは、次元断層と同じような構造だ。いかなるエネルギーも、風呂場の排水口のごとくに高次空間に流し出してしまう優れものだぞぉ。


 んあ? 自慢するのも良いが結果はどうなったのか、だと?


 ああ、すまんすまん。ちょいと法事に出かけていたのでな。

 だれの葬式なんだって?

 うむ。故人の名はユーマ・ドゥーフ・サクマ・ゼムルだ。

 ゼムル帝国の元皇帝でな、これ以上ないくらいに立派な国葬だったとも。


 国葬の話より賭けの結果を教えろ、だと?

 それは今から言おうと思ってたんだ、ったく… ちったぁ故人を偲ばせろよ。

 結論から言えばだな、私は『デキる神』にメシを奢る破目になったんだ。

 あいつめ、俺の奢りだと思ってドカ食いしやがってなぁ……


 たしか、あの時は米だけで1俵くらいは炊いたかなぁ。

 おかずか? 面倒だったからサバの味噌煮だけだが?

 養魚場で本マグロを丸のみするようなデカいのがうようよいるからな。

 そいつを1匹釣り上げて、まるまる使ってやったんだ。


 だが奴は文句を言うどころか、嬉々として食べ始めたんだんだ。

 すごい勢いで料理が減って行くから追加でもう1匹釣るかと思ったぞ。


 そういうわけで、『デキる神』との賭けには負けてしまったんだが……


 負けるのが楽しみな賭けというのも、たまには良いものだ。


 君も、そうは思わないかね?

そうそう、番外編を18時に投稿します。

事実上、最後の投稿になると思いますので、みなさんよろしく……

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