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皇女サマふたたび

 つるつる洞窟の地下第3層の最奥部。

 それはスカリット姫の地下宮殿のような──体育館くらいはある──広い部屋だった… 場所だ。


 過去形で言ったのは、俺が石像の群れと戦ったために部屋の装飾なんかが灰になるか残骸になるかしたからだ。

 それに、至る所にある石像の残骸とか焼け焦げた壁とか……

 コアを叩きつけた場所は、軽く穴が開きかかってるよ……


『運が見方をしてくれましたね。部屋は崩落しませんでしたよ、サクマユウマ』


 ヲイ、リ・スィ。

 やっぱり崩落が前提かよ。生き埋めになったらどうするつもりだったんだ!


『部屋の崩落は想定内ですよ、サクマユウマ。それにエネルギー炉を全力運転したザーラルが爆発すれば、爆風は地上に吹き抜けます。だから生き埋めになる可能性は皆無です』


 それを聞いた俺は、マジで驚いた。つか、魂が抜けかかったよ。

 赤法師がクリーチャーを倒すのが30秒遅かったら… 壺が爆発していたよ。

 ホロンに検証してもらったら、爆風が地上に吹き抜けるというよりも、砦そのものが消滅したかも知れないって話だった……


『なにしろ、大型の原子核爆弾が爆発するようなものだからねぇ…… 宿主さんも知っているでしょ? 第2次世界大戦で富岳に積む予定だったアレ』


 ちょっと待てホロン。そいつは10キロ四方を滅茶苦茶にしてしまう最終兵器だろ。そんなのが至近距離で爆発したら、壺だってただじゃ済まないだろーが!


『それでもザーラルは持ちこたえたはず。ナパーアでも似たような事例の記録がありますから、そのあたりは問題ありませんよ。それにザーラルが自力で移動出来なくなったとしても、救援隊を送り出せばよいだけの事ですから』


 リ・スィは『何を分かり切った事を…』という口調で、さらりと言ってのけた。

 流石の俺も、ここまでくると付いて行けない。だって、普通はやるかい?

 壺の防御力なら大型の原子核爆弾の至近爆発にも耐えられる。

 それは分かった。理性は納得しているよ。理性だけはな!


『何にせよ、済んでしまった話です。サクマユウマ、今は身体の回復を』


 リ・スィが言い終わるや否や、お世話ロボットが俺の口に栄養液のチューブを押し込んだ。じんわりと流れ出てきた栄養液を舐めているうちに、俺の意識は遠く離れたどこかに向かって……

 くそう、眠い! 眠… い……


 たぶん、あの栄養液には鎮静剤でも混ざっていたんだろう。

 俺が次に目を醒ましたのは、翌日の朝だった。時計を見たら8時… まるまる14時間近くも眠っていたんだな。


『おっはよー、宿主さん』『おはようございます、サクマユウマ』

「……おあおぅ」


 今日は目覚めもスッキリ! ようやく身体の復元もようやく終わったらしい。

 実際のところナパーア星の再生医療技術と、回復魔法が無かったらこんな事を言ってはいられなかっただろうな。良くてICU、悪くすれば棺桶の中だよ。

 そういう意味では、俺はとても運がよかったと思うんだ。


 身体の状況を魔法で確認すると、魔力体力その他の数値はマックスになっているし、動き回っても問題無さそうだが……


 なんだ、それなら上級の回復魔法を使えるじゃないか。

 こいつは部位欠損… たとえ手足がもげても、一瞬で元通りにする事が出来る強力な魔法だ。今の俺なら……


「ミームアリフ ダールイ… ザンメシーン!」


 …おぐぅ!?

 呪文を唱え終わった途端に、身体が淡い光に包まれたかと思うと、身体の中身が掻きまわされるような感覚に襲われた。

 それも一瞬の事だったんだけど、これで身体も全回復ってとこか。


「よい… しょっと!」


 俺は2日ぶりにベッドから起き上がる事が出来た。

 少し足元が怪しいけど、ずっと寝ていたんだから仕方がないよね。そのうちに慣れるだろ。

 で、ここは… 部屋の隅にいるわけか。

 それも野営用の壺5機に囲まれているし、俺が寝ていたベッドの脇には赤法師が立っている。


 その他にも2機の壺が動き回っているけど、最初に俺が乗って来たのと、ホロンとリ・スィが応援に来てくれた時のものだろう。


 ──おはよう、ユーマ。あら、顔色も良くなって。元気になったのね……

「うわあぁああ!」


 俺の前にゆらりと姿を現したのは、スカリット姫だった。そういうスプーキーな行動は… しゃーないか。幽霊に文句を言っても始まらない。

 それにしても、何か嬉しそうだな。石像をぶっ壊すわ、部屋をこんなにするわで文句のひとつも言われるかと思っていたんだけど。


 ──まあ! そんな事で悩んでいたなんて。気になさらないで、旦那様♪

 部屋は作り直せば済む話だし、あんなオモチャはどうだっていいの。


 オモチャって…… そういう問題なの?

 皇女サマの反応に唖然としている俺の前で、彼女は嬉しそうに言葉を続けた。


 ──あの石像は、砦の騎士50人がかりでも倒す事が出来なかったの。それを全滅させてしまうなんて… さすがだわ、私の旦那様♪


 うっわ、皇女サマは目がハートになってるよ。それに… なんだって?

 あの石像は騎士が50人がかりでも倒せないって? いや、俺だって最後のクリーチャーを相手にした時は死にかかったぜ。

 ホロンとリ・スィがいなかったら、間違いなく死んでたよ。


 今の俺の姿を見て、地球なら間違いなく死んでいるような大怪我をしていたなんて、信じられるかい?

 何を言っているのか分からないと思うけどさ、ナパーア星の医療技術が俺を死の淵から現世に引きずり戻してくれたんだ。


 ──ふふふ、あの精霊たちには感謝……

『だーかーらっ、宿主さんに近づくなっ!』


 っと、今度はホロン! お前までいきなり現れるのかよ!

 ちったぁ、俺の心臓の事も考えやがれ…… って、聞いてないか。


 ったく、こいつら仲が良いのか悪いのか……

佐久間君も、ようやく復活!

そしてスプーキーな奴がもうひとり出て来るのですが……

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