迷宮生活 四十一日目
迷宮生活 四十一日目
ここ最近の漁師達の迷宮探索のお陰で、FPが大分貯まってきた。後一週間もあれば、【小規模迷宮】を解放できるだろう。また、兵士達が攻めてきたとしても、一日持ちこたえれば、恐らく2000FPまで貯まる。
迷宮の拡張にどの程度のDPが必要かは未知数だが、通路だけであれば2、3000DPもあれば、第一区画と同等の広さの区画を作れる見込みだ。
DPの貯蓄も十分であり、迷宮拡大の準備は整っている。逆に言うと、次の兵士達の迷宮探索をやり過ごせるかどうかが鍵というわけだ。
兵士達が迷宮にやってきたのは、野良サハギンが人間を襲い始めてから一週間後だった。そのことを考えると、この迷宮の情報を彼らが本部なり拠点なりに持ち帰り、もう一度探索に戻ってくるのは、明日でもおかしくない。
迷宮の防衛状況は、前回の兵士達の探索から変えていない。もし、迷宮の防衛戦力が前回より露骨に強化されていたら、この迷宮が【小規模迷宮】ですら無い、簡単に攻略できる弱小迷宮であることが露見するかもしれないからだ。
そこまでは考えすぎかもしれないが、「急速に成長する迷宮」を兵士達が危険視し、本格的な攻略隊を組む可能性は十分にありえると思っている。
そのため、前回兵士達が調査していった浅層・中層は、そのままにしておきたい。しかしそうなると、残りの防衛戦略は深層の「サハギン・ウォーリアによる精神的奇襲作戦」(以下「ウォーリア作戦」)と「竜の卵でご満足頂く作戦」(以下「ドラタマ作戦」)のみとなる。
作戦自体は二つだが、物理的な距離としては部屋二つだけだ。
正直、この二つの作戦で、兵士達をやり過ごせるかは半々だと思っている。
【中級魔物召喚Ⅰ】を解放したり、【通路作成】で深層を広げるなどして、新しい防衛線を築けばより確実に乗り切れるだろう。しかし、そうすると迷宮の拡張が延期になったり、拡張に必要なDPが足りなくなるかも知れない。
今後の迷宮防衛を考えると、あまり手札を切りたくない。しかし、出し惜しみが過ぎて迷路の「底」が露見しては本末転倒だ。
一応今のままでも、ドラタマ作戦の部屋の後ろには、部屋が二つ残っている。ここに新たな防衛作戦を用意するのはありかもしれない。
新しい権能を解放せず、DPもそれ程使わず、迷宮の限界を悟られるような雑な戦術でもなく、兵士達を引き帰らせつつも刺激しすぎない。そんな、いい感じの作戦を思いつけば、だが。
「収入」
DP…658P
FP…99P
「出費」
DP…18P
(食費18)
FP…0P
「合計」
DP…640P
FP…+99P
「所持ポイント」
DP…14088P
FP…1381P
【防衛案一:取り敢えずサハギン・ウォーリアをたくさん配置する作戦】
兵士達に「もしかしてこの迷宮、サハギンより強い魔物を生み出せないのでは?」と勘付かれたり、「サハギンが大繁殖しとる、はよ駆除せな!」と勘違いされる危険があるのでボツ。
【防衛案二:宝箱でお引き取り願う作戦】
ドラタマ作戦で満足しなかった相手には意味がない、もしくは逆効果の可能性が高いのでボツ。
【防衛案三:セイレーンとスキュラを配置する作戦】
多少は警戒させられるかもしれないが、ウォーリア作戦を突破した相手に効果があるかと言われると……うーん。二種類とも直接戦闘は得意じゃないし、他の魔物との連携もあまり上手くないし。あと、見た目からして観賞用として価値が高過ぎる可能性も……。保留で。
【防衛案四:床いっぱいに軽甲虫を敷き詰めるゲジゲジワサワサ作戦】
……わりとアリなのでは?