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土の精霊の神殿

 プレハブ城塞は、あっさりと…… ぶっちゃけ半日で組みあがった。

 それもそのはずで、作ったのはエジプトの砂漠に立っているあれと同じ形をしたものだ。基本的には高さ5メートルのピラミッドだから、ジャングルジムのような骨組みを組み立てて、板を取り付けていっただけ。


 ただ、このプレハブ城塞──ピラミッドはオリジナルとは少し違う。

 それは斜面の一部に切り欠きを作って、目を描いた事なんだ。そうそう、外国のお寺に描かれているやつ。たしか、お釈迦様の目… だったかな。

 そんな名前が付いていたと思ったけど……


 完成したピラミッドを見た騎士の皆さんは、それを見て『まるで土の精霊が大地を見守っているようだ』と言ってたな。本当は違うんだけど、それを説明するのも面倒だし、面白いから誤解させておくとしよう。


 遠い未来には、妙な宗教が生まれているかも知れないけど、そのころには俺は隠居してるだろうから、問題なしと…… チョットマテ。


「巫女殿。仮のものとはいえ、これは本殿でございますね?」


 うをを? 本殿…… だって? これ、お寺でも神社でもないよ。

 とりあえず妙に目立つ建物作って、通りかかった皇帝をおびき寄せるためのネタにしようと思って作っただけだってば。

 なんだか話が妙な方向にひとり歩きを始めたような気が……


「あの四方を見守る目があるお陰で、神々しく感じる」

「うむ、さすがは巫女様だ。精霊様に見守られていれば、我らも勇気百倍だ!」


 ……あばばばばば。

 そう言えばこいつら、土の精霊の騎士団……


 あべしっ! 俺って、間違いなく、確実に… やっちまった。

 だって、主神はリ・スィで、従属神は作業ロボットとかで、俺は巫女って。

 そこにきて神殿まで…… 揃っちゃった?

 だとすりゃ、あいつら神殿騎士…… わあ! やばいやばいやばいやばい!


 かっ、解体だっ!

 こいつはすぐにでもブッ壊して、徹夜してでもまともな神殿を……


「巫女殿。御心配には及びませぬぞ」

「へっ?」

「今は人類存亡の緊急時ゆえ、仮の神殿でも土の精霊はお怒りになりますまい」


 あああああ…… なんて事を言うんだよぅ。

 これで俺も何かの宗教の教祖様になっちまったじゃないかぁ……

 あいつら神殿の拡張計画で盛り上がっていて、俺の話なんか聞いてないし。

 宗教ってのは、時としてヤバいモノに化けるんだぞ。


「我らの信仰心にかけて、神殿は完璧なものと致しますゆえ、ご安心なされよ」


 そう言うと、騎士たちはどこかに行ってしまったんだ。

 しばらくすると食べ物の匂いが漂ってきたから、あいつら夕食の準備を始めたんだろう。

 指令センターの地下にある食糧工場のおかげで、食べ物には困らないからな。


 俺は、改めて組み立ての終わったピラミッドを見上げてみた。厚さ数センチのべニヤ板を組み立てただけのシロモノなのに、あいつらがピラミッドを見つめる姿を思い出したら、こいつは壊せなくなっちまったような気がしてきた。

 それに、あいつらこれを神殿って言ってたもんなぁ……


「もう、駄目だ……」


 とぼとぼと祭祀場に向けて歩いていると、1機の壺が近づいてきた。

 あれはリ・スィが使っている奴か…… ピラミッドを見物しに行ったのかな。

 そう思っていたら、壺の中からリ・スィがにゅっとばかりに姿を現した。


「うゑ? それ、コスーニから持って来たのか」


 壺から顔を覗かしているのは、コスーニにいるはずの作業ロボットだ。

 しかも他のとはデザインも違っている奴で、イソギンチャクというよりクリオネというかこけしのような形をしている。

 これがリ・スィの対人用コミニュケーション端末だ。


 当然の事ながらこれは作業ロボットのような量産型じゃない。でも、こいつは立体映像とは違って、普通に触れるし会話が出来るんだよね。

 関係者ご一同様で──だいたいが立体映像という形だけど──こいつの姿を見た事のない奴はいない。


『サクマユウマ。実害がなければ、宗教を否定する事もないでしょう?』

「実害がありまくりだいっ! 俺はスローライフがしたいんだい!」

『地球には「苦あれば楽あり」という格言があるそうですが?』


 なあリ・スィ。お前は土の精霊として崇められる立場だから良いけどさ……

 なんで俺、巫女なの? ちゃんと『ついている』よね? 遺伝子解読終わってるなら俺の性別、ちゃんと分かってるよね?


『問題があると思うなら、仕舞っておけばよいのでは?』「やめろおっ!」


 人工皮膚がむにむに動き出すのを艦居た俺は、なんだか泣きたくなってきた。

 俺が何を言いたいのか、リ・スィは知ってるだろ。

 どうして俺がオトコだって言ってくれないんだよぅ。


『サクマユウマ、私はただの人工知性体に過ぎません。そういう事は、土の精霊に頼めば宜しいのでは?』

「だから、そこんところをだな……」『何か異論でも?』


 リ・スィは、この話題はこれまでだとばかりに話を打ち切ると、壺に乗るように促した。


 皇帝を何とかするまでの間は、指令センターの地下第3層を司令部にする事にしたんだ。指令センターの地下区画は人が住むようには設計されていないから、色々と足りないものがあったんだが、体育館並みの広い部屋も区画分けをした事で暮らしやすくなってきたと思う。


 ピラミッドを作る時に強度不足で崩れるかと思って、ベニヤ板を余分に作っておいたのが、今になって役に立ったってわけだ。装飾も塗装もされていない雑なものだけどさ、個室があるというのは有難い。

 特に、ドアに鍵が付いているってのは、大きなポイントだね。


 皇女サマがなかなか目を醒まさないのが気になるけど、それだけショックが大きかったんだろう。まさか実の父親から、戦争の道具扱いされていたとは思わなかっただろうからな。


 それを除けば、計画は順調に進んでいる。

 皇帝をこの砦におびき寄せたら、皇女サマとはとことん話し合ってもらうつもりだ。親子の仲たがいというのは良くないもんだ。


 皇帝を成敗するのは簡単なんだが、そうもいかんだろ。

 こういう問題は和解してもらうのが最良の選択なんだよなぁ。

変なものを作ってしまいました。うけけ。

面白そうだから、ピラミッドを描いてみたけど…… なんか地味だなぁ……

将来の騎士団に期待しましょうか。

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