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とっても意地悪な俺

 砦の地下にあったつるつる洞窟の探検は、無事に終わった。


 とりあえず、って言葉がつくけどな!

 今回の探検で分った事は、つるつる洞窟はカタカナの『ロ』のように四角い回廊と、それにつながる地上までの通路で構成されているって事かな。

 そしてこの部屋…か。


 もちろん、こんなものが自然に出来るはずがない。人工的なものだよ。

 使われているのは大理石だと思うけど、表面がつるつるになるまで磨かれているし、寸法も恐ろしいまでに正確だ。

 継ぎ目が見つからないのも当たり前ってくらいの精密な加工だよ。


 こんな感じで、構造自体はシンプルなものだから地図を作るのも簡単だろ。

 さあさあウサギ達よ、とっとと地図を作り上げてしまえ。


「ううううう、皇さまが意地悪だよ」

「別に嫌ならいいんだ、嫌ならなあ?」


 ふっふっふ、今の俺は、とーっても意地悪だぜぇ?

 すんごく悪い悪徳商人とか悪代官っぽい顔をしてるんだろうなぁ。

 でも、容赦なんかしてやらん。

 皇女サマの事なんて、思い出したくもない事を思い出させられたんだから、この程度のお仕置きで済むなら安いもんだと思うよぉ?


「わわわ… わかったよう皇さま。すぐに地図を作るから」

「あの樽、貰っても良いよね?」


 それからのウサギ達は凄かった。

 あーでもない、こーでもない言いながら10分で地図を描き終えたよ。

 それも、けっこう正確に… だ。


「ふむ…… この地図をスキャンしてソナーでの探知結果をかけ合わせたら、大まかなところは分かるだろ。細かいところは、明日からにしようかね」


 それにしても不思議な場所だな。

 地下4階… 地面から15メートルも下にあるものが、たったこれだけだったとはなぁ。作りかけの地下街というのも考えにくい。地球で、この規模の地下構造物と言ったら地下鉄の駅ってところだ。

 そうすると線路はどこにあるんだろうね。


『そろそろ夕方になりますよ、サクマユウマ』『宿主さん、帰ろうよ』


 そうだな。今日は簡単な探検… 入り口の近くに拠点を作れそうな所を見つける事が出来れば御の字って思っていたんだ。

 それからすれば、今回の結果は上出来だって思う……


「…って、おいウサギ達… あれれ、どこ行った?」

『さあ?』


 ここには、間違いなく他にも部屋がある。そこに何かが潜んでいたら……


「ウサギ達が危ない! ここに何かい……」


 慌てて部屋の外に出たら… いたよ、あいつらが!

 樽を転がしながら出口に向かってなぁ。


『よかったねぇ、宿主さん。みんな無事だったみたいだねぇ♪』


 俺は、へたへたと床に崩れ落ちた。あいつら地図を描き終わったら、仕事は終わったとばかりに引き上げにかかったんだ。

 ピクルスの入った樽を転がしながら出口に向かって、のんびり歩いてやがる。

 まったく、心配かけやがって……


「ねえ皇さま。これ使えるの?」「使い方教えて、教えて?」


 ったくもう。鼻をひくつかせて、つぶらな瞳で見つめられているうちに怒っている自分がバカらしくなってきたぜ……

 わくわくオーラを撒き散らして、まったく能天気なもんだよ。

 俺は小さなため息をつくと、うさぎを操作ボックスの前に連れて行った。


「いいか、このステージに樽を乗せたら… うん、この辺りまでな。そして…」


 ごごごごご……


 鈍い作動音と共に、斜行エレベーターはゆっくり地上に向かって動き始めた。

 修理ついでに自走タイプに改造してくれたんだな、よかったよかった。

 ステージの下に取り付けたモーターは文句なく作動しているようだ。


 ゆっくり時間をかけてステージが地上に戻ったところで、もうひとつビックリするような出来事が待っていたんだ。

 それは……


『作業ロボットの手にかかれば、この程度の作業なら楽なものですよ』


 いやどうも……


 大したものだよ、あいつらのパワーはさ。


 リ・スィはとりあえずのシロモノだと言っていたが、外側だけとはいえ祭祀場を作り直しちゃったんだぜ。壁はあたりに飛び散った石材とかを接着剤で固めたもので、屋根に至っては丸太を組み合わせたものだと言うけどね。

 がらんどうの建物だけど、馬車を中に入れても充分に余裕があるぞ。


「助かったよ、これで雨露は防げるなぁ」

『問題は、この構造では雪の重さには耐えられない事ですね。時間をかけて補強する必要がありますよ』


 なぁんだ、そんな事か。そのくらいなら何とかなるだろ。

 近くにある山から材料を切り出せばいい。森に生えている木を、これ以上減らしたくはないからな。

 それに森に生えてる木より加工がしやすいし、何よりも運ぶ手間が省ける。


 ああそうだ。細かい破片も使うからな。

 細かく砕いて接着剤で練り合わせたら、プレス成型すればいい。地球で使われている合板の一種だよ。


 俺はウサギの乗る馬車を見送りながら、リ・スィたちとそんな事を話していた。


 洞窟探検から帰ってきた翌日には、俺はいつものように散歩を済ませてから、うさぎ屋敷で風呂に入っていたんだ。

 ぼーっと湯船に浸かりながら、メスウサギ達の話を聞きながら。


 ちなみに、つるつる洞窟で何があったのかは、その日のうちにメスウサギ達にバレたようだ。それからしばらく探検に付き合ってくれたオスウサギ達の姿を見ていないような気がするが…… どうなったのかまでは知らん。


 あいつらピクルスをひとり占めしようとして失敗したんだろ。

 たぶんきっと、間違いなく… な。

新型の作業ロボットは、基本的には対人用のインターフェイスです。

でも佐久間君のお世話専用ではないのです。リ・スィが新たに作り出したコレは炊事洗濯に始まって、戦闘や簡単な工事までこなす万能タイプなのです。

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