迷宮生活 十三日目
迷宮生活 十三日目
今日は驚くべきことが有った。なんとサハギン・シャーマンが祭壇に祈りを捧げたのだ。
日課の午前の祈りの最中にシャーマン達が近付いてきて、突然グワグワ鳴きながら踊り始めたときは、何事かと慌ててしまったが、ダンジョンコアを確かめたところ、信仰値が増えていたのだ。
なぜ今日になって突然祈り始めたのかと疑問に思ったが、うちで唯一のヒーラーであるシャーマンには、いつも魔力がなくなるまで怪我人の治療をさせていたため、そんな余裕は無かったということに気が付いた。
今日は野良サハギンを警戒して朝の訓練を行っていなかったので、祈りを捧げる時間ができたのだろう。
酷使させていたために、部下の能力に気付いてやれなかったとは、上司として失格だ。もっと早く気が付いていれば、適度に休ませて信仰値を稼がせることができたのに……。
侵入者に怯えるあまり、魔物達にはブラックな労働環境を強いてしまっていた。これからはもう少し余裕のあるダンジョン運営を心掛けていこう。
祈りを捧げたシャーマン達は心身ともに疲労していた(身体的に疲れるなら踊らずに座って祈ればいいと思うのだが、あれが彼らの信仰の形なのだろう)ので、明日からは交代で祈らせよう。回復役が一時的にでもいなくなるのは困るからな。
野良サハギン達は一度迷宮の奥に入り、【簡易監視体制】の視界から消えたが、数分で戻ってきた。恐らく他の生物が住んでいる痕跡がないか調べたのだろう。
探索の結果安全だと判断したのか、そのあとは奥に入ってくることは無かった。
その後、午後に幼体と数体の留守役を残して、海に狩り(漁、というべきか?)に行った以外の動きは無かった。
まだ警戒を緩めることはできないが、野良サハギン達は積極的に迷宮を攻略する気はなさそうだ。暫くは安全に信仰値を稼ぐことができるだろう。
今日得られた信仰値は84Pだった。正確には分からないが、俺が40P、シャーマン三体が15Pほど稼いだと思うので、野良サハギンから一日で得られる信仰値は30P前後だと思われる。
十二体から得られる量としては少なく感じるが、祭壇に祈るよりも効率は悪いだろうから仕方がない。
野良サハギン達には是非ともうちの迷宮に居着いて欲しいところだ。
「収入」
魔素…509P
信仰値…84P
「出費」
魔素…31P
(食費31)
信仰値…消費なし
「合計」
魔素…+478P
信仰値…+84P
「所持ポイント」
魔素…2852P
信仰値…394P
「信仰値の獲得」…迷宮の基本機能として、侵入者の意志力や感情を信仰として収集することができる。そのため迷宮内では、外と比べ精神的に疲れやすい。信仰値の収集には侵入者を精神的に昂らせることが有効で、強い魔物と戦わせる、財宝を見つけさせる、生け捕りにして拷問する、等が効率的である。
「レベルアップ」…生物は訓練や実践を行うことで、周囲の魔素を吸収し、「レベル」が上がる。レベルが上がるごとに必要な魔素量も増え、より魔素濃度の高い場所でなければレベルアップできなくなる。
「レベル」…生物が吸収した魔素量を表す。魔物は先天的に魔素を宿しているので、産まれたときからレベルを持っている。上位の魔物は“高レベルであること”を前提とした身体を持つため、基本的に同レベルの人間や下位の魔物よりも強い。