迷宮生活 四十八日目
迷宮生活 四十八日目
今日はFP収入が大幅に下がってしまった。というのも、今まで兵士達と共に魔物狩りをしていた漁師達が来なくなってしまったのだ。結果として侵入者の数は、兵士が二十人のみと半減してしまった。
まぁ漁師達は明らかに職業軍人ではなかったし、いつかは徴兵が解かれて漁村なり港町なりに帰るだろうとは思っていた。【現地言語翻訳】の解放までは残ってくれないかと祈っていたのだが、そう思い通りにはいかないようだ。
やはり祈りは仏様ではなく、この世界の神様でなければ届かないのであろうか?あの“クソ神”にはFP目当て以外には祈りたくないのだが。
冗談はさておき、更に困ったことに、兵士達は迷宮内で新兵(と思しき若い兵士)の訓練を始めたのだ。
第一区画の魔物の掃討後も、五人の新兵と二人の中年兵士が残って訓練をしてくれるので、FP的には美味しいのだが、当然迷宮防衛的にはよろしくない事態だ。
新兵しか訓練していないのは、恐らく他の兵士達はレベルが高く、第一区画ではレベルアップできないからではないかと予想している。
であれば、新兵のレベリングくらいは見逃してもいいのだが……問題は第一区画の魔素濃度が、日に日に上昇しているということだ。
【獲得魔素量増加】はDP収入だけでなく、迷宮内に供給される魔素量も増加させる。数日前までは第一区画の魔素濃度は『1.3』強であり、少しずつ減少していた。しかし、ここ数日の魔素量増加により、現在では『1.47』にまで上がっている。
第一区画の魔素濃度は『1.3』前後にする、という目標からは大きく逸脱している。このまま魔素濃度が上がり続ければ、兵士達全員がレベリングを始める日もそう遠くないかもしれない。
応急処置として、第二区画から少しだけ通路を伸ばし、第三区画を増設した。面積は狭くとも一区画は一区画。第一区画に流れる魔素量は半分になるはずだ。
だが、DP的に見れば、現在の収入はかつての五倍以上。恐らく魔素濃度の上昇はこの程度では収まらないだろう。
【魔素濃度測定】の先にある【魔素濃度管理】か【魔素配分変更】の権能であれば何とかできそうだが……毎度のことながらFPが足りない。何か別の対策を考えなければ……。
……なんか、この世界に転生してからずっと同じこと言い続けてるな……。
「収入」
DP…3391P
FP…309P
「出費」
DP…2468P
(食費18、第一区画2400、魔化計画50)
FP…0P
「合計」
DP…+923P
FP…+309P
「所持ポイント」
DP…3642P
FP…943P
「【魔素濃度管理】」…『迷宮内政ツリー』の権能。各区画の魔素供給量をある程度調節でき、更に各区画の魔素濃度の変化をグラフで表示することができる。迷宮運営において魔素濃度の管理は必須といえる要素なのだが、【自律式迷宮創造ノ儀】には魔素濃度に関する基本機能は一切無いので、全て権能として解放する必要がある。
「【魔素配分変更】」…ダンジョンマスターが任意で使用できる魔素(つまりDP)と、迷宮内に供給される魔素(魔素濃度や施設の維持費)の割合を変更することができる権能。魔素の絶対量は変わらないので、片方の供給量増やせばもう片方の供給量は減る。ちなみにデフォルトの配分割合は1:1。
「クソ神」…『空と海を統べる青』のこと。今後主人公が「クソ神」「タコ野郎」「鳥頭」と言ったときは、全て『青き神』を指す。




