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寄生生物と巫女

 愚弟の腰巾着… っと、いかんいかん。

 皇女サマの影響を受けてるなぁ… でも何って言ったっけかな、あいつの名前。

 まあいいか、めんどくさくなったから、あいつの名前は腰巾着に決定!


『サクマユウマ。それは侮蔑的な発言ではありませんか?』「へっ?」


 リ・スィじゃないか。急に出て来るなよ、心臓吐き出すかと思ったぜ。

 それにスプーキーな…… 俺の膝の上からにゅうぅぅってさぁ。

 それってさぁ、はっきり言ってホラーだよ?


『あなたが心臓を吐き出しても、すぐに戻して差し上げます』


 なんだか妙な雲行きになってきたぞ。リ・スィは何をそんなに… ひょっとしなくても俺、地雷を踏んだ? だとしたら、いったい何が……


『問題は、あなたの言う腰巾着という単語です。

 コスーニに搭載されている作業ロボットや、あなたの身の回りの世話をするロボット。これをあなたは「イソギンチャクもどき」と呼んでいましたねぇ?』

「それは… 地球にはイソギンチャクという生き物がいるんだ……」


 イソギンチャクに限らず、大抵の単語には漢字を当てる事が出来る。その典型的な例は、寿司屋で見出す事が出来るだろう。それとは少し違うが、もしもこれが外来語の場合は、和訳されたものを使うのが常識だ。

 それも昭和時代の末に母国語を否定する馬鹿共が現れるまでの話だが……


 余談は横に置いて、話を戻そう。イソギンチャクを漢字で磯巾着と書く。

 他にもいくつかの表記があるが、この場合は見た目が巾着袋に似ている事から、そう呼ばれているという説があるのだ。

 そして巾着袋は、一般的に腰から吊るして使うもの。


「こいつが広まったのは江戸時代の初めだから、ざっと300年くらい前から使われ続けているかな。今でも普通に使われている万能アイテムだぞ」

『それと腰巾着は、同じアイテムの事なのでは?』


 んんんんん……

 これが異文化コミュニケーションの難しいところなんだよなぁ。たしかに巾着袋は腰から下げて使うのが主流だ。そして、腰巾着ってのはだな……

 参ったなあ…… ホロン、頼んだぞ!


『ねえねえ、リ・スィ。ヤポネス語は複雑なんだよ♪ この場合はねぇ……』

『……なるほど。つまり、毒にしかならないクズ野郎という意味ですね? それなら理解できますね』


 ……いや、リ・スィ。その解釈は間違ってない…… 間違ってないよ?

 だいたいが「俺の上司は○○だぞ!」って言いながら、国家元首の命令書を捏造するような奴とかもいたからなぁ……

 だけど、あいつは下級貴族だろ。じゃあ、毒にすらならないんじゃないか?


『いいえ、あれは毒でしてよ。たかだか没落寸前の下級貴族のくせに、妾と席を同じくしようとは。愚弟の部下でなければ、魔力弾の的にして……』


 わあああ! 瞳のハイライトが、すぅぅぅっって消えかけてる!

 ヤバイヤバイヤバイヤバイ! それで酷い目にあったのは俺なんだぞ!

 まさか、厨二がかったでっかい杖を振り回すなんてさぁ。


『宿主さん、これ緊急事態だねっ♪』


 おわ? ホロンの奴め、この局面で運動中枢乗っ取るのかよ!

 じゃあ、とっととこの場から逃げ…… えっ!?


 ホロンに運動中枢を乗っ取られた俺がとった行動は…… 予想の斜め上をいっていたんだ。闇化した皇女サマから逃げ出す時に、サポートをしてくれるものだと思っていたんだけど……


 俺の身体を乗っ取ったホロンは、ぴょーんと飛びあがると、皇女サマに抱きつかせたんだ。そして、顔をあげた俺は… 皇女サマと目が合ったんだ……

 で、聖母の微笑みを浮かべた皇女サマは、俺にこう言ったんだよぉ。


『ユーマ。私のユーマ。怖がらなくてもいいのよ。あんな蛆虫は、妾が魂のカケラすら残さずに滅ぼしてあげるから♪』


 こえぇよぉおお! おがーざーん、魔王だよ。ここに魔王がいるよおぉお!


『じゃあ、身体の制御を返すね。宿主さん、がんば!』


 がんば! じゃねえぇえ! どーすりゃ良いんだよぅ……

 がっちりと両手で身体をホールドされて… ぐおおお! いっ、息が…

 苦しいぃぃ…… あれれ、リ・スィ。どーした……


『スカ・リト、正気に戻りなさい! あなたのユーマが死にかかっていますよ』

『えっ? ……妾はいったい何を… きゃあぁ、ユーマ!しっかりしてぇ』


 あうあうあうあう…… あっ、頭をゆらすなぁ……

 あがががが…… もう、だ… め……


『……ごめんなさい、ユーマ。息をしていないからもう駄目かと……』


 意識を取り戻した俺は… ベッドに寝かせられているのに気が付いた。

 あ~あ、皇女サマは涙目になっているよ。ったく、もう……

 添い乳だけでもやばいのにさぁ……


 ……って、皇女サマ。いま何ていった?

 俺… マジで呼吸が止まってた…… だと?


 ……って事は、俺、また死んだ?


『サクマユウマ。あなたが呼吸停止くらいで死ぬはずが無いでしょう?』

『そうだねぇ、宿主さん。人工皮膚は呼吸のサポートくらい出来るんだよ♪』


 なん・・・だと・・・ ?


 じゃあ、俺は肺呼吸出来なくなっても、皮膚呼吸だけで生きていられる?

 だから無言で頷くなよ、二人とも。それも視界にウインドウ開いて、いきなり脳内会話を始めるって……

 いやこれ、こいつらとの意思疎通のデフォだから別に構わないけど。


「人工皮膚って、ただの保護膜じゃなかったのかよ」

『ナパーア星に住む寄生生物の一種ですよ。寄生した宿主を守るために、色々な事をしてくれるのです』


 それってまさか、人工皮膚って言ってたけど…… 実は生き物だとぅ?

 俺、寄生されちゃったの? 大丈夫かよ、毛穴からじわじわ沁み込んできて、少しづつ食べられちゃうなんて事を想像しちゃってるんだけど。


『頑張って”それ”と意思疎通を図ってください、サクマユウマ。仮に成功すれば生涯にわたって、あなたを守ってくれますよ』


 ……ちょっと待てやァ!

 それは分の悪い賭けって言わないか?


 おいぃぃ… 何とか言えよぅ……

佐久間君の第2形態は、これで決まりかな?

腐腐腐腐腐……

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