表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
113/165

何かの幻影に驚いた俺

 リ・スィが砦に運んできた探査ロボットの数は60体くらいだ。

 体重は100キロと重量級なのに、作業用ロボットと同じくらい素早く動き回るし、防御力に至ってはとっても怖いくらいだ。

 でっかい剣で思いっきり切り付けても、槍で突いてもかすり傷すらつかない。


「はあはあ、ぜえぜえ…… なかなか頑丈じゃないかよぅ」

『私が言った通りでしょう、サクマユウマ。もう諦めては?』


 い・や・だ・ね。殴ってダメなら、蹴ってやる!


「とうっ!」


 身体強化モードになった俺は、跳びあがった。

 そして、落下の勢いを魔力で強引に加速すると……


 どげしっ!


「ふっ、ようやく動きを止めたか……」


 このモードなら厚さ1メートルのコンクリート壁でも、パンチ1発で粉々だ。

 そして、足の力は腕の力の数倍はあるんだぜ。

 さらに探査ロボットに繰り出したのは、25メートル上空からの跳び蹴りだ。


『さすがにこの衝撃は…… 探査ロボットは機能を停止しました』

『やったねぇ、宿主さん』


 身体強化モードを解除した俺は、大きく息を吐き出した。

 蹴りを喰らった探査ロボットは壊れた様子は無いんだが、ひっくり返ったままぴくりとも動く様子はない。

 古城のおっさんは、戦車だって1発だって言ってたんだがなぁ。


「あの蹴りでも機能停止で済んじまったのか……」

『外側は無事ですが内部は… 修理が必要ですね。とりあえず回収しますけど…

 こういう事は、もう止めてくださいね?』


 ……怒られちまったか。でも耐久テストは必須だろ。

 って、早いな。もう運び出したのか…… でもさ煽ったのはお前だろ。

 探査ロボットに警備員をさせようというんだから、ちょっとは不安になるだろ。

 それに忘れるなよ、最初にリ・スィが言ったんだろうが。


 ──探査ロボットは、人間が入り込む事の出来ない危険な場所に投入されるものです。特にこのモデルは頑丈かつ美しい肉体を兼ね備えた最高傑作ですよ。

 サクマユウマ。いくらあなたが強くても、勝てないでしょうねぇ。


 そう言われて、ハイ、そうですか… ってのはアリだと思うかい?

 だから、俺は言ったんだ。そんなに言うなら試してみようか? ってね。

 そうしたら、言ったよね。出来るものなら… ってさ。

 そうまで言われたら、後に引けないだろ?


『宿主さんも大人げないなぁ。だからと言って、あの局面で必殺技を使うかな』

「大人じゃなくて結構。だいいち俺はまだ15歳だ。立派な未成年だろ?」


 ふっふっふ。

 そ-だよ。俺は高校に上がったばかりの15歳だ。選挙権も無ければ酒も駄目。

 たとえ親の承諾があっても、結婚さえ出来ないんだよね。


 …………はぁ。


 言ってて虚しくなってきたぜ。


 気を取り直した俺は再建した祭祀場に入ると、辺りを見回した。

 建物の見た目は、たぶんゼムル帝国の様式だろう。俺が憶えているのは半壊した祭祀場──それも砦から逃げ出す時に、ちらりと見ただけだが……

 たしか、こんな感じの建物だったような気がする。


 でも、柱が1本も無い室内のデザインは別物だ。まるで雲丹壷──ウニの殻の内側みたいな、とっても… な内装に仕上がっている。

 なんか、どっくんどっくんと脈でも打ちそうな気がするね。

 そういう不気味さがあるんだが、不思議と怖さはない。


「たぶんこれがナパーア星の一般的なデザイン… なんだろうなぁ」


 デジタルグラビアにも、こんな感じの部屋がいくつも映ってたよ。

 さすがに家具──テーブルや椅子なんか──は別だけどな。

 まあいいか。探査ロボットや祭祀場の見学するために来たんじゃないし。

 俺は部屋の隅にある椅子に座ると、つるつる洞窟の地図を取り出した。


『やってくれましたね、サクマユウマ。ユニットは修理不可能です』


 うげぇ…… 久しぶりにおどろ文字かよ。急に声を使わなくなったって事は、そこそこ機嫌を悪くしたようだな。でも、これで安心したよ。

 ゼルカ星人が探査ロボットを倒すのは、ほぼ不可能だ。

 これでつるつる洞窟の探検中に、後ろから襲われる心配は無くなったぜ。


 つっ… つまりだな。何が言いたいかと言うとだな……


『まあ、いいでしょう。唆したのは私ですからね』

「……じゃあ、行ってみるか。放射線の壁を突破するぞ」『おー!』


 いやぁ、あの一瞬は怖かった。本気で何かされるかと思ったよ。

 探査ロボットの群れをけしかけられたら、いくら俺でもどうかなるぞ。


 俺は無言で壺にもぐり込むと… これって、けっこう大きいように見えるけど中は狭いんだ。主にエアバックを増設したせいなんだが。


『それは自業自得ですよ、サクマユウマ。無謀な操縦をするから、安全装備を増設する事になったのですから』

「さーせん……」


 ゆっくり壺を浮かび上がらせると──俺だって成長してるんだ!──洞窟に滑り込ませた。

 奥行き50メートルくらいの洞窟なんだから歩くくらいのスピードで充分だ。


『あれれ? 扉が直っているよ?』


 通路の突き当りにあった扉… この前壺で突っ込んで突き破ったんだよね。

 そのお陰で勢いが弱まって、放射線の壁に突っ込まずに済んだんだけど。

 誰が修理したんだ?


『どうしたのです、サクマユウマ。先に進まないのですか?』


 お、おいリ・スィ。扉が閉まってるから先に進めないよぅ。

 また壺で体当たりかよ……


 いや、待てよ。こいつ、たしか厚さ10センチくらいの大理石だったよな。


 全力で殴れば壊す事が出来るかも知れない、か……

コスーニのロボット群は自律型ですが、リ・スィを頂点とした集合意識の下で、行動しています。ハチやアリをイメージしてもらえば分かりやすいかも。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ