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目的のためなら③

「え………えぇ‼私が⁈」

 想像だにしなかったのか、思わず大声を上げてしまい慌てて口を手でふさいだ。

「全員と戦えって意味じゃないよ。ロビーまでの護衛をやって欲しいんだ。俺は戦えないからさ、途中で維新軍に遭遇したらまずいだろ?」

 それでまた大怪我した日には水羅さんの怒りが限界突破してしまう。今度は完治するまで病室のベッドから出してもらいないかもしれない。それはとても困る。

「本当は第二部隊に協力してもらう予定だったんだけど、誰もいなくて困ってたところなんだよ。引き受けてくれないか?」

「そんな急に言われても………」

栞奈ちゃんの反応は鈍かった。あったばかりの人間に突拍子もなく戦えと言われても頷けるわけがない。相手が憎しみを持った敵だったとしてもだ。

「戸惑う気持ちも分かる。でも栞奈ちゃんにとっても悪い話じゃないはずだ」

「どういうことですか?」

 栞奈ちゃんが興味を示した。そのタイミングで一番聞きたいであろう話を切り出した。

「『戦士』が一番強くなる時ってどんな時だと思う?」

「え?それは…………」

「同じ『戦士』と戦う時だよ」

「!」

 栞奈ちゃんは目を見開いた。先の見えない道に光が照らされたと、そんな顔をしている。

「鍛錬だけでも一応数値は上がるけど、それだけだと必ず限界がくる。詳細は省くけど、今より強くなりないのなら必ず越えなければならない壁がある。これだけは覚えておくといいよ」

「壁……………」

 何か心当たりがあるのだろうか。どこか得心したような面持ちで栞奈ちゃんは呟いた。

 教習所にも行かず、自力で4桁目前まで鍛えたくらいだ。感覚で答えに辿り着いてもおかしくない。

「これも鍛錬のついでだと考えてくれればいいよ。どうだろう?引き受けてくれるか?」

「分かりました。どこまでお役に立てるかは分かりませんが、やってみます」

「そうか。ありがとう」

 やる気を漲らせる栞奈ちゃんを見て俺は安心した。良かった。まだ心は折れていないようだ。

強大すぎる敵を前にすると、人は簡単に心が折れてしまう。その根底にあるのもが何であれ、心を強く保てるのはそれだけで大きな武器になる。

「ですが、ロビーに着いた後はどうするんですか?あそこには5桁と6桁もいるし、他にも多くの『戦士』がいます。囲まれたら私一人じゃ対処できませんよ?」

「それなら心配しなくていい。あと10分くらいで俺の部隊が駆けつけてくれる手筈になってるから強い奴らはそいつらに任せてしまえばいいよ」

「えっ、部隊って……さっき王国軍の援軍は断ったって言ってましたよね?」

「あっ。そういえばそんな話もしたっけ……」

 余計なことを言っちゃったな………。あまり言いふらしたくないけど、協力してもらうのなら隠したままは筋が通らないな。

「俺が所属する部隊は王国軍じゃないんだよ」

「王国軍じゃない?どういう意味ですか?」

「それはな」

 その時だった。

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