迷宮生活 六十日目 青海の信者
迷宮生活 六十日目 青海の信者
今日は兵士達は迷宮にやって来なかった。代わりに初めて見る侵入者が現れた。
侵入者は合計で二十一人。魔法使いにも神官にも見える、深い青色のローブを纏った仮称“青神官”六名と、漁師達と同じ装備をしているが、明らかに只者ではない気配を発している仮称“歴戦漁師”が十五人だ。
リーダーは「司教様」と呼ばれる青神官で、腰は曲がっていないが手も顔も皺だらけの老人だった。耳が長いのが特徴で、所謂「エルフ」なのかもしれない。
彼らは兵士達と情報共有をしていないようで何度か道に迷っていたが、その戦闘力は兵士達とは比べ物にならないほど高く、早々に第一区画を突破されてしまった。
そして第二区画では、兵士達を誘き寄せるために、道標のように魔物を配置していたため、最短ルートで【青海神殿】に辿り着かれてしまった。
【青海神殿】に配置した我が迷宮の精鋭部隊なら、この強力な侵入者達にも多少は対抗できる、と期待して見ていたのだが……結果は一方的な蹂躙であった。
青神官も歴戦漁師もとてつもない強さなのだが、「司教様」の強さは群を抜いていた。
強化された鱗と流線型の体を活かし【魔法矢】や【水弾】を“弾き逸らす”訓練を積んできた“護衛隊”のサハギンの肉体を容易く貫通し、そのまま後衛サハギンまで貫く【水矢】を連射。こちらの【水弾】は謎の「結界」に阻まれ全て霧散。その上、背後から【奇襲】を仕掛けたシャドウデーモンにもいち早く気付き、後衛に素早く指示を飛ばす対応までして見せた。
シャドウデーモン相手にタイマンして殴り勝てる配下の青神官も異常だが、“老司祭”の強さは次元が違った。あのまま迷宮攻略を続けられていたら、一日と保たずにこの迷宮は落ちていただろう。
幸い、彼らはウチの上司の前身であった【青海の神】の信者であったらしく、【青海神殿】の神像と【統青神の大漁旗】を前に滂沱の涙を流し祈りを捧げ続けているので、今のところ命の危険は無さそうだ。
しかし、もうそろそろ日付が変わりそうなのだが、彼らはいつまで迷宮にいるつもりなのだろうか?いくら統青神の信者とはいえ、侵入者である彼らから目を離すのは怖い。魔物の餌も取りに行きたいのでいい加減お引き取り願いたいのだが……。
「収入」
DP…3381P
FP…1098P
「出費」
DP…1843P
(食費18、第一区画1140、第二区画685)
FP…0P
「合計」
DP…+2283P
FP…+1098P
「所持ポイント」
DP…8023P
FP…2258P
「“恐れ知らず”のジルゲーシト」…百八十年を超える高齢のエルフ。モルズ領に存在する魔境『死の海域』で活動する冒険者であり、冒険者血盟『青友会』の長をしている。冒険者ランクはD級だが、これは冒険者ギルドを素材の換金場としてしか使用していないためであり、実際の実力はA級相当。表向きは真っ当な冒険者だが、各地の漁村で“青海神”の布教を行い領民を取り込んでいるのは公然の秘密であり、ギルドや領主からは警戒対象とされている。第三次神話大戦に参加していたため、『青海神』の恩寵によりいくつかのレアスキルを与えられている。レベルは54。習得スキルは【水矢】【水属性強化・大】【水属性適正・中】【怪魚特効】【鱗貫き】ほか多数。
「ジルゲーシト=ルドルマフ」…かつて『青海教団』に所属していた最後の生き残りであり、現在は“隠れ教団”の司教を務めている。長きに渡る迫害の時代を生き抜き、かつての仲間の子孫と『青海神』の教えを守り通してきた英傑。五十年前にモルズ領に流れ着いてからは新たな信徒の獲得まで成功している。各地の外域で逃亡生活を送ってきたためレベルは高いが、その時々で必要なスキルを習得してしまったため、「スキル構成」はめちゃくちゃでありレベルに対して戦闘力はあまり高くなかったりする。
「“恐れ知らず”」…かつてモルズ領において“恐れ知らず”とは、未知の海域に挑む船乗や探検家に対する敬称であった。いつからかそれは、無謀な魔境探索を行う狂信者達を揶揄する言葉とりなり、今では命懸けで魔物から人々を守る勇敢な神官戦士達を称える言葉となった。




