迷宮生活 二十日目
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迷宮生活 二十日目
今日は驚くべきことが起こった。道具作りのために乾燥させていたワカメが突然腐ったのだ。
寸前までは【水害軽減】の効果もあってか、一向に傷む気配を見せなかった【増殖するワカメ】が、映像を早送りするかのように、熟れすぎた果実のように蕩けてしまったのだ。
ワカメと同日にウィッププラントから採取した蔦は、少し萎びた程度で、腐る気配は無い。
いろいろ考えた末、【食糧施設】から作られた食糧は、保存できる期間が決まっているのではないかという仮説を立てた。
今までは、食糧を備蓄する意味が薄かったので気がつかなかったが、この仮説が正しければ【増殖するワカメ】や【鼠の巣穴】の生成物を道具として使うことはできないことになる。
とりあえず、まだ予想が当たっているとは限らないので、血抜きした鼠の死体を暫く保管しておき、様子を見ることにする。もし、鼠の方も数日で腐るなら、道具作りの難易度は跳ね上がるだろう。
次は【居住区】を解放するつもりだったが、先に『道具作成ツリー』の権能を解放したほうが良いかもしれない。
幸い、サハギン・シャーマンと野良サハギンのおかげで、一日100P以上の信仰値を稼げるようになっている。
【漁師の仕事道具】が300P、【居住区】が500Pなので、先に【漁師の仕事道具】を解放しても一週間後には、ベッドで眠ることができる。
この迷宮ができて約三週間。そろそろ人間に発見されてもおかしくない。いい加減、本格的な迷宮作りも必要だろう。
この際、道具作り計画はキッパリと諦めたほうがいい気がしてきた。
目標としていた魔素貯金6000Pも達成したことだし、明日からはダンジョンの作成に力を入れていこう。
魔素濃度はやはり消費より供給が上回っているようで、昨日よりも少し数値が上昇していた。
野良サハギンが迷宮に住み着いたのは十二日目で、【獲得魔素量増加Ⅰ】を解放する前だった。当時の魔素濃度は『1.3』くらいだったんじゃないかと思う。
魔素濃度の基準が分からないので、とりあえず第一区画の魔素濃度は『1.3』となるように調整しよう。
あと、魔物やアイテムの召喚に使う魔素ポイントと、魔素濃度がややこしいので、これからは魔素ポイントをDPと呼ぶことにする。
ついでに信仰値の方もFPと呼ぶことにした。
「収入」
DP…645P
FP…102P
「出費」
DP…91P
(食費31、召喚30、付与30)
FP…0P
「合計」
DP…+554P
FP…+102P
「所持ポイント」
DP…6787P
FP…125P
「【水害軽減】」…【深海への入口】の初期権能の一つ。『迷宮内政ツリー』に分類される。水や湿気による迷宮内のアイテムや施設の劣化を軽減する。侵入者が持ち込んだ物は、迷宮の備品とは見なされないので対象外。
「【居住区】」…『自己強化ツリー』の権能。マスタールームに簡易的な居住施設を増設する。『自己強化ツリー』にはダンジョンマスターの強化だけでなく、信仰を捧げさせるためのご褒美的な権能もある。“区”と付いているが「区画」ではない。
「区画その2」…各区画に流入する魔素量は、マスタールームに隣接する区画ほど多く、離れるほど少なくなる。例えば第一〜第五の直列した区画があり、第三区画にマスタールームを繋げば、第三区画が一番魔素量が多くなり、第一、第五が最も少なくなる。迷宮の入口の位置は関係しない。また、あくまでも流入する「魔素量」であり、「魔素濃度」は区画の広さや設置してある施設により前後する。




