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プロローグを語るわし

 わし、神様。

 ホントは神様なんかじゃないけど。


 でも天変地異を起こして大陸を沈めることなんか、腕のひと振りだ。

 それを知って飛んできた──あれ上級神か──程度なら簡単に捻ったし。

 いちおう、無人惑星での出来事だから、人的被害はゼロ。問題はない。

 仮に大神様が見ていたとしても、大丈夫。問題はない! ……はず!


 で、ある時暇つぶしに、大宇宙を見物に行こうと思いついたんだな。

 辺りを見回してみるといくつも超銀河があるからなぁ。

 小型の宇宙船を作って冒険をしてみるのも面白かろうと思ってな。

 それに船体を球形にすれば、頑丈な割には資材を節約できるだろ。


 船名は… そうだな、ゴーディアにしよう。


 こいつの直径はたったの30兆キロメートルだ。

 なっ? ほんとにちっぽけな船に過ぎんと思わんかね?

 探検するだけだから、こんな笹船でもいいんだよ。


 わしがやりたいのは見物であって戦争じゃない。

 カッコイイ言葉を使えば科学調査ってやつなんだからな。

 それに、この船は良いぞ。周りの空間の物理法則を、ちょいと書き変えるだけの原始的なエンジンしか積んでないが、たった10秒で光速まで加速できる。


 そして、光速を越えた時点でバリアなんか張るだけ無駄ってもんだ。

 何かにぶつかったとしても、気にする事なんかないぞ。物質と言うのは光の速度に近付くほど質量が大きくなるんだ。この場合は無限大って事になるな。

 加速が難しくなる? さっきも言っただろう? そんなのは無視できるんだ!


 似たような理由から、時間遅延現象(ウラシマこうか)とかも関係ないんだ。

 無限に広がる──いや実際には有限だし、この宇宙は破裂しかけたので亀裂を修復するために収縮中だから──収縮の一途を辿っているのは…… まあ、いい。

 てなわけで、だな。


 俺は色々な銀河を見物する事にしたんだ。とってもワクワクしながらな。


 だがな、事実は小説よりも奇なり…だ。

 連合王国の詩人、バイロンの言葉は… まさに名言だな。


 大宇宙には、数えきれないほどの超銀河団があったんだが……

 生命が芽吹いたのは… いや、それはいいか。文明と呼べるもの持った種族を育む惑星を見つける事は出来なかったんだ。

 知的生命体という縛りを外せば、そうでもなかったけどねぇ。


 それでも、だ。それでも、宇宙は広い。


 どこかに想像を絶するような文明や、生命が待ち受けているに違いない……


 ……しばらく前までは、そう思ってたんだ。


 結局のところ、文明を見つけたのは… たったひとつの銀河系星雲だ。

 それも大いに遅刻してしまったらしくてな…… ようやく見つけた文明は時の流れで風化が進んでいてなぁ。かすかな痕跡しか残っていなかったんだな。

 いやいや、時の流れと言うのは残酷なものだ。


 なにせこの銀河系そのものが重力崩壊の最中ときているんだ。

 中心にある超大質量ブラックホールが蒸発しかかっているせいだな。


 ブラックホールと言うのは、何でも吸い込む黒い穴と思いがちだ。

 だがな、周りの宇宙空間の温度よりは、ほんの僅かに『暖かい』んだな。それが宇宙空間の温度になるまで冷めるころには、質量の大半を失っている。

 質量を失ったブラックホールは、果たしてブラックホールと言えるかな?


 もっと細かく説明しても良いんだが、複雑な数式が出て来るぞ。

 そいつを説明してもいいんだが退屈なだけだと思うんだが… 聞きたいか?

 ……そうだろうなぁ。

 三度の飯より高等数学が好きなんて言ったら、いくら俺でも引くぞ。


 そんなのは、一人もいりゃぁ充分だ。


 ……まあ、そう言うわけでな。


 その文明がどういうモノなのか知りたかったわしは、色々と考えた。

 頭の血管が破裂しそうになるまで考えた。

 理論上は時間を遡る事は出来ない筈だからなぁ。

 でもな、俺は部分的とはいえ、物理法則を書き変える事が出来るんだ。


 だから、な? 挑戦してみるかと思ってな、そしたら… 出来ちまった。

 まさか時間遡行も出来るとは ……思わなんだよ。さすがに無理無茶無謀がたたって、宇宙船も故障したけどな。主にメインの動力炉が爆発した程度だが。

 壊れちまったもんは直せばいいだけだ。ついでにリフォームもしておくか。


 修理とリフォームが終わるまでは、俺も暇だ。それに時間を遡り過ぎたから銀河を眺めるしかないんだな。ふむ、こいつは直径はおおむね10万光年の棒渦巻銀河だな。このタイプの星雲には縁があるなぁ……

 それまでは…… おとなしく銀河の周回軌道を巡る事にしようかね。


 そう言えば、ここはどこだ?

 大宇宙地図を出して… ふむふむ、あれはレーティマク星雲… ねぇ。

 何となく聞いた事が…… この宇宙に来たのはずいぶん前の事だからなぁ。

 永遠の59歳も時の流れには勝てんか……


 いや! 勝つ方法はいくらでもあるぞ。

 肉体を若返らせるのは基本だが、他にもいろいろ試してみたからな。

 うい? 文字通りの意味で色々だ。子供になったり、神話に出て来るる生き物になってみたり… とかだな。とりあえず、今回は軽く若返るかね。


 そういや究極の挑戦として性別を変えた事もあったが……

 そいつの話は後にしよう。

 ゴーディアのリフォームも無事に終わったし、わしも若返ったからな。

 さっそく出発するとしよう…… か… ……って、ちょっと待てい?


 ……この惑星… ゼルカだと!?

 そうか、ここが……


 ようやく見つけたぞ!


 まさか原始惑星になっているとは思わなかったがな。

 いや、高い文明を持っていた痕跡はあるが…… 逆戻りしたんだな。

 一体なぜ文明が衰退した… 何がこの惑星に起きたんだ?


 ……そうか、あの事件… か。


 この宇宙が膨張を止めて、収縮に転じざるを得なくなったのも。

 わし… いや、この俺がこの宇宙に来る事になったのも。

 これから俺が話す事になる、ひとつの物語も……


 この惑星──ゼルカこそが、すべての元凶…… だ。

物語はのんべんだらりと流れます。

生暖かい目で見守ってくださいませませ。

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