迷宮生活 二十九日目
迷宮生活 二十九日目
今日の日誌には現在考えている迷宮の防衛戦略をまとめておく。記録としてだけでなく、戦いの中で頭が真っ白になってしまった際のマニュアルとしても使えるだろう。
まず、侵入者が来た際には情報収集から始まる。【簡易監視体制】の視野内に野良サハギンか家の魔物を配置し、侵入者が戦っている様子を観察する。
相手が魔物か人間か、数と武装はどの程度か。それが分かるだけでも対応はグッとしやすくなるだろう。
入口での戦闘を突破し、侵入者が迷宮の奥に進んできても最初は手出ししない。
迷宮内を巡回する魔物だけで戦わせ、余裕を見せるのだ。一番不味いのは、この迷宮が歩いて数時間でダンジョンコアまで辿り着けるクソ雑魚迷宮であることがバレることだ。
迷宮防衛の基本は遅滞戦術。兎にも角にも時間を稼ぐことが重要であると俺は考えている。
ハッタリをかますこともまた情報戦。未来の俺よ、決して焦るんじゃないぞ。仕掛けるのは全ての策が尽きてからだ。
マスタールームから数えて四つ目の部屋に、サハギン・ウォーリアを五体配置する。ここからは侵入者へ帰還を促すフェイズだ。
数を見せて危険意識を促すとともに、巡回している通常のサハギンと戦って、サハギンの戦闘力を学習した相手に、サハギン・ウォーリアをぶつける。
サハギンとサハギン・ウォーリアは体格が僅かに違うだけで、ほとんど見分けがつかない。通常種よりも洗練された銛捌きと【ストレートランス】で精神的な奇襲を仕掛けるのだ。
これで倒せないまでも傷を負わたり、疲労させることができれば、余程の命知らずでなければ、一時撤退するだろう。
その次の部屋は「竜の卵でご満足いただく作戦」の部屋だ。どの程度効果があるかは未知数な作戦だが、個人的にはかなり自身がある。
俺のイメージする冒険者やトレジャーハンターであればまず間違いなく持ち帰るし、【竜の卵】を知らない者でも、迷宮調査を目的とした部隊なら、取り敢えず回収を優先するのではなかろうか?
【竜の卵】の部屋でも侵入者が止まらなかった場合は最後の手段だ。魔物の大群を持って、侵入者を殲滅する。
この手段を取る以上、敵の殲滅は必須だ。一人でも生きて返せば、魔物の大群の危険性、もしくは迷宮の底が露呈する。
討伐軍なりダンジョンコア目当ての攻略者が大挙して来るだろう。そのため、俺が直接指揮をとり、一人も逃さず皆殺しにしなければならない。
まぁ例え殲滅が叶っても、未帰還の調査隊は、それだけで異常事態の知らせとなる。皆殺しは、本当に最後の手段にしなければならない。
「収入」
DP…650P
FP…131P
「出費」
DP…27P
(食費27)
FP…0P
「合計」
DP…+623P
FP…+131P
「所持ポイント」
DP…9700P
FP…919P
「主人公の指揮能力」…一ヶ月近く魔物を使って集団戦の訓練をしているため、ゴブリンとサハギンが足を引っ張り合わない程度には指揮を取ることができる。最近は「投網隊」の訓練に注力している。
「護衛隊」…指揮を取る主人公を、文字通り身を挺して守る訓練を施しているサハギン部隊。【魔法矢】や【水弾】を体で受け止める訓練を毎日行っている。サハギン・シャーマンのブラックワークの原因。
「投網隊」…投網を装備したサハギンとゴブリンの部隊。ゴブリンに特攻させることで、網を投げる際の隙をカバーし、ゴブリンごと敵を拘束することを目的としている。投網隊単独ならば問題が、前衛部隊と同時に指揮を取るのは、まだ難しい。




