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獣達の騎士道  作者: 春野隠者
対外戦争
75/116

敗者の末路

 ロズヴェータ率いる三頭獣ドライアルドベスティエが敗残兵狩りを切り上げたのは、治安維持に任命された指揮官ルフィーネに呼び出されたからだった。戦場となったグリオルド平原を中心に南部の森を広く捜索した彼等三頭獣ドライアルドベスティエが捕虜にしたのは、双子の騎士を筆頭に4名の騎士と1名の領地持ちの貴族、3人の従軍聖職者だった。

 それ以外に手に入れた者達は、一旦兵站を担当するラスタッツァに預ける形をとっている。

 捕虜となった双子の騎士を筆頭に己の従者を引き取りたいという要望を聞いているからだった。

 その他にも臨時の収入として領地持ちの貴族に引っ付いていた従軍商人の荷物を略奪し、三頭獣ドライアルドベスティエとしては十分な収入を得たと言っていい。

 そして扱いに困る捕虜の筆頭である双子の騎士──ミーリアとサーリアの扱いについては、結局良案がでることもなく、報告することになってしまった。

「結局、何も有効な使い道が思い浮かばなかった……」

 捕虜の取次を任せていたアウローラの同席している中で落ち込むロズヴェータ。気遣うように声をかけるユーグとは対照的に、アウローラは比較的に明るい表情だ。

「まぁ、悪いことばかりじゃないわ。捕虜になった面々と話をしてみたけれど、こちらに悪い感情を抱いている様子はなかったし、個人的な繋がりも作れたわ。布石として置くなら悪い話じゃないし」

「いつ使うか分からない伝手など、時間の無駄では?」

 ユーグはアウローラの発言に疑義を呈するが、彼女は笑ってそれを否定する。

「絶対に失敗しない策っていうのはね、失敗してもどうとでもなるように、予め仕組んでおくことが大事なのよ。政治も同じ、動きが読めないなら、どう転んでも良いように対処しておくのが正解よ」

 ふふん、と鼻で笑ってアウローラは用意されていた紅茶を口に運ぶ。

 苦々しい表情を隠しもせず、だからと言ってアウローラの発言に一定の理解を示すからこそ、美貌の副官ユーグは口を噤んだ。

「しかし、お茶会まで必要だったか?」

 ロズヴェータの疑問に、アウローラはそれでも余裕綽々で答える。

「貴方も勉強になるところが大きかったでしょ?」

「まぁ、確かに……けど出費がなぁ」

 ぼやくロズヴェータに、アウローラは指を突き付けた。

「先行投資って考えなさいよ。大人になって恥をかくよりも、だいぶマシになったはずよ」

「……まぁ、そうかも」

 もう成人はしているよ、という言葉を何とか飲み込んでロズヴェータは自身を納得させる。

 出してしまったものは仕方ないのだ。

「私の騎士様が礼儀も何も知らないだなんて、ありえないわ。……真面目な話をすれば、礼節は爵位持ちや他の国の要人と接するときに必ず必要になるから、覚えておいて損はないはずよ」

「了解」

 両手を上げて降参の姿勢を示すロズヴェータに、アウローラは満足そうに笑った。

「さて、それじゃ私は捕虜の人たちに挨拶をしてくるわ。貴方も呼ばれているんでしょ?」

 既に捕虜は本営に引き渡してあるが、アウローラに言わせればアフターフォローと言う奴らしい。引き渡して、はい終わりとするよりも、つながりを継続しておくことこそが大事なのだ、と。

 紅茶を飲み終わり、立ち上がるアウローラと同時にロズヴェータも立ち上がる。

「なんでも指揮官から直接話があるとか?」

「報償の増額の話なら、良いんだけどなぁ」

 アウローラの問いに対して甘い希望的観測を述べるロズヴェータに、その場の誰もが苦笑する。

 得てしてそんな甘い希望というものは、打ち砕かれるものなのだ。

「期待しないで待っているわ」

「じゃあ、期待しないで行って来るよ」

 美貌の副官ユーグだけを伴ってロズヴェータは、指揮所となっている天幕に向かう。既に決戦となったグリオルド平原の戦いから、二週間が経過していた。

 死者は焼き払われるか埋葬され、死霊化の防止をされている。

 一部の例外は敵の指揮官等の重要人物だった。聖水による処置の元、その遺体を敵国に返還している。だが、大多数の兵士は穴を掘ってそこで焼かれて終わりだ。

 一部重傷者は、慈悲の剣を与えられ、生き残る可能性が高いものだけが、負傷者用の天幕として隔離されている状態だった。

 一時は人の焼かれる臭いが鼻につくのではないかと思う程充満していたが、既にそれも吹き抜ける風にさらわれて消えている。

 当初無造作に張られていた天幕群も、時間の経過とともに整理されていた。本営とされる天幕群の回りには、簡単ではあるものの柵や、堀をしつらえ、排水設備も備えて長期的な態勢を整えつつある。

 襲撃を防ぐために、当初は何もなかった本営の中も、所属を表す紋章旗や、物資の集積のための大天幕、捕虜を集めておくための天幕など、区分けが進められている。

 指揮官の好みを反映させて、きっちりと揃えられた天幕群の間を抜けながら、ロズヴェータは行き交う兵士の表情を何とはなしに見て居た。

 少し前までは、勝利の余韻に浸って笑顔すら見えた兵士の顔に緊張がある。

 何かあったのか。それとも、これから起こるのか。

 どちらにしても、呼び出された理由はお褒めの言葉を貰う程度ではないと、心構えをしておく。

 処罰を受けるわけではないだろうが……。

「これで酒場があれば、町の出来上がりですね」

 周囲を見回していたユーグの言葉に、ロズヴェータは苦笑する。

「……同じことを考えていた。人が集まれば、どうやっても同じような感じになるんだな」

 二人とも苦笑して歩いているうちに、指揮官の居住する指揮所天幕の前にまで到達していた。


◆◇◆


「こちらでお待ちを、間もなく来られます」

 指揮所天幕を守る兵士の誰何を経て案内された天幕の中には既に、3人の騎士がいた。

 いずれもロズヴェータに比して、年齢も風格も上の歴戦の騎士と言った風の三人を横目で確認しながら、ユーグと視線で会話した。

 この面子に心当たりはあるか。

 否。

 黙って首を振るユーグに、ロズヴェータも肩を竦める。

 どちらも心当たりがないのなら、考えても無駄だろう。

 断トツで若い彼ら二人が、それほど待つ必要もなく更に一人部屋に案内される。

 見るからに危険人物と言った目つきの悪い騎士だった。入口で武器を預けられていてさえ、なるべく近づきたくはない類の人物だ。

「指揮官が入られます」

 兵士の呼びかけに、その場に集められたロズヴェータを含んだ5人の騎士は一斉に扉を注視した。

「ああ、楽にしてくれ」

 噂に違わぬ年齢を感じさせない美貌の指揮官ルフィーネ・オルシャは、護衛と副官を兼ねた騎士を4名連れて入り口から入ってきた。

「本日集まってもらったのは、他でもない。卿らに、依頼がある」

 彼女がそう言うとお付きの騎士が依頼の為の植物紙を渡す。上等なそれの質感に驚く間もなく、文字を目で追っていたロズヴェータは目を疑い、次いで耳に入ってきた言葉に耳すら疑う。

「文字を解せぬ者もいるだろうから、簡潔に言うと、反乱を起こした貴族家の討伐だ」

 そう、そこまでは分かる。しかし……。

 眉間に皺がより、視線が鋭くなるのを承知の上で、止めようがなかった。周囲を観察すれば、それぞれに反応が全く違う。驚愕に目を見開く者や、無表情の者、逆に笑みを浮かべる者もいる。

「ただし、関係者は根切にしてもらう。これは国の総意だ」

 根切……。と口の中だけで呟いてロズヴェータはその言葉の意味を反芻する。

 つまり皆殺しだ。

「女子供、使用人、全てって意味だよなぁ?」

 最後に部屋に入ってきた見るからに危険そうな騎士の声に、全員がその騎士を見て、次いで答えを求めるべく指揮官ルフィーネを見た。

「すべてだ。全て殺してもらう」

 なんら抵抗なくそう言い切った指揮官の言葉に、声にならないうめき声が部屋に満ちる。

 ロズヴェータにしても、思った以上の衝撃が自身の心に降りかかるのを感じた。

「ひひ、了解した」

 質問をした騎士は、笑いながら機嫌良さそうに頷く。

「作戦はこうだ。狙いは敵の首魁であるミディ家が籠る街を焼く。既に兵力と呼べるほどの戦力は残っていないことは確認済みであるが、住民を扇動する可能性があるからな。私が直接率いて彼らの最後の抵抗を打ち破る。卿らには、その最後の後詰として、ミディ家当主ホルムの首を挙げてもらいたい」

 重い沈黙がその場に降りる。

「その際に、敵側の者は老若男女の区別なく根切にせよ。以上だ。質問は?」

 いくらでも聞きたいことはあった。しかしロズヴェータは思ったよりも自身が衝撃を受けていたことを知った。

 なぜ、この面子なのだ。もっと言えばなぜ、自分を選んだのか。

 子供までも殺すだと、正気なのか。

 否、命令ならばやるしかない。しかし、それは正しいのか。

 本当に自分が命令するのか。

 上手く考えがまとまらず、質問を促されても言葉が出てこない。

 握り締めた拳の震えが、唯一ロズヴェータに出来る抵抗だった。

「ないようなら、以上だ。作戦開始は翌々日を予定している。それまで各々部隊を休めておくように。解散せよ」

 促されて退出する騎士達と同様にロズヴェータも重い足を動かそうとし、指揮官ルフィーネから呼び止められた。

「ああ、騎士ロズヴェータ。少し、良いだろうか?」

「……はっ」

 指揮官から直接声をかけられる機会など、そうあるものではない。しかも相手は年齢を感じさせない美貌の妙齢の女性である。普段なら僅かにでも心が浮き立つはずのロズヴェータは、今はそんな気分になれず、俯き加減に視線を合わせないように膝を折る。

「ああ、そうかしこまらんでもよろしい」

 先ほど、根切を命じた冷たい声とは一転、温かみのある声で話しかけられる。

「卿の捕虜の取り扱いについてだ」

「何か、不都合がございましたでしょうか?」

「いいや、そうではない。捕虜を大事に取り扱っていると評判でな。同じ十字教の伝統派の者として一言感謝を言わねばならないと思ってな」

 咄嗟に、ロズヴェータは、地面につけた拳を強く握りしめた。

「はっ、お言葉ありがたく」

「……うん、では今後も励めよ」

 その言葉を最後に、指揮官ルフィーネ・オルシャは時間に追われるように、速足で退出していく。残されたロズヴェータも、重い足を引きずるようにして天幕を出た。

 騎士たちに敵の根切を命じたルフィーネは、次の予定に向かう際に信頼する護衛に声をかけた。

「先ほどの騎士達をどう見る?」

「はっ……忌憚のない意見を申し上げるなら、あの若者には何かしらフォローが必要なのでは、と」

「そうだな。顔に出る程に衝撃を受けていた様子であった。若いと笑うか?」

「いいえ、ですが我らができることは少ないかと」

 手持ちの権限でできるフォローは限られてくる。

「誰もがやりたくもない仕事をしているな」

 苦笑してルフィーネは、次の仕事に取り掛かる。その時にはもう、ロズヴェータに抱いた感傷のことなど頭から追い出していた。


◆◇◆

 

「よぉ、少し話せるかい?」

 天幕から出たロズヴェータを待ち受けていたのは、先ほど部屋に集められた騎士の内二人。

 巌のような大男の騎士と細身の弓を使う騎士。

 声をかけてきたのは細身の弓を使う男の騎士だった。

「……何か?」

「なに、そう警戒することはないさ。一緒に嫌な仕事をする仲間だ。情報交換をしておこうと思ってな」

「情報交換?」

 訝し気なロズヴェータの視線に苦笑して、細身の男は肩を竦めた。

「まぁ、ここじゃなんだ……少し歩きながら話そう。ああ、俺はクリウベル。そっちの大きいのは、マリルガル。どっちも辺境出身の騎士さ」

 彼等と話す場として選んだのは、食堂の一角。雨風をしのぐために頭上を布で覆っただけの簡易なものに、空き箱を並べてテーブルと椅子を作った場所だった。

 しかし、温かい食事が食べれるとあっては人気の場所だった。

「まぁ、何から話そうか……」

 そう言ってクリウベルが口を開いて若いロズヴェータに話した内容は、ひどく政治の臭いがするような話だった。

 曰く、指揮官は十字教伝統派ばかりを優遇している。

 汚れ仕事は、伝統派以外の教会派と普遍派に押し付けている。この仕事を喜んでやるのは、頭のいかれたヘーベルみたいな騎士だけ。

「最後になったが、あんまり真面目にやる仕事じゃないって話さ。まぁ生き残ったら、今度は酒でも飲もう」

 肩を叩いてクリウベルは、話を終える。

 一応の気遣いに感謝してロズヴェータはその場を立ち去るが、その背を見送る二人の視線は値踏みをするような抑揚のないものだった。

 決して後輩を心配して、というものではない。

「こっちに入れられると思うか?」

 クリウベルの問いに、マリルガルはほとんど無表情に答えた。

「……あの副官がいなければ」

「そうか、厄介かもな」

 今までの人当たりの良い笑顔などは、欠片もなくコップを口に運ぶクリウベル。

「……弾避けは、多いに越したことはないんだが」

 口から出たことは、生き残るためなら何でもやる辺境の騎士の言葉だった。

 彼らから少し距離を取り、自らの宿営地に帰る途中ロズヴェータは副官のユーグと話をしていた。

「彼らの意図は何だと思う? 愚痴を聞かせたいだけか?」

「とりあえず、使えそうな若造がいたので声をかけてみた。できれば自分達の被害を減らして成果だけを得たいので、味方に引き込めないかと模索中。そんなところですか? 彼等自身が言っていましたが、辺境出身の騎士が考えることなど、大体そんなものです」

 如才なく彼ら二人の話に頷いていたロズヴェータだったが、イマイチ共感できる部分が少なく、愚痴を言いたいだけなのかと思ってしまっていた。

「俺は、そんなに引き込みやすそうかな?」

 ため息交じりに愚痴をこぼすロズヴェータに、ユーグは苦笑する。

「年若く辺境伯家出身の苦労を知らない三男坊に副官付き……親友は王族で、大貴族の庶子とも交流がある。辺境伯領で功績を上げたようだが、辺境伯家の全面的な支援と幸運が重なっただけ……といった具合でしょうか」

「……見えるか。我ながら苦労知らずのお坊ちゃんだ。まぁでも気分転換にはなった」

 根切を言い渡された時の暗い気持ちが、多少なりとも和らいでいるのは事実だった。

 やりたくもない仕事だが、やらざるを得ないのが騎士たる者の務めなのだろうと、自分を納得させる時間ぐらいは稼げた。

「よぉ、さっきの坊主じゃないか」

 天幕の影からちょうど鉢合わせたのは、先ほど最後に入ってきたヘーベルという名の騎士だった。

「これは、どうも」

 如才なく顔を切り替え、頭を下げるロズヴェータに、見るからに危険なヘーベルは、立ったままにやりと口元を歪めた。

「あの、キツネ野郎と木偶の坊に話を振られたんだろう? あいつらの仲間になるのか?」

 咄嗟にそれが、クリウベルとマリルガルのことだと察してロズヴェータは、肩を竦めた。

「先輩として後輩にありがたい助言を頂きました。それ以上ではありませんよ」

「ひひ、なかなかどうして良い返答だ。あいつ等じゃ手に負えないな」

 ロズヴェータを、次いでユーグを見たヘーベルは、粘着質の笑みを浮かべると、ロズヴェータに忠告する。

「俺に言わせりゃ、仕事に熱心に向き合わねえのは不道徳ですらあるがね。どんな仕事でも」

「そこに趣味が加われば、楽しいことこの上ないと?」

 ある程度突っ込んでくるロズヴェータに、ヘーベルは笑う。

「そうそう、わかってるじゃないか。実益を兼ねた趣味、これが仕事になるんだ。こんな楽しいことはない。残念ながらお前はそっちの口じゃないようだが……」

 じろじろと、無遠慮にロズヴェータの顔を舐める様に見つめるヘーベル。思わずユーグは腰にさした剣に手を伸ばす。

 顔が近いんだよ、と内心思いながらユーグは即座に動けるようにヘーベルに狙いを定めていた。何かあっても事故で済まそうと考える。

「……まぁ、理解者には忠告をしておくが、てめえの生きる道は、てめえで決めなきゃ苦しむだけだぞ。信念があるのならな」

 一段と声を低めて、彼なりの忠告をする。

「……見た目よりも、真面目な忠告で驚きました」

「ひひ、よく言われる」

 言うだけ言うと、ヘーベルは不気味な笑い声を残して立ち去る。

「……良く先輩方に忠告を貰う日だな。俺ってそんなに立ち振る舞いが不安かな?」

 その背が見えなくなったところでロズヴェータは、ユーグに問いかけるも、苦笑されて終わる。

「頼りない後輩なのか将来を嘱望されているのか、判断に迷いますね」

「……信念か」

 未だ定まらないそれを、少しもてあましつつロズヴェータは宿営地に戻った。


◆◇◆


「攻撃開始だ」

 ルフィーネ・オルシャの宣言と共に、ほとんど防備のための力のない街に、およそ一千もの兵士が攻め掛かった。町は完全に包囲され、蟻の這い出る隙間もない。

 先の会戦で戦力が払底した街に残されたのは、僅か100を数える兵力のみ、町の住民を徴集してこの数なのだから、ほぼ戦力はないと考えてよい。

「徹底抗戦だ。奴らはこちらを皆殺しにするつもりだ。生き残りたければ、戦うしかないぞ!」

 そう言って町の戦力を鼓舞するのは、この街を支配するミディ家の当主ホルム。

 当主自ら剣を取って先頭に立つ様子は、頼りがいのある領地貴族の姿だったが、そうせねばならないほど追い詰められている証拠でもある。

 城壁での戦いは早々に決着し、数の暴力で責めるルフィーネ・オルシャは降伏勧告をしながら、兵を進める。同時に予備戦力として拘置していたロズヴェータ達を全面に出して市街地に残った敵を掃討していく。

「降伏しろ。降伏すれば、命は助ける」

「騙されるな! 奴らはこちらを皆殺しにするつもりだ!」

「だったらなぜ反乱など起こした!?」

「反乱せざるを得なくしたのはどっちだ!?」

 降伏勧告と罵声の応酬が繰り返され、それでも戦況は王国軍の圧倒的有利で推移する。

 僅かばかりの抵抗を排除し、警戒しながらミディ家が最後に立てこもったのは、彼等の居城。館に砦の機能を持たせたような防御設備を備えた自らの城だった。

「……行くか」

「気が進まないなら……」

「いや、やるさ」

 ロズヴェータとユーグは、そんなやり取りをしながら壊れかけた城門を潜る。

 既に館には火が回り、煙が充満しつつあった。

「ヘーベル殿は裏手から、クリウベル殿とマリルガル殿は側方から既に侵入済みの模様」

 伝令になった兵士の言葉を聞いてロズヴェータは、頷き歩を進める。

「あ~、隊長。この使用人も殺すんで?」

 抵抗らしい抵抗もない館の中に、震えて抱き合う二人の使用人。

 部屋の中で偶然見つけてしまった使用人の処置を、同行していた兵士が咄嗟にロズヴェータに問いかける。

「聞いてやるなよ。殺せというしかないんだから」

 年かさの兵士が、そう言って若い兵士を叱ると、ロズヴェータに向かって頭を下げる。

 ロズヴェータは頷くと、助けてやれと言いそうになった自分を恥じた。

 命じたのは、自分だ。

 彼らは命じられたそのままに、剣を振るっていくだけ。

「隊長、この先は煙がすごくてダメですね。館はほとんど燃え尽きてますし、中にいる奴らは大体煙を吸い込んで死んでました。生きてる奴らも、長くはない」

「……撤収する」

「了解しました。撤収! 撤収せよ!」

 副官のユーグの声で、三頭獣ドライアルドベスティエは館の外に避難していく。燃え落ちる館を見上げながら、反乱の鎮圧を終えた。



ロズヴェータ:駆け出し騎士(銀の獅子)


称号:同期で二番目にやべー奴、三頭獣ドライアルドベスティエ隊長、銀の獅子、七つ砦の陥陣営

特技:毒耐性(弱)、火耐性(中)、薬草知識(俄)、異種族友邦、悪名萌芽、山歩き、辺境伯の息子

同期で二番目にやべー奴:同期の友好上昇


三頭獣ドライアルドベスティエ隊長:騎士隊として社会的信用上昇

銀の獅子:国への貢献度から社会的信用度の上昇

毒耐性(弱):毒からの生還確率が上昇。

火耐性(中):火事の中でも動きが鈍らない。火攻めに知見在り。

薬草知識(俄):いくつかの健康に良い薬草がわかる。

異種族友邦:異種族の友好度上昇

悪名萌芽:行動に裏があるのではないかと疑われる。

山歩き:山地において行動が鈍らない。

辺境伯の息子:辺境伯での依頼で影響度上昇

陥陣営:連続で落とし続けている限り、味方の能力に強化効果。(連続7回)

信頼:武官(+15)、文官(+7)、王家(+8)、辺境伯家(+30)


信頼度判定:


王家派閥:リオリスの為に働くのは、良いことだよね。

文官:そういえば、辺境で活躍しているみたいじゃない? 踏み絵を踏んでもらおうか。

武官:悪い噂も聞こえるが……我慢も効くし。命令にはしっかり従っているし戦力にはなるな。

辺境伯家:このままいけば将来この人が辺境伯家の次代の軍事の中心では?


副題:ロズヴェータちゃん、敗者の末路を見る。

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[一言] ロズヴェータちゃん、好感は持てるが青い! そして甘やかしとも取れるがナイフフォロー、ユーグ。
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