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死せる姉と生ける愚弟

 まるで自分の孫のように、スカリット姫を溺愛しているミャーヴァ叔父様……

 より正確に言うなら、ミャーヴァ・ホルログ・ゼムル侯爵。現皇帝の叔父だ。

 中央大陸への侵攻軍を率いる司令官だ。

 彼の下で、武功を重ねているのがトロイ・ドーレン・ゼムル。

 皇帝の息子なんだら、皇太子殿下… かな?


『あんなのは愚弟でいいのよ、旦那様』

「いやそれ拙いだろ、常識的に考えて!」


 スカリット姫は、のほほんとした表情で言い放っちゃったけどね。

 そして彼女が言っている事は、冗談のように聞こえるけど…… 目は本気。

 もしかしないでも俺にお家乗っ取り… いや、もっとカッコよく言うか。

 次期皇帝の座を手に入れろ…… うん、そんな感じかな。


 でもなぁ……


「ごめん、それ無理だから!」


 考えてみろよ。ゼムル帝国は総人口600万人を抱える大国だ。

 皇太子の代わりなんか、何人もいるに違いないよ。つまり、そういう奴らを相手に権力闘争なんて、ぜってー無理だから。


 じゃあ、手っ取り早く喧嘩するかって話になるけど…… これには大義名分が必要だ。何があっても、相手の方から先に手を出してもらわなくちゃ。

 そうなれば、飛んできた火の粉を払っただけだって言えるもん。


『ねえねえ宿主さん。そんな簡単な事で何を悩んでいるのかなぁ♪』

『サクマユウマ。サソイウケなら、いくらでも参考文献があるではないですか』


 ヲイ?


『それに、妾がザモク城の内部事情に疎いと思ってはいないでしょうねぇ?』


 こっ、怖すぎる!

 3人のの背後に肉食獣の姿が見えるよぅ。それも舌なめずりまでしてる。

 こいつら殺る気満々じゃないかよぅ。


「ちょっ、ちょっと待てぇい!」


 それは拙いって!


 ヤバイヤバイヤバイヤバイ!

 相手が次期皇帝とか、貴族たちとか、そんなのはどうでも良いんだ。

 そもそもがさ、そういう問題じゃないんだよ。そいつらにも護衛の騎士団が付いているに違いない。貴族だったら、自前の戦力くらい持ち合わせているだろ。

 無いはずは無いんだ。


 この砦にいたのは100人程度だけどさ、それ皇女サマの警護部隊だろ。

 トロイ殿下が次期皇帝なら、もっと数は多いよね。他の候補者には、それほど多くの騎士はいないと思うけど…… 何倍もの騎士がいるんじゃないか?


『うふふ、大丈夫。だって旦那様は私の100倍も優れた魔法使いなのよ』


 おおおおぉい、ホロン、リ・スィ。こいつになんか言ってやってくれ!

 俺は戦争なんかしたくない。魔の森でスローなライフを楽しみたいんだ。

 それに、戦争は数だよ。たったひとりで、ゼムル帝国軍の主力部隊──2万人だっけか?──そいつらを相手にするなんて、出来るけどやりたくない!


 そんなの、ただのぎゃ……


『ねえねえ、宿主さん。100万人殺せば英雄だよ♪』


 おいホロン! たしかに戦略級の魔法はあるよ。あるけど、あの魔法はエルフ族の間でもおとぎ話って話だろ? 10キロ四方を一発で荒野にするなんて……

 インペラーザ・ボムでもなければ無理だって!


『それが出来るんだなぁ、宿主さんならね。単純に消費魔力の問題だもん♪』


 でも、相手がこっちの思惑通りに動いてくれるなんて……


『サクマユウマ、動かないなら動くように仕向ければれば良いのです。私たちのシミュレーション能力を甘く見てもらっては困りますよ』

『このまま戦争を続けていたら…… 今度こそゼルカ星の生命は全滅だよ』


 えっ? それ… どゆこと?


 それまで、じっと俺達の話を聞いていたモードラが、話に割り込んできた。


『ユーマ君、少しばかり話しておきたい事があるのだ。前に話した赤色超巨星なのだが……』


 ……詰んだ。

 もうこの星、終わってるじゃないか。あとひとつ、超新星爆発を起こしそうな星があるなんてさ。それもガンマ線バーストって…

 そんなのは掠めただけでも、ゼルカ星は大ダメージじゃ済まないよ!

 直撃したら惑星だって蒸発……


『そのためのプロジェクト・ブルーだよ。軌道上には、前回運用したバリア衛星が残っているはず。それを再整備するのだ』

「それこそ無理…… でもないか。対地観測衛星は生きていたもんな」


 200年以上もメンテナンス無しで、軌道上に放置されていた対地観測衛星はまだ機能していた。そこから送られてくるデーターは、地上の様子どころか人間の顔さえ見分けられるんだからな……


『まずは、地上施設の再建から始めなくてはならない。何にしても戦争をしていては、それもままならないだろうな……』


 要は何か?

 俺が世界を征服して、プロジェクト・ブルーを再開させろってか?

 そうなんだな?

 お前ら、本気で俺に世界征服をさせようって……


『いいねぇ、その響き。宿主さんもそう思わない?』

『全ての戦争を終わらせるための戦争ですか。それなら構わないのでは?』


 確かにそうかも知れない。

 今の俺達には、ゼルカ星の危機を食い止める方法は無い。

 人工衛星くらいなら組み立てる事が出来る工場はある。それこそビス1本から核融合炉に至るまで、何でもだ。


 だけど、そのための材料が無い。

 いくら優秀な生産設備があっても、材料が無くては何も作れないんだよ。

 そして鉱山を見つけて、そこから鉱石を掘り出すためには、人手が足りない。


 でも、それを解決する手段が無いわけでもない。

 その最短距離は……


 国盗りしかないってわけ… か。

作中世界での70年って…… うわあ、うわあ!

ヤバいテーマに手を出してしまったかも?

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