表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
145/165

その墓穴は誰のため?

 そう言えば、さっき皇女サマが春まで待って… とか言っていたけど。

 どうして春なのかな……


『それはね、たぶんその頃にはポラーナ王国の攻略が終わっている筈だから』


 どうやら、この東大陸は他の大陸と繋がっているらしい。たぶんポラーナ王国というのが隣りの大陸にある国なんだろう。こっちが東大陸なら、西大陸ってところなのかな。


『ちょっと違うわね。この先にあるのは中央大陸をというのよ。その先にあるのが西大陸だというそうだけど… 今となってはおとぎ話なのよねぇ』

「おとぎ話?」

『そうよ。昔は世界の果てにいる人とだって話が出来たって言うのよ。昔の人が使っていた魔道具って、良く出来ていたのねぇ…… とても想像できないわ』


 それは姫がまだ小さいころに母親から聞いた話だそうだ。子供にも分かりやすいように科学を魔法と言い換えていたんだと思うけどね。彼女の話から想像できるのはテレビ電話… かなぁ。

 それなら地球にもあるし、月面基地とだって通信が出来る。


 そして、大破壊というのは、たぶんガンマ線バーストの事だろう。


 モードラは磁力線の網(バリヤー)が、そこそこ機能したおかげで、ゼルカ星は公転軌道や地軸がずれた程度で済んだと言っていたな。

 その影響は酷いものだったに違いない。

 世界中に建設されていた地下都市も、かなり犠牲になったことだろう。


 そして生き残った地下都市の住人がゼムル帝国やポラーナ王国を作ったのかも知れないな。地上で暮らすようになったゼルカ星人は、時と共に地下都市の事を忘れていったと考えるのが自然だ。


 その辺は俺達だって似たようなもんだろう。

 考えても見ろよ。チェラビア隕石の事を憶えてる奴って、いるか?

 俺が幼稚園に行ってたころの話だけど、大人たちはけっこう大騒ぎしてたのは憶えてるぞ。たしか運よく空中で爆発したから被害は少なくて済んだけど、その時の爆発は高性能爆薬50万トン分って言われてたんだよね。


 言われてみれば… って言うだろうけど、あの事件から10年も経っていないんだぞ? それと同じだよ。230年と言ったら、世代交代だって6回くらいはしている筈だ。

 だから、言い伝えすら残っていないかもな……


「でも、しばらくは地下都市の通信ネットワークが生きていたんだろうな」

『ええと…… 地下都市が何かは分からないけど、地下聖廟なら…

 ユーマ! 何故あなたがそれを?』


 スカリット姫は、なんで知っているんだという顔をして尋ねてきた。

 どうやら言い伝えくらいは残っていたらしいな……


『地下聖廟は誰も知らないはず。だって皇帝の一族の最高機密なのよ?』

「うん。……なんとなく?」

『んもう、それなら尚更、あなたとの結婚を、父に認めさせるしかないわねぇ』


 そう言う事にしておこうか。ガチで言えば俺はエルフやドワーフとVRMMOをしている科学万能な世界から来たんだ。

 このくらいの事なら簡単に想像がつくぜ。

 でも、父に認めさせるって…… さっきも言ってたよね、春までって……


『さっきも言ったけど、ポラーナ王国の攻略は帝国が中央大陸に進出するための最初の通過点なの』


 それを聞いた俺は、あまりいい気分ではない。

 ゼムル帝国は、東大陸のほとんどを征服した軍事国家だ。そして、俺が召喚されたのも、帝国が進めている侵略戦争の道具として… だ。


「別に地峡を通らなくたって、中央大陸には行けるんじゃないのか?」


 たとえば船を使えば良いと思うんだが……

 そう言った俺に、スカリット姫は苦笑を返しただけだった。どうやら帝国は陸軍国としてのセオリーがそっくり当てはまるみたいだな。


『そうねのよねぇ。私たちにとって船と言えば、川舟か湖で使う小型のもの。

 それだけで十分だったのよ、今までは、ね』


 やっぱり帝国が持っているのは陸軍だけか。大型の船は無いし、使う必要も無かったのね…… たしかに湖しかないなら、岸沿いに進軍すれば良いもんな。

 だから中央大陸に進むためには、そういう場所が必要なわけだ。


『東大陸と中央大陸をつないでいる陸地はただひとつ、スチュリア地峡だけ。

 その対岸で、蓋をしているのがポラーナ王国なのよ。

 兵を突撃させるしか能がない愚弟でも、半年あれば攻略できるでしょ』

「そうなれば、皇帝も前線視察に出掛ける事もあるってわけか」


 そう言いながら、俺はスカリット姫の顔を覗き込んだ。


『大当たりよぉ』


 にっこり。


 うっ… なんでそこできれいなお姉さんの顔になるかな?

 おっ、俺はまだ15歳だからな? 結婚なんか……


『うふふ、それはユーマの国での話でしょう? 帝国では15歳なら適齢期ね。

 早い人は10歳までに婚約は済ませているし、18歳で2児の母というのも珍しい話ではないのよ』


 ぎゃあああ! 俺…… ぼっ、墓穴を掘ったのか?

 だから、頬を染めて乙女チックに身体をくねくねさせるなぁ!

 俺は、俺はだなぁ……


『はぁい、この話はそこまで。BBAは宿主さんに近寄りすぎ!

 しっしっ! さっさと離れなさいよ!』


 じりじりと近づいてきたスカリット姫の前に飛び込んだのは……

 ホロンか… 危ういところで、助かったぜ。幽霊の彼女に触られる事は無いのは分かっているんだが、ぴとーっとくっつかれていると、なんかこう……


『それは善い心がけですね、サクマユウマ』


 そして、俺の背後にはリ・スィと……


『ナパーアのリ・スィ、彼を責めないでやってくれ』


 モードラ、ありがとう。今まであんたの事をスプーキーな奴って……


『15歳ともなれば、やりたい盛りだからなぁ』


 なっ、てめ、この……


 やっぱ、オメーはスプーキー野郎で充分だ!

佐久間君はまだ15歳。

でもスカリット姫は今でこそ幽霊で歳はとらないけど……


姫:ねえ作者? それ以上言ったら… 分かるわよねぇ?

私:(がくぶるがくぶる……)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ