迷宮生活 三十日目
かなりの難産だったので、そのうち大幅に改稿するかもしれません。
迷宮生活 三十日目
昨夜、新たな発見があった。ダンジョンマスターとなった俺の体は、水中でも睡眠を取ることができ、石の上で寝るよりもよほど快適に朝を迎えられるということだ。
『自己強化ツリー』の【水棲】により、水中で呼吸できることや、濡れたままでも体温が下がらないことは検証していたが、水中で寝落ちしても朝まで目覚めないほど熟睡できるとは思わなかった。
どうやらまだ、人間から人外の化け物になったという自覚が足りなかったらしい。
何よりショックなのが、それをよりにもよって今日気が付いたということだ。なぜ待ちに待った【居住区】を解放できる日に気付いてしまったんだ?
もっと早くから気付いていれば、毎朝体をバキバキにする必要もなかったし、【居住区】を解放したあとであれば、その事実に気付かず、こんなやるせない気持ちになることもなかったのに……。
【居住区】の解放が楽しみ過ぎて、「もう【居住区】で安眠できるまで徹夜しちゃうかぁ⤴!」なんて言って夜更かしして寝落ちした結果がこれである。
水の浮力に包まれて熟睡し、昼過ぎまで惰眠を貪り、スキュラに優しく揺すり起こされるという、この世界に転生して最も幸せな目覚めを迎えたにも関わらず、俺の心は超絶ブルーである。
【居住区】を求める一番の問題が解決したが、それでも今日は【居住区】を解放する。
火や熱源を手に入れる、ということも【居住区】解放を優先した理由だからだ。決して意地になってる、とか、負けた気になるから、とかが理由ではない。
寝過ごしてしまったため、祈りの時間が少なくなってしまったが、夕方には問題なく1000FPを貯めることができた。
早速【居住区】を解放すると、玉座の後ろの壁に扉が出現し、その先には中世風の部屋が広がっていた。
水道やガス、電気などはないが、水が自動で湧き出す水甕や、燃料無しに燃え続ける竈、照明代わりの光る石など、ファンタジーなアイテムが備えられていた。
これがこの世界の当たり前の生活レベルなのだろうか?迷宮限定の特別なものなのかもしれないが、各種マジックアイテムは入念に調べ、性能を図る必要があるだろう。
まぁそんなものよりもまず確かめるべきはベッドである。藁を敷き詰めた箱にシーツを被せただけのものだが、なかなか暖かそうで、石の上と比べて遥かに寝心地が良さそうだ。
細かい調査は明日に回し、今日は一ヶ月ぶりのマトモな寝床を堪能するとしよう。
「収入」
DP…643P
FP…117P
「出費」
DP…27P
(食費27)
FP…1000P
(【居住区】)
「合計」
DP…+616P
FP…-883P
「所持ポイント」
DP…10316P
FP…36P
「【水棲】」…【深海への入り口】の初期権能の一つ。ダンジョンマスターに【水棲】のスキルを習得させる。効果は水中での生活が可能になるというもの。
「【居住区】の備品」…水の湧く水瓶や光る石などは、【居住区】の中でしか機能しない。また、【居住区】内の備品は、破損・消失した場合、周囲の魔素を吸収し再生する。やろうと思えば、ベッドを無限に増殖することもできるが、『道具作成ツリー』と比べて魔素効率が悪い。
「マジックアイテム」…この世界のマジックアイテムは「魔具」と「魔道具」に大別される。「魔具」は魔素を吸収して「魔化」し「特殊効果」の付いたアイテムを指す。対して「魔道具」は魔術式を組み込んだ装置で、魔力を流して使用する。【居住区】のアイテムは【小さな泉】や【食糧施設】と同じく、迷宮の設備やギミックであり、マジックアイテムとは言わない。




