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自画自賛する俺

 壺の操縦をミスった俺は、地下に続く4階分の階段を一気に転げ落ちた。

 あっちこっちに、ゴガンゴガンとぶつかりながら、な。

 その勢いのまま暗黒に包まれた通路を転がっていった俺なんだが。

 ようやく、どこかにぶつかって止まる事が出来たんだ……


「ひでぇ目にあったなぁ……」


 横転した壺から這い出した俺は…… 転がった壺に寄り掛かると、身体の調子をチェックを始めた。床を転がる壺の中で滅茶苦茶に振り回されたから、あっちこっちぶつけたからなぁ……

 うー、頭いてぇ。こぶは出来てないよね……


「骨折とかはしてないようだ。運が良かったな」

『無茶な事をするからです』


 たしかに無茶をしちまったな。スピードを出し過ぎたよ。

 それよか、壺は大丈夫かな。あっちこっちぶつけたような気がするからなぁ。


『ナパーア星の技術を甘く見てもらっては困ります。この程度の衝撃で故障するザーラルではありませんよ』


 ん? ザーラル? ……ああ、この壺の事か。

 そういや、そういう名前だった… まあいいや、意味的には同じだし。

 そうだよ、ザーラルってのはヤポネス語では壺って意味だ。だからナパーア語じゃなくても良いだろ、どこまで行っても壺は壺なんだからさ。


「さて、と…… ホロン?」

『はいはーい、どうしたの、宿主さん』

「つるつる洞窟の地図を頼む」


 視界にウインドウが浮かび上がり、洞窟の地図が緑色の線で表示されていく。

 そして、分かっている事はこれが人工的に作られた地下施設だということ。

 今のゼムル帝国に、こんなに高度な建設技術が無いことも分かっているから、ここは間違いなく先史文明の遺産ってやつだ。


 で、改めて表示された地図を見てみたんだが。

 ここはマップに書かれていない場所… だ。今まで通ってきたところは壁の装飾とかは優雅な曲線で彩られているが、基本的には直線で構成されている。

 だが、ここは違うようだ。


『サクマユウマ。この区画のマッピングが終わりました。地図に追加しますよ』


 ああ、そうか。壺のソナーを使ったのか。でも、こんな短時間でマッピングが終わったという事は、そんなに広い場所じゃないという事か。

 おっ、地図が出てきたぞ。


「って、突き当りの壁をぶち抜いたのかよ」

『慣性センサーの事を忘れているました、サクマユウマ。この装置はチキュウにもあると聞いていますが?』


 そうだった。壺には慣性センサーが積んでたか。忘れてた。

 ふぅ… もう少しでパニくりまくるところだった……


 慣性センサーってのは壺の重心部分──実は俺の座るシートの真下──にビルトインされている基本装備のひとつだ。こいつはジャイロセンサーと加速度計を組み合わせたものなんだが、こいつのデーターを使ってリ・スィがリアルタイムで姿勢や移動方向とスピードや現在位置なんかを計算しているんだ。


『ねえねえ宿主さん。たしか富岳がGPS無しで太平洋横断に成功したのって、最近の事じゃなかったかな♪ あれも慣性センサーを使ってたからだよ』


 ああ復元した64型じゃなくて、最新型の99型の方かぁ。

 東洋最大の航空機メーカーが生み出した新型超重爆・富岳99型。こいつの特徴は大気圏上層部まで上がって、大気層を水きり石のように飛び跳ねて進むってことだ。これなら地球上ならどこにでも行けるんだよね。


 こいつがICBMを時代遅れにしたから、第4次世界大戦は起こす事が出来なくなったとも言われている。イビム人もウオーロック(戦争を封じるもの)とは、上手い事を言ったもんだねぇ……


『サクマユウマ。ザーラルのセルフチェックが終わりました。何の問題もありませんでしたから乗ってください』


 俺は転がったままになっている壺にもぐり込むと、壺は音もなくふわりと浮かび上がった。あちこちに凄い勢いでぶつかりまくったのに無傷なんて凄いよな。

 ここまで頑丈な乗り物は地球には無いかもな。


「ちょっと疲れたな… とりあえずは椅子に座ってメシでも食うか…」


 時間的には昼には少し早いけど、食べられるうちに食べておこう。これから先で何があるか分からないもんね。俺は椅子の背もたれにある物入れから弁当箱を取り出すと、改めて椅子に座り直した。

 椅子に座ると低すぎて外が見えないけど… まあいいか。警戒は頼んだぞ。


「いただきまーす」


 聞いて驚け。今日の昼ご飯はだな…… 懐かしのコロッケサンドだ!

 いやぁ、近くのパン屋が学校にも昼から店を出してたんだけど、こいつだけは争奪戦でなぁ…… あのソースが絶品だったんだよ。


 さすがに、その味には遠く及ばない。

 それでもコロッケサンドを作る事が出来たのは俺にとっては大きな1歩だぜ!


 ウサギ達が教えてくれたんだが、芋っぽい実がなる木があったんだ。

 じゃがいもとさつまいもと里芋を足して3で割ったようなものだけど、焼いて食べたら、けっこう美味しかったんだよね。

 妙な成分も含まれてないのは、ホロンとリ・スィのお墨付きだ。


 小麦粉とか油は砦の食糧庫に沢山あったし、最近はイノブタ狩りも腕を上げたからな。けっけっけ。自慢、自慢。

 飲み物だって豪華なんだぜ。フレッシュジュースに炭酸ガスを押し込んだら、濃厚な炭酸飲料の出来上がりって寸法だ。


 俺はコロッケサンドをパクつきながら、表示されたままになっている地図をながめてみた。そうだなぁ、どう考えても…… こいつは 完璧に地下施設だ。


 階段にしても、通路にしても幅は6メートル。高さは2メートル半だ。

 その4隅は完璧に90度をキープしている。

 壁は大理石をピカピカになるまで削った… いや、鏡面研磨ってやつか。

 それが50メートルくらい続いてるんだもんなぁ。


 どう見ても地下道だよ、これは。

 足りないのは照明くらいのだが…… ひょっとすると、そいつも見つかるかも知れん。通路には隠された扉があって、そういう場所に繋がっているのか。


 それとも、別の場所に発電所みたいなものがあるのかな……

何と言っても総菜パンはご当地グルメの一翼を担ていると思っています。

スーパーでパンとお惣菜を買ってきて自分で作るのもアリですが、こういうのを食べるのも食の楽しみ方ではないでしょうか……

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