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破壊されたホロンの壺

 俺は復元を始めた石像からコアを掴み出すと、壁に向かって投げつけた。

 コアが衝突した壁から火山の噴火にも似た光のかけらが噴き出し、残された壁にはすり鉢状の穴が開いている。


『サクマユウマ、石像の破片に動きはありません』


 よしっ、この方法で撃破出来そうだな。

 さあ、残りは29… やるなホロン。コアを踏み潰すとは。

 ぶっ壊す石像はあと27体だぜ……


 ──ユーマ、ユーマ…… 戦いを止めて頂戴。

 ティアラを身につければ、石像はおとなしくなる筈ですから。


 皇女サマ(スカリット)は涙目に… って、幽霊のくせに芸が細かいじゃないか。

 なんでティアラに拘るのか知らないけどさ、それは皇女サマの一部だろ?

 心を乗っ取られて動きが止まった所で、石像たちが俺の事を(自主規制)にしちゃうってわけ?


『宿主さん、BBAの言う事なんか聞いちゃダメ、絶対!』


 ホロンは6個めのコアを破壊すると、スカリットに向かってマイクロ波を放射した。だが、スカリットは、僅かにその姿を揺らめかせた。

 だが、それだけだった。


 そして、ホロンの操縦する壺を睨みつけると……


 ──ええい、邪魔な精霊めえっ! あなたなんか消えておしまいっ!


 スカリットの命令で3体の石像が壺に襲いかかった。

 剣士は自分の背丈よりも遥かに大きな鉈刀を振るい、巨大な戦鎚で壺に殴りつけた。この同時攻撃に、壺は大きな音をたてて床を転がっていく。

 そして最後の1体が止めとばかりに、丸太のような槍を壺の中に突き立てた。


 この攻撃には、さすがの壺も耐える事は出来なかった。

 内側から花火のように火花を噴き出し始めた壺は……


 壺… は……


 実はその先の事は、はっきり言ってよく憶えていないんだ。

 壺から噴き出す火花が、白っぽくなったと思ったら、逆さまになった壺が…

 がぱぁっと被さってきて。同時にエアバックが開いたのは、憶えているよ。

 なんか、あっという間の出来事だったもんでなぁ……


『……身体に異常はありませんか、サクマユウマ』


 気が付いた俺は、さかさまになった壺の中にいたんだ。それもエアバックが全開になっているから身動きひとつ出来ない有様だ。


「大丈夫… だと思う。けど、いったい……」


 暗闇の中でエアバックがしぼみ始めたのを感じると、関節をゆっくり動かしてみた。身体に痛み… このくらいなら問題は無い。

 で、何が… どうやら俺はひっくり返った壺の中にいるんだが……


『ホロンの操縦するザーラル(つぼ)が爆発したのです。最後の一撃で、内部の制御機器を破壊されたのでしょう』

「なん… だって? じゃあ、ホロンは? ホロンは無事なのか?」

『もちろん無事だよぉ。モーマンタイ!』


 その声と共にホロンは視界に開いたウインドウに姿を現した。よく見ると解像度が上がったようだが。ずいぶん人間っぽくなってきたな。


『ふふ~ん。あなたの可愛いホロンちゃんは、どんな時でもレベルアップする事を忘れていないのですよぉ♪』


 ふ…… へらず口を。

 でも、その様子なら大丈夫そうだな。

 じゃあ、第2ラウンドを始めるとしようか。

 リ・スィ、壺をどけてくれないか?


『その前に凝縮口糧を。かなり体力を消耗しているのでは?』


 そうかも知れないな。

 身体強化モードになると活動時間は最大でも40分弱というところだ。

 それ以上活動すると、極端に体力や魔力を消耗するんだそうだ。

 だから、時間になると──安全機構が働いて──モードは解除される。


「身体強化モードを解除して、凝縮口糧ですりゃ… 魔力までは無理か…」

『放射線シールドジェネレーターを作動させますよ、サクマユウマ』


 それはいいんだが、なんで触手がスカートをめくってるんだ?

『バッテリーを充電するようなものです。すぐに終わりますから……』


 触手は作業用ロボットのモノだと思うんだけど、どこ触って… ひゃうっ?

 もっと上だよ、上! お前、わざとやって… そんなら仕方がないか……

 って、早いな。バッテリーゲージ上がりきるのに30秒もかかってない?


『注入したのは… 正確には発電用の反応剤ですから。地球にも、これと似たような…『燃料電池?』…そうですね、それに近いシステムですよ』

「なるほどねぇ。で、クッションも兼ねている訳か… それなんかヤバくね?」


 待つほどもなく反応剤の補充は終わり、放射線シールドジェネレーターも作動を再開した。これで耐熱・耐放射線についてはばっちりだ。

 これ無しで壺の外に出るのはヤバそうな気がするよ。

 壺が爆発したって事は、ずいぶんとヤバい事に…… 床、熔けてないか?


『室温は急激に下がりつつありますが、80度前後… という所ですね』


 それくらいの温度なら、何とかなりそうだ。

 あとさ、ホロンの壺が爆発したのは悪い事ばかりじゃなさそうだぜ。少しだけど魔法が使えそうなんだよね。

 そしてパーソナルジェットは… 最後まで使わないでおこう。


 それよか、マントを展開してだな……


『この状況では、行動の妨げになるだけですよ、サクマユウマ』


 いや、いいんだよ。動き回ることが目的じゃないからね。

 これからする事は皇女サマに対するハッタリだ。


「リ・スィが壺を浮かせたら、くるっと… そうだ。正常な位置まで姿勢を戻した所で俺が姿を現すんだ。マントを翻しながら堂々とね。

 そして、ふわりと宙に浮いたまま皇女サマに向かったら?」


 これって、かなりのプレッシャーになる筈だよ。

 宙に浮くのは中級魔法に過ぎないから皇女サマにも出来る事だろうけど、大切な事は、俺が宙に浮いているという事実だ。


 だってさ、この地下第3層は魔法を妨害する『何か』があったはずなんだ。

 そいつが故障するか壊れてるって事を、まだ知らないとしたら?


 皇女サマは、すんごくビビるんじゃないかな……

壺をひとつ、爆発させてみました。小型とはいえ重力制御システムを稼働させるためのエネルギー炉ですからねぇ……

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