迷宮生活 四十ニ日目
迷宮生活 四十二日目
とうとう兵士達がこの迷宮に戻ってきた。と言っても、今日は本格的な迷宮攻略は行わず、入口から最も近い【増殖するワカメ】用の【小さな泉】で水を汲みだけして帰っていった。
かなりの人数で数往復して行ったので、あれが飲水の確保だとすると、今回は百人規模で攻めてくるかもしれない。非戦闘員や馬などがいる可能性もあるので、正確にはわからないが。
それに、今日攻めてこないということは、明日は丸一日かけて探索を行う可能性が高い。そうなると、流石に現状の防衛戦略では力不足だろう。
仕方がないので、昨日考えた新たな防衛案、軽甲虫を部屋いっぱいに敷き詰める「ゲジワサ作戦」を採用することにした。
流石の軽甲虫でも、大量に召喚するとコストが嵩むうえ、「虫が気持ち悪い」程度で訓練された兵士が尻込みするのか、という不安要素の残る作戦だが、足止め効果だけならば保証できるはずだ。
兵士達は探索中ずっと罠を警戒し壁や床、天井を注意深く観察している。軽甲虫で床を埋め尽くせば、不用意には踏み込めないはずだ。
兵士達は頑丈なブーツで軽甲虫を踏み殺していたが、あの方法は当然効率が悪い。軽甲虫を全て倒そうとすれば、相当の時間がかかる。前回の探索では、サハギンとゴブリンがメインで、軽甲虫は殆ど脅威とならなかったはずなので、軽甲虫対策の武器を用意している可能性は薄い。
もし、軽甲虫を無視して迷宮の奥に進んできても、それはそれで問題ない。ゲジワサ部屋が退路を塞ぐ形になるので、魔物の大群で殲滅してやればいいだけだ。
ゲジワサ部屋には、補助戦力としてジャイアントバットも五体ほど配置しておいた。軽甲虫もジャイアントバットも攻撃力は低いので、良くて生傷を与えられる程度だろうが、頭上と足元の同時攻撃はそれなりの脅威となり時間を稼いでくれるはずだ!
サハギン・ウォーリアには全く通用していなかったが、きっと効果があるはずなのだ!
大量召喚した軽甲虫とジャイアントバットの餌は、余っている魔物の死体で賄うことにした。意図したことではなかったが、軽甲虫の大群の中に見え隠れする「人型生物の骨」は中々に味のあるオブジェクトになっていた。
この骨は回収せずにそのままにしておこう。
「収入」
DP…676P
FP…124P
「出費」
DP…1633P
(食費18、召喚1585、銛30)
FP…0P
「合計」
DP…-957P
FP…+124P
「所持ポイント」
DP…13131P
FP…1505P
「迷宮島」…“南の大島”に新しく名付けられた名前。迷宮管理のための駐屯基地が作られることとなった。
「モルズ男爵軍五番隊」…モルズ領軍において、兵站輸送や陣地構築などを担当する部隊。一〜四番隊に欠員が出た場合は五番隊から補充することとなっており、予備軍的な意味合いが強い。ゾイル村で徴集した村民とともに駐屯基地の建設を行っている。
「サハギンの防御力」…全身が鱗に覆われており痛みにも強いため、所謂“カスダメ”に対しては滅法強い。弓矢の数発は受け止められるだけの耐久力と、尾で支えられた屈強な体幹も合わさり、それなりの防御性能を持つが、鉄の装備を超えるほどではない。




