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土の精霊の巫女

 つるつる洞窟の地下で、石像の群れと戦ってから2か月… いや、そろそろ春分の日を迎えるから、おおむね3か月ってところかな。

 それは、俺がゼムル帝国の皇帝の座を狙うと決めてからの──実にいろいろな事があった──3か月だ。


 ここで一番驚いたのは、皇女サマの騎士団が出来てたって事かな。

 それも異種族混成部隊なんだよおぉおおお!

 そして、騎士団長はゼムル帝国の騎士って……


「これは土の精霊の巫女殿。本日もご機嫌麗しゅう……」


 たしかネポロって言ったかな。前に森の調査に来た騎士部隊の隊長だ。

 何故か俺の事を土の精霊の巫女って呼んでいるんだが。俺のゼルカ語、なんかおかしくないか? 巫女って…… 俺の聞き間違えとか… まさか翻訳ミス?


『うんにゃ、宿主さん。間違いなく巫女って言っているねぇ♪』

『一度、鏡の前に立つ事を提案しますよ、サクマユウマ』


 ぐぬぬ…… リ・スィ。お前が装備させたあれやこれやのせいだろうがあ!

 放射線シールドジェネレーターを身体に接着した挙句に人工皮膚を被せて脱げないようにしたのは誰だよぅ。おかげでネポロ達に要らん誤解を……


『良いではありませんか、サクマユウマ。誤解させておきましょう……』

『ねえねえ宿主さん。その方がおも… 戦略的に有利だお♪』


 って…… お前たち、確信犯かいっ!

 お前らはよぉ……


『やっ、宿主さん。今はネポロ達に慣れるのが先だおぉ♪』


 ああ、ネポロ達たちか……

 あいつらは捕虜にして、リ・スィが脳内情報を吸い出した後でインゼクト達に引き渡したんだが……

 てっきり仲間の仇とばかりに、殺されてしまったかと思ってたんだ。

 ところがどっこい、こっちの陣営に引きずり込むとはなぁ……


 そしてネポロに限らず、森で捕虜にした騎士全員をだ。そして、半年見ないうちに全員が、ほぁたあ! な体格に変貌している。でもブサイクな筋肉ダルマになった訳じゃないからまあいいか。

 そのうちに皇女サマに話しておこうか。


 と言うわけで、壺に飛び乗った俺は砦へと急いだ。

 地下第3層はまったりとした雰囲気に包まれているのを感じて、ほっとしたのも束の間の出来事だった。


 だってモードラが複雑な数式を前にして、悦に入っているんだもん。

 ニヤニヤ笑いが透けて見えるような、そんなオーラが出ているんだよね。


『おやユーマ君。何を慌てているのかね?』


 相変わらず、闇色のローブ姿のモードラはフードを深く被っている事もあって表情は分からない。でも、何か楽しんでいるようにも見えるんだ。

 ひょっとして方程式を解くのが趣味とか言わないよね?


『これはゼムレン物理学と地球の数学のハイブリッドなのだよ。数学と物理額はすべての次元における共通語。実に美しいとは思わないかね?』


 いやマジで楽しんでいるなあ。

 数学は言葉だっていう人もいるけど、特に数3は悪魔の文学だい!

 出来る事なら近寄りたくもないね。


『そう邪険にしないでくれたまえ。バリア衛星を再設計しているのだよ。

 地球の数学を導入してみたのだが…… 実に興味深い。このようなアプローチが可能だったとは。長生きはするものだねぇ』


 バリア衛星で守るのは、もちろん俺達が暮らしているゼルカ星だ。

 想像を絶したエネルギーを含んだガンマ線ビームが、30年後にはゼルカ星を襲うのは間違いない。

 ガンマ線ビームがどこから来るのかというと……


『ルベーロが超新星爆発を起こした時… だね。いや、すでに爆発しているかも知れないのだが……』


 ゼルカ星から500光年ほど離れた空域にルベーロという赤色超巨星がある。

 おおむね6年周期で収縮と膨張を繰り返しているルベーロの中心核は、300年以内に崩壊する。その結果ルネーロは超新星爆発を起こす。

 それが分かったのは今から230年も前の事だ。


 だから残された時間はあと70年くらいなんだが……


『230年前の計画では、ルベーロが爆発する前に第2のゼルカ星に移住している筈だったのだがね……』


 そう言うのは、モードラというスプーキーなヤツ。

 正確には、生前のモードラが「こんな事もあろうかと」的な発想から、指令センターの地下にあるコンピューターに自身の全てを移植したものなんだ。

 だから、今のモードラは自我を持ったコンピューターなんだよね。


 でも、そのお陰でゼルカ星が滅びずに済むかもしれない。

 超光速宇宙船でゼルカ星から逃げ出す事が出来ない以上、ゼルカ星を救う方法はプロジェクト・ブルーを再開させる事だけだもん。


 でも、プロジェクト・ブルーを再開させることだが、問題は山ほどある。

 バリア衛星作る事が出来ない訳じゃない。砦の地下にあった指令センターには衛星の設計図が──ビス1本に至るまで残っている。

 そして、宇宙往還機用の工場設備がある。


『でも、材料が無いんだよねぇ……』


 そうなんだよなぁ……

 まさに、問題はこの事実ってやつ。


 ホロンの言うとおり、俺達には資源が無い。

 全てのベースになる鉄や銅が、半導体やゴムやプラスチックの原材料さえも。

 近所にあるはずの資材倉庫は森の出現で、どこか別の時空間に飛ばされた。

 なんにもない、なんにもなーい。ないない尽くしだよ。


 だったらどうする? どうすればいいと思う?


 答えは簡単だよ。実に簡単だ。

 大勢で手分けして、すべての資源を揃えれば良い。少なくとも鉱石があれば、精製や加工はこっちで出来る。

 宇宙往還機用の滑走路や格納庫だって、大勢でかかれば時間はかからない。


 そして人海戦術のための人材なんだが……


 たっぷりと集める事が出来るかも知れない……

佐久間君が巫女って… ぷぷぷぷ

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