表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
122/165

幽霊に憑りつかれそうな俺

 俺です。つるつる洞窟の地下第3層の最奥部の部屋で出逢いました。

 そして幽霊の呼び声に耐えています……


 でも、そろそろ限界かも知れない。なぜか、あの声に逆らう事は……

 逆らってはいけな…… うううっ… チ・ガ・ウ!

 ダメだ… 逃げ出そうにも、身体が言う事をきかな……


『宿主さん、もう少しだけ頑張って!』


 ホロン、か……


『サクマユウマ。援軍が到着するまで耐えてくれれば状況は逆転できますよ』


 リ・スィも……


 ──ねえ、ユーマ。そろそろかくれんぼもお終いにしませんこと?


 ……くそぉ… やっぱり駄目だ。そろそろ限界!

 こうなりゃヤケだ。やるだけ、やったりゃあああ!

 意を決した俺は、がばっと立ち上がると、ぱぁんと両手を打ち鳴らした。

 そして息を大きく吸い込むと、ありったけの気合いを込めて……


「アジャラカぁっ!」

 ──ひいっ!?


 幽霊は大声を出した俺から、身を守るかのように、両手を前に出していた。

 その姿を見た俺の頭の中が急にはっきりしてきたぞ。

 ようし、ここは気合いで乗り切るしかな……


 ──それが、あなたの世界の魔法? そっ、その程度で私に勝てるとでも?


 くそっ…… また、じわり…と頭の中が締め付けられるような感じがしてきた。

 何か訳の分からないモノが俺の頭の中にしみ込んでくるような……

 だんだん頭の中がほんわかとして…… うっ、いかん… きっ、気合いだぁ!

 ここで踏ん張らなかったら、マジでヤバい事になるっ!


「あじゃらかもくれぇぇんっ!」


 なまんだぶなまんだぶ…… たっ、頼むから成仏してくれえぇええ!

 俺は手を合わせたまま、心の中に浮かんできた呪文を唱え始めた。


 ──無駄な事は、おやめなさい……


 何か言ってるようだけど、こっちも必死だいっ。

 あの、じんわりとした何かが俺の頭の中に入り込んで来ようとしている。

 これは、俺とあいつの… 精神の戦いだ。

 今はまだ我慢できるけど、あれが入り込んでしまったら……


 若い身空で幽霊に憑り殺されたくないぞ!


 ──さあ、ユーマ?


 くっそおおお!


「……てけれっつの、ぱあっ!!」


 俺は、気合を込めて最後の言葉を… 唱えた。


 ──くううっ…………


「…………やったか?」


 幽霊は… 動きを止めてたようだが… だっ、ダメ… だった?

 目の前の幽霊は、重苦しい沈黙を振り払うように笑い出した。


 ──ふ、ふふふふふ…… 耐えたわよ。あなたの魔法。

 さあ、ユーマ。こっいにいらして……


 うわあああああ!?


『黙れBBA!』


 扉が砕け散る凄まじい音と共に、ふたつの壺が部屋に飛び込んできた。

 おわぁあ? …びっくりした。心臓止まるかと思ったぜ……

 ふと声がした方を見ると、あれれ?


「壺が3つに…… 増えた… ?」

『そんな訳ないでしょ! 可愛いホロンちゃんが宿主さんを助けに来たんだよ』

『私もいますよ、サクマユウマ』


 ……ホロン… だと? そしてリ・スィ?

 よく見たら扉の残骸が、辺りに散らばってるな。

 という事は、ここまで物理で?


 ──無礼な!


 幽霊は飛び込んで来た壺を、きっ! と睨みつけた。

 壺はぶるりと震えると小さな人影が飛び出した。

 良く見ると光の粒で出来てるみたいに見えるんだが……


『離れろ、BBA! あんたなんかに宿主さんは渡さないんだからね!』


 壺の中から現れたすそれは、幽霊に向かってまくし立て始めた。

 BBAって…… ひょっとしてお前… ホロンなのか?

 でも、どうして? お前、実体化できたのか…… ?


 ──なんという物言いを。いくら土の精霊とて、妾への暴言は…

『亡者は亡者らしく、とっとと成仏しなさいよっ!』

 ──むっきぃいいい! 私は亡者なんかじゃないわよおっ!


 ……どうしてこうなった?

 つか幽霊って… どうみてもスカリット姫だよね? 皇女サマだ。

 でもなんでこんな所にいるんだろう。地縛霊になってしまったなら、祭祀場にいてもおかしくはないけどさ。


 俺の事をそっちのけで言い合いをしている2人は放っておくとして、だ……

 問題はもうひとつの壺だが。


『なんとか間に合いましたね、サクマユウマ』


 これは、どういう事なんだ?

 さっぱり事情が分からないんだが……


『サクマユウマ。この部屋で検出された電磁波の事を憶えていますか?』


 ああ、10ヘルツくらいって… 脳波に似ているって話だったよね。

 それがどうしたって……


 まさか、その電磁波って……

佐久間君が唱えた呪文は、良く知られていたもの… かも。

ただし昭和40年代前半あたりまで… と、注釈が付きますけどね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ