守るためなら⑧
(7発目。そろそろか?)
英二は撃たれた弾丸の数えながら斬り裂きた。銃に精通していない英二は弾数が不明である銃の引き金が空振りするのを辛抱強く待つしかなった。雪江の予想通り、弾が切れるのを待っていた。全ては勝利を確実なものにするために。
弾切れを待たずに接近して終わらせようとも一度は考えた。そうしなかったのは和総の動きに精細さが増したからだ。力が戻ったわけではない。ただ最初の時より動きに無駄が無くなり、かすり傷を負うどころか、周囲に被害まで配慮する余裕まで持っていた。迂闊に接近したら反撃されるかもしれないと、そう思わされるくらいに和総は復活しつつあった。
6桁でも、当たり所が悪ければ銃弾でも『戦士』は死ぬ。外の世界で似た場面に遭遇したことがある英二はわずかでも自分を殺せる可能性を看過したりしなかった。
我慢の甲斐もあり、命綱である銃弾はもう底を尽きかけている。
ここまで放ったかまいたちの数は38発。維新軍の幹部を相手した時にも迫る回数を使わせた力なき人間に英二は賞賛と共にかまいたちを放とうとした。その時だった。
「ふっ!」
7発目を撃ったのと同時だった。和総がこちらへ走ってきたのだ。
「何っ」
このタイミングで攻めに転じてくるとは思っていなかった英二は数瞬遅れで迎撃の体勢を取った。和総が『戦士』の力を使っていたら危なかったかもしれない。そう思わされてしまうくらいの不意打ちだった。
(弾数がなくなって自棄を起こした?いや、そんな馬鹿な事はしないか)
もしそうだとしても、この期に及んで侮るようなことはしない。英二は全力で応じた。
攻撃に意識を割いている間は回避や防御の初動がどうしても遅れる。それは死を避ける和総も例外ではないはずだ。最速の一撃で和総が引き金を引く前に首を飛ばすことができれば決闘は終わる。
「はっ‼」
空気を震わせる気合一閃。横に薙いだ刀は引き金を引かれる前に和総の首へ寸分たがわず斬り裂くことに成功した。
(入っ………?)
しかし、斬り裂いた後に英二は自分の刀に言い知れぬ違和感を抱いてしまった。
英二の刀は確かに和総の首を通過した。視力に自信がある英二の目が証言してくれている。
なのに、だというのに、刀からは空気を斬った感触しかなかった。
どういうことなのか。と、瞬きをした次の瞬間、敵の姿は消えていた。
「なっ、どこに⁈」
経験の無い現象にさしもの英二も平静を保つのが大変だった。
そんな状態でも、和総を探すのに、左右ではなく下を最初に選んだのは流石の一言だった。最短で死角に隠れるなら真下が一番効率いい。しゃがむだけで済むからだ。
だが、遅かった。
懐にまで接近していた和総が死角から火花を散らしたのと英二が見つけたのは同時だった。
「しまっ」
英二は何とかして銃口から逃れようとしたが、間に合わなかった。
バンッ!の銃声で銃弾がこめかみに直撃し、英二は鮮血を撒き散らしながら吹き飛ばされた。




