迷宮生活 三十九日目
迷宮生活 三十九日目
本日は第二回宝箱検証を行った。議題は「鍵の掛かった宝箱って壊して取り出したほうが早くね?」説の検証である。
古来よりRPGなどでは、宝箱や扉を開くために鍵を探したり、鍵開けの技を持った盗賊を仲間にするのがお約束だ。しかし同時に、モンスターを倒せる武器があるならそれで打ち壊せばいいのでは?というツッコミもまた古くから存在する。
今回は実際に【浜辺の宝箱(小)】の破壊実験を行い、どの程度の強度があるのかを確かめてみた。
……正直、今調べる必要性は薄いし、どうせそのうち宝箱を見つけた侵入者が実演してくれるだろうから、わざわざ検証する意味はないのだが、スキュラとセイレーンのダル絡みが鬱陶しいので仕方がない。
どうも、自分達の宝物は取り上げたくせに、シャーマンやメイジにはご褒美を与えていることが気に食わないらしい。
スキュラとセイレーンはネームドモンスター候補として、特に気にかけており、最近ようやく懐くようになって来た。しかしその分、不満などの感情も表すようになってきたのは良し悪しと言えるだろう。
まぁこの件に関しては、貝殻一枚でも、何ならそこらの石ころで実験しても良かった所を、全ての貝殻を入れて宝箱の蓋を閉めてしまった俺に非があることなので、あまり強く叱れない。
DPには余裕があるので、新しく【貝殻のネックレス】を買うくらいどうってこと無いのだが、ゴブリン一体と同じ値段であると考えると、買うのが勿体なく思えてしまう。
10DP払って新しいネックレスを買うより、10DPの宝箱を壊して貝殻を取り出した方が、お得な気がしたのだ。
宝箱の破壊には、かなりの手間暇をかけて作ったにも関わらず、結局使うことがなかった“お手製石メイス”を使った。
結果として、宝箱を壊すことはできたのだが、【浜辺の宝箱】は思いの外頑丈で、何度もメイスを打ち付ける必要があり、つい勢い余って中の貝殻ごと叩き壊してしまった。
当然砕けた貝殻の破片では、二体の半魚人ズは納得せず、新たに【貝殻のネックレス】を買い与える羽目になった。
砕けた【貝殻のネックレス】と【浜辺の宝箱(小)】も合わせると、30DPの損失……。
横着して宝箱を力尽くで開けるのは、割に合わないということが分かった。
「収入」
DP…643P
FP…100P
「出費」
DP…28P
(食費18、貝殻のネックレス10)
FP…0P
「合計」
DP…+615P
FP…+100P
「所持ポイント」
DP…13486P
FP…1040P
「【質素な食事】」…『道具作成ツリー』の初期権能。人類社会での最底辺の食事を生み出すことができる。基本的に『道具作成ツリー』で買えるアイテムの最低価格は10DPなのだが、例外的に10DP以下で購入可能な品を取り扱っている。
「魔物の氾濫」…竜脈の流量の変化により、魔境内の魔物の生息域が乱れ人域にまで魔物が溢れる現象。住処を追われた中級以上の魔物は、新たな高魔素濃度地帯を目指して広範囲を移動し、神殿や「魔石」の保管庫を襲うこともある。
「魔物の侵攻」…迷宮が生贄の獲得や異教徒への攻撃を目的とし、迷宮内の魔物を放出する現象。神話大戦は特に頻発する。平時でも邪神や悪神が信仰値の回復のために行うことがある。




