深紅の守護騎士
ひと眠りしたら、ようやく身体が落ち着いてきたような気がする。
体力も戻ってきたみたいだから、歩き回る事くらいは出来るかなぁ……
と、思ったら脇に立っていた赤法師が、俺の身体をベッドに押し戻した。
そうしたら、へなへな… って感じで身体がベッドに……
「あ… れ……? なんで?」
『だーめ、まだ寝ていないと…… 宿主さん、自分の身体の状態を見てよ!』
んんんん? わかった。じゃあ、イスタートス!
『はいはーい。今の宿主さんの惨状で~す♪』
名前: 佐久間 結馬
年齢: 15
性別: ♂(?)
種族: TERRANER
【STR】 18/3500
【INT】 19/4000
【DEF】 18/1200
【KRM】 現在値:中立
【SKL】 スキル:宝玉の瞳 毒物無効 格闘 槍術 赤外線探知 電磁波探知
【DEG】(称号)蟲皇の後継者 ヲサギの皇 天空樹の守護者
【AUX】 サポートナビゲーターを呼び出す
【NOTES】肝臓破裂(再生中)右上腕骨頭粉砕骨折(再生中)骨盤骨折……
「コレ… 何だよ……」
『何だよって言われても… 宿主さんの惨状だけど?』
「まさに惨状だな……」
俺の身体は、マジでガタガタになっていたんだな…… これを見たら、おっさんが延々と説教したのも分かるような気がする。
もしも立場が逆だったとしても、結果は同じだろうけど。
「たった1発でこのザマか…… よく生きてたな、俺」
起き上がる事を諦めた俺は、部屋の中が片付いているのに気が付いた。
石像の残骸や焼け残った家具なんかを片付けているのは、生き残ったケモミミメイド… の石像と、コスーニの作業用ロボット達だ。
あいつら器用に瓦礫を集めては、どこかに運び出している。
──瓦礫やコアは再利用するから、捨ててはダメよ。
あ、スカリット姫が、指図をしているのか。
お立ち台に立っている姿を見ていると、彼女も王族の一人なんだなと思うよ。何といったらいいかな、こう… なんか命令する事に慣れているんだよね。
なんか、カッコイイな……
「いやいや、待て待て…… 元はと言えばあいつが召喚魔法で……」
『そうだよ宿主さん。アレが無かったら、宿主さんはドゥーラで高校生をやっていた筈だもんね♪』
そりゃそうだ。
今ごろはあの店でバイトして… 芹那とディスティニーランドあたりに行っていたかもなぁ。じゃなかったら、マスターの所で新年会に……
『……という名の冬期講習。まだ続いているならね』「マジかよ!」
『主様は常連という事で、強制だったって♪』
おいホロン。解像度上がったのは良いが、なんか表現力も上がったな。
どう見てもそれは… 俺の不幸を喜んでいるような気がするぞ?
『1週間毎日8時間。目標は教科書半分、それも翌年の主要5教科ぜ~んぶ!
けけけけ。宿主さん、ドゥーラにいたら耳から煙が出ていたかもねぇ?』
いやどーも。その程度ならどうとでもなっぺ。
前期中間で楽勝で上位グループ入りを果たした俺に死角なんてねーかんな!
……そのはずだ。たぶん、きっと、いや… 間違いなく……
それにしても、赤法師ってけっこう目立つなぁ。
あいつは文字通り、深紅の鎧をまとった重戦士だ。あの鎧はインゼクト達を生み出したのと同じ種族が作ったものだろう。
兜の形がカブトムシとクワガタムシを足して2で割ったようなデザインだ。
全体的に見れば人間の形をした甲虫のそれだし、普段は畳み込まれているけど、背中に大きな翅があるんだもん。
そして、あいつが使っている武器こそレーザーソードだけど、拠点──森の奥にある神殿──に戻れば、色々な装備があるんだろうなぁ。
今の装備は、刃渡り1メートル以上はある鉈だ。
手甲にも、かなり凶悪な見た目のパーツが追加されているんだもん。
『でも、あの手甲のおかげで命拾いしましたね』
確かにそうだ。間違いなく、俺はあの最後の突撃をした時に……
「うぅおおぉぉ──っっ!!」
俺は、石像から奪い取った槍を構えてクリーチャーに突進した。狙いうのはただひとつ。コアがある頭部だけだ。
そして全力で突き込んだ槍は、狙いあやまたずに奴の頭部を粉砕したんだ。
だが、奴は俺の身体を振り払うように……
どごぉっ!
たった1発で… 奴の攻撃を受けた俺の身体から枯れ木が折れるような、濡れたぞうきんを壁に叩きつけたような… そんな音がした。
そのまま何メートルか飛ばされた俺の身体は…
べしゃりという音を立てて、背後の壁に叩きつけられたんだ。
「コア…… 頭じゃ… なかったのか……」
俺は激痛を通り越した痛みで、気が遠くなりながらも立ち上がった。
奴のたった1発の攻撃で、身体はまともに動かなくなるなんてなぁ……
なんとか立ち上がった俺は、クリーチャーが突進してくるのを…
まるで他人の目を通して見ている…… そんな感覚で見ているしかなかった。
そして、あいつの腕が俺に当たる寸前に……
がしゃっ!
鈍い音と共にクリーチャーの胸から、赤い何かが生えてきた。
「……あか… ほう、し?」
赤い何かに見えたのは、赤法師の腕だった。そして、その手に握られているのは、赤黒い光を放つ野球ボールくらいの… クリーチャーのコアだった。
引き抜いた腕に握られたコアをぐしゃりと握り潰した赤法師は、そっと俺を抱き上げたんだ。
そして音を立てて崩れ去るクリーチャーを背に、ゆっくりと歩き出した……
俺が憶えているのは、そこまでだ……
赤法師にお姫様抱っこされている佐久間君。
この状況って、なんか絵になるんだけどなぁ……
画力がないから描けないけどね!