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つるつる洞窟とウサギ達

 なあホロン。異世界召喚された俺が、超空間通路で古城のおっさんに出会わなかったら、どんな運命が待っていただろうなぁ。

 召喚されてすぐに奴隷化されて、脳内リミッターがぶっ壊されてさ。


 異世界召喚された俺が奴隷化された上に、常にそういう状態でいたならさ。

 そしてそれを戦争に使うってんなら尚更だ。

 俺は人間の形をした兵器… として使い潰されていたかもな。


『それは怖いねぇ、宿主さん』


 もっと怖い話をしてやろうか。


 奴隷化されてリミッターを壊された俺が、戦場に投入されたらどうなる?

 際限なく広域破戒魔法を使わされるような事にでもなれば?

 エルフ族にも、そういう魔法使いが出て来るおとぎ話があるよ。

 そういう魔法が使われてなかったら説明のつかない遺跡や古文書だって、いくつも見つかってる。古代世界戦争説くらいホロンも知ってるんじゃないか?


『そんなのオカルトじゃ……』

「いいや、そうは言いきれないな。東南アジアの『ガラスになった町』なんかは説明付くか? 5平方キロメートルの広大な遺跡のあちこちで見つかったトリニタイトや溶けたレンガが、どうやって出来たんだろうね」


 古代世界戦争説では、原子核分裂爆弾に匹敵する広域破戒魔法が使われたと考えられているんだな。その根拠が、世界各地にある古戦場の調査結果だ。

 彼らがやった放射性炭素の分析結果から、戦争が起きたのは紀元前2000年頃らしいんだ。


「それにエルフ族のおとぎ話の… 原本には、古代語魔法の呪文も書かれているんだぞ。とんでもない量の魔力を使うから、誰も発動させる事が出来なかったらしいんだが」


 でも、今の俺なら…… 間違いなく、魔法を連射出来そうな気がするね。

 こっちの世界にも地球と似たような伝承があってもおかしくはないさ。

 皇女サマにそういう魔法を使うように命令されたら?

 もしも、それも皇女サマの目論んでいた事だとすれば……


 その未来って、ちょっと怖くないか?

 もしも俺がそれで『戦果』をあげたら──間違いなくあがるだろう。

 それに味をしめた皇女サマが、事あるごとに地球人を召喚しては使い捨ての兵器として使われる事になったら?


 そう考えれば、全てが1本の糸につながるような気がするんだよね。


 だけど、最後の最後になって謀反の計画がバレたとすれば?

 討伐隊が送り込まれたとすれば、あのジェノサイドだって当然と言えば当然なのかもな。さすがに返り忠が正当化されるような社会じゃなさそうだし。


『そうだとすれば祭祀場を破壊したのは正解だったかもねぇ。でも、宿主さんが地球に還るための唯一のヒントだったかも知れないかも』


 そいつは覚悟していたさ。それに、召喚用の魔方陣なら、まだあるかも知れないし、そうだとしたら魔導書みたいなものがあるかも知れないだろ。

 あの砦にあったとしても、そいつは灰になったけどさ。

 俺なら、そんな大切な情報はバックアップを取っておくと思うよ。


 まあ、そいつはもう少し先の話だけどな。


『休憩は終わったようですね、サクマユウマ。それなら、為すべき事を済ませてしまいましょう。最優先事項は、この施設の情報収集ですよ』


 そいつはウサギがやってるだろ。あと、俺が乗ってるこの壺が。

 データーが集まったら、通路の地図を作る事にしようよ。

 つるつる洞窟攻略は、それからだ。


 俺だって、ここで皇女サマの事を思い出しながら、ぼーっとウサギ達が帰ってくるのを待ってた訳じゃない。この、つるつる洞窟は普通の人なら鼻を摘ままれてもわからない暗闇に包まれているが、俺には関係ない。


 今の俺なら、この程度の暗闇ならどうって事は無い。

 このあたりは赤外線で一杯だ。それに僅かながら菫外線も『視』える。

 だから、俺にとってここは決して暗闇ってわけじゃないんだ。

 そして何よりも、あの壺がある。


 リ・スィが用意してくれたあの『壺』には、重力制御装置で浮き上がる以外にも色々な機能がある。組み込まれた各種センサーはいくつもある。

 例えばソナー… だな。


 『赤い10月を追え』とか『潜水艦96号』って映画では、潜水艦が海の中でコーン… って音を立ててるだろ。あいつがソナーだよ。

 潜水艦から出したコーンって音… 実際には超音波だけどさ、それが何かにぶつかって戻って来るのを利用てるんだな。


 ぶっちゃけ超音波を使ったレーダーなんだが、こういう狭いところで使には便利な道具だ。ソナーの反射データーとウサギ達が作った地図を使えば、このあたりの正確な地図が作れそうだ。

 時間をかければ立体地図なんかも作れるかもな。


 それからしばらくすると、へろへろに疲れ切ったウサギ達が戻ってきた。


「ただいま皇さま。変なものを見つけたよ」「おなかすいたー」


 ぼちぼちウサギ達が帰ってきたか。

 その中のひとりが何か持って来たようだ。

 直径50センチくらいの… 何となく潰れた鏡餅みたいな形をしてるな。

 大きさの割には軽そうだが。


「なんだこりゃ?」「壁にたくさんついてたの」


 壁についてた?


「棒でつついたら、ひとつだけぐらぐらしたの」

「みんなで壁から剥がして持って来たんだよ」


 ふむ……

 そいつは後で調べるとして、洞窟の地図をまとめたら今日は帰るぞ。

 暗闇の中にいたから時間感覚が鈍ってるようだけど、実際のところ、そろそろ夕方になるぞ。お前たちも日が暮れる前に帰らないとヤバいだろ?


「ぶるる… 怖い事言わないでよぅ、皇さま」「そうだよぅ……」


 だったら急ぐぞ。さっさと地図を作るんだな。

 俺だって何もしなかった訳じゃないけど、この洞窟を実際に歩き回ったのはお前たちなんだからな。


 それが済まないうちは、あの樽には指1本触れさせないからなぁ?

砦の地下にある秘密の通路。そしてウサギ達が壁から剥がしたモノ。

はてさて、何がどうなっている事やら……

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