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獣達の騎士道  作者: 春野隠者
王都経略編
59/116

王都への帰還

 ラスタッツァが加入してからの行程が多少快適になったことは、否定できない。今は森の肥料になっている元上司ゲランの指図通り、ロズヴェータ率いる三頭獣ドライアルドベスティエは、新しい任地にたどり着くまでの間、貴族の物見遊山とまではいかないものの、貧乏人の旅行程度には快適度は上がった。

 使うと決めれば、大胆に使うのがロズヴェータ率いる三頭獣ドライアルドベスティエだった。兵站は任せると決めた以上、ラスタッツァ率いるチソッド商会に兵站確保のための金を預け、必要な物資を買いこませる。

 同時にロズヴェータ自身は、美貌の副官ユーグを伴って新たな旗頭の元へ出頭する。ゲランからの書状を持ちながら旅装を解く間もなく、なるべく早期に出頭した。気持ちばかりが焦る中、ゲランの書状を受け取った新しい旗頭は、困惑気味に眉を寄せた。

「今更、この時期にか……?」

 胡乱気にロズヴェータを見据える視線に、ただ耐えねばならない時間が続く。実際の時間としてはほんの短い時間であっただろうが、ロズヴェータ自身にしてみれば半刻いちじかんにも相当するのではないかと思われた。

「……今こちらの区域は、盗賊の掃討は終わりに向かっている段階だ。手があれば助かる、という段階はとうに過ぎている。それは……わかるかね?」

 たっぷりと時間をかけて新たな旗頭から聞こえてきた言葉は、現状の認識の確認だった。

「はい」

 丁寧に口ひげを撫で付ける新しい旗頭の名前は、ショルツ。長身痩躯にポマードできっちりと撫で付けられた黒髪。浅黒い肌に威厳を出すためだろう口髭がちょっぴりついている姿を見ると、どうにも牛蒡ごぼうを連想させる男だった。元々細かった目が、ロズヴェータの返事を聞いて更に細められ、琥珀色の瞳が品定めをするように旅の埃も落とさぬままに出頭した若い騎士隊長を見据える。

「まぁ、よかろう」

 ショルツはそう言うと立ち上がり、その拍子に腰に佩いた細剣がガチャリと音を立てる。

「予備兵力という意味では、決して無駄ではない。あまり日数はないが……出動できる態勢は何日で可能かね?」

「明後日には」

 ロズヴェータは高速で頭を回転させて、兵士の休養、兵站の準備、そして地理の把握などやるべきことを総合して答えを出す。

「ふむ、なるほど」

 新しい旗頭のショルツは、その返答に顎に手を当てて少し考えこむと、感情を感じさせない琥珀色の瞳で、残酷に告げる。

「貴君らを待っている余裕はないな。明日の昼までに完了させよ」

 ちらりと、窓の外を見ておおよその時刻を確認するロズヴェータは、後ろで一歩踏み出す副官ユーグの足音を聞いて、慌てて制止する。

「わかりました。明日の昼までに完了させます」

「よろしい。では行きたまえ。時間は惜しいであろう?」

 踵を揃えて直立不動で返事をすると、ロズヴェータは、急ぎ足で部屋を退出する。

「ロズ! あれは!」

「いいや、あれで構わない。俺も逆の立場なら、ああいう態度をとる」

 今のロズヴェータの立場は、自分だけが楽をして盗賊の討伐をしたという功績を奪いに来たようにしか見えない。先ほどショルツは何と言ったのか。盗賊討伐は終わりに向かっている段階だと言ったのだ。それはつまり、ショルツの担当区域では、旗頭制度がしっかりと機能し、各騎士隊の果たすべき役割が明示され、それに従って計画的に盗賊の討伐をこなしたということだ。

 騎士校で習ったそのままに。

 それに後から来ただけのロズヴェータが名前だけを載せるとすれば、面白いはずもなかった。

「……遅れて恥をかかせられるのは、ごめんだ。なるべく急がせよう」

「は、はい」

 自分達がどう見られているのかを改めて認識したユーグは、それでも不満そうにしていたが、ロズヴェータの声に、我に返る。

「まぁ、ものは考えようだ。先達の騎士隊の実力を間近で見れる機会というのも、そうあるものじゃない。お手並み拝見というやつさ」

「ふふっ、ロズも人が悪いですね。急ぐのはその対価ですか」

 不満そうにしていた顔を綻ばせて微笑するユーグ。すれ違う年若い女達が感嘆のため息を漏らしていく。そのざわめきを置き去りに、二人は三頭獣ドライアルドベスティエが宿を取っている街中に向かって走り出した。


◆◇◆


 翌日、不平を言う兵士達を黙らせ、時間通りに到着した三頭獣ドライアルドベスティエの面々を見て、旗頭ショルツは僅かに眉を上げただけで特別な反応をしなかったが、その副官に何事かを指示するとロズヴェータに声をかけた。

「時間通りに来るとは結構なことだ」

「示された時間を守るのは、当然のこと。しかしながら手抜かりがあるかもしれず、先達の指導を戴ければ幸いかと思います」

 ほう、と言ってショルツはちょび髭を撫でる。まるで試験に臨む学生を見る教師のような表情に、否応なくロズヴェータは騎士校時代を思い出した。

「その言葉が口先だけではないことを祈るよ。では、出発だ。作戦の概要は前進しながら話そう」

 ショルツの合図で動き出す二つの騎士隊。

 聞けば他の騎士隊は、別の街に駐屯しており、途中で合流するとのこと。時間には余裕を持たせてあるため、行進自体はゆっくりと進む。全員が徒歩であるため、至極ゆっくりとした前進速度であった。

 1日歩き詰めで、二日目に他の騎士隊が合流すると合計で5つの騎士隊が集まることになる。

 そのどれもが、ロズヴェータ率いる三頭獣ドライアルドベスティエよりも先達の騎士隊であり、ショルツと一緒にいる彼らを見て一様に驚いた表情になっていた。

 中には露骨に険のある視線を飛ばす騎士もいたが、ショルツが三頭獣ドライアルドベスティエの役割を説明すると、それぞれに納得したような表情をして引き下がっていった。

「しかし、チソッド商会が酒保商人としてついているとは珍しいな。彼らとは何か個人的な伝手でも?」

 チラリと、ラスタッツァ率いる酒保商人を見やるとショルツが聞いてきた。

「いいえ、成り行きです。しかし珍しいのですか?」

「そうだな。彼らは主に西方を拠点とする商人だし……あまりいい評判は聞かない」

 中央から北側に位置するこの辺りで酒保商人として活動するのは珍しい。少しだけ考えた後に、その考えを振り払うようにショルツは首を振る。

「いいや、なんでもない。忘れてくれ」

「そう言われると聞きたくなってしまうものですが……」

 ロズヴェータの苦笑に、ショルツもまた苦笑で返す。

「確かにな。まぁ、言いかけてしまった手前もある。胸に収めておいてほしいのだが……彼らに関わった騎士隊は破滅するという噂がね」

「はぁ……よくある戦場の眉唾な? 騎士校でも兵士達は惑いやすいとよく……」

 苦々しくというよりも、困った生徒を見守るような柔らかい視線で、ショルツはロズヴェータを見る。

「あぁ、むしろ戦場の噂は真実を映すこともあるのだがね。人は目に見えないものを恐れる」

 学者のように考え込むショルツ。

「チソッド商会が、その……破滅を呼び込むと?」

「さて、事実として彼らに関わった騎士隊のいくつかが破滅しているという話を聞く。まぁ、原因はわからないが、気を付け給え」

 話を切り上げるショルツに、ロズヴェータは視線を転じてラスタッツァ率いるチソッド商会の旗印を見る。萌黄に新芽の旗印は、勢いよく風にたなびき、噂など知らんと言った風に見えた。

 作戦の概要は、至極簡単だった。堅実かつ着実に盗賊の活動地域を潰していく。時間と手間がかかる手法だがそれを犠牲を厭わずに達成できるだけの統率が、ショルツにはあるのだろう。

 簡単な地図と現地の指示で三頭獣ドライアルドベスティエを除く騎士隊を過不足なく動かして、追い詰めた盗賊を捕縛もしくは始末して任務を完遂させる。

 その様子を間近で見て居たロズヴェータは、暇を見てはショルツに質問をぶつけていた。その様子はまるで真摯に教えを乞う学生の姿そのもの。

 本陣として構えているショルツの騎士隊も、まるですぐ近くに敵がいるかのように臨戦態勢を崩さない。騎士隊全体が緊張感を保っていること自体がショルツの手腕を保証するものであり、ロズヴェータとユーグは目を見張った。

 作戦が全て終了し、一帯の安全が確保された酒宴では、積極的にロズヴェータ自ら話を聞くために各騎士隊を回ったりもした。

 当然ながら彼らに功績はない。

 今回の任務は失敗だな、と騎士隊を維持するだけの費用を帳面を見ながら確認したロズヴェータは、ため息をついた。

 依頼の完了時期が来て、王都に帰還する騎士隊と行動を共にする。王都に帰れば、時期は叙勲の季節だ。王国から半年の期間を通じて功績のあった騎士隊を表彰し、恩賞を与えるという叙勲は、春と秋に実施され毎年注目の的であった。

 3年目までは同年代の中だけで序列をつけ、それ以降は全て一緒というシステムは、騎士隊同士の競争意識を煽るとともに、王国への忠誠心を植え付けていた。また年2回の叙勲というシステムは、王国側からすると国内の問題点の状況を把握するためにも有用であった。

 また王都の庶民からしても、お祭りの面がある。どの騎士隊が最も活躍するのか賭けが成立する程に、王都では人気の催しであった。

 ショルツを旗頭とした騎士隊達も秋の叙勲の話が盛り上がりながら王都へ帰還し、組合ギルドへ報告を済ませると、旗頭であるショルツは別室に通され、他の騎士隊長達は一旦そこで解散となる。

「ようやく終わりましたね」

 副官ユーグの言葉にロズヴェータは頷いた。

「勉強になったな……」

「大赤字でしたが──」

 歯切れの悪いロズヴェータの言葉に、ユーグは目に入れたくない事実を口にする。

「言うなよ。わかってる。しばらく金策が必要だな。王都の留守番組に怒られそうだ」

「あの、性悪女の相手なら私が……」

「喧嘩はするなよ、とは言わないけれど、程々にな」

 ため息をついたロズヴェータの心配をよそに、ユーグは活き活きとして頷いた。

「お任せあれ」

 舞台俳優も裸足で逃げ出す美貌と仕草が相まって、ロズヴェータは怒る気すら起きなかった。

「おう、元気でな」

 他愛無いやりとりをユーグとしているとショルツの指揮下で戦っていた他の騎士隊長達は三々五々に帰っていく。道中それなりに話もし、気安い仲となった騎士隊長達の中には、ロズヴェータに声をかけていく者達もいた。

 分隊長達と合流し、ねぐらにしていた辺境伯家の邸宅に向かうと、分隊長達からも声があがってくる。

「いやー、懐かしい我が家って感じだね」

「お前の家じゃない。辺境伯の邸宅」

 バリュードの呑気な呟きに、ルルがまじめに返答する。

「まぁ、しばらく離れていたし、懐かしく感じるのは仕方ないさ。雨をしのげる屋根と風を防げる壁があるのは、快適だったしね」

「それは、同意する」

 ヴィヴィの言葉にルルも同意すると、横からバリュードがどうでも良いように問いかける。

「なんか、俺にだけ当たり強くない?」

「気のせい」

「ルル、仕事も終わったし風呂屋にいくかい?」

「男娼付きの?」

 ヴィヴィの言葉にルルは真顔で返し、周囲の苦笑を買っていた。

「まぁそれも良いんだけど、普通に風呂入って汗を流し麦酒エール飲むだけでも、疲れが飛ぶだろ?」

「それは……悪魔的」

 ごくりと唾をのむ音が聞こえてきそうなルルの言葉に、周囲は笑いながら歩く。そこで何かに気づいたルルが、まるで背筋に電気が走ったかのようにびくりと目を見開く。それはまるで天啓を受けた預言者のように、新たな定理を発見した数学者のように。

 ルルはロズヴェータにそそくさと近づくと下から見上げる様に口を開いた。

「……隊長も、一緒にどう?」

「いや、これからアウローラとのすり合わせがあるからなぁ……」

 気が重いと、顔に書いてあるロズヴェータの表情を一瞥して、ルルはヴィヴィの側に戻る。

「チッ、若木に過剰な水は禁止(いまいち)か……」

 帝国語エルフィナセレスのスラングを口にして、ルルが舌打ちしながら離れていくのを生暖かい目で周囲は見守っていた。

 そんな分隊長達の声を聴きながら、ロズヴェータは辺境伯家の邸宅に戻ってきた。


◆◇◆


「……ふーん、つまり失敗ですか。長期間王都を不在にして、隊としての収入はほぼないに等しい……別に私も全ての依頼を完璧に達成せよというつもりはありませんが、収入はなしですか。ふーん、なしね。騎士様、それはどうなんでしょう? なんとかなったのではなくって? 例えばこれ、チソッド商会に途中から兵站を任せていますよね。これ、これがなければ収入がなくなるってことはなかったのではないでしょうか? だって酒保商人は手数料を取っていきますよね? 今までなんとかなっていたものを、なぜ酒保商人に? まぁ、過ぎたことはどうでも良いんです。私の騎士様が今後隊の運営をどのように考えているか、それがはっきり示せるならね。で、どうなのです? まさか秋の叙勲で褒章が入るとか甘い想像をしてらっしゃるんじゃないですよね? それは幻想、もっと言えば妄想の類なんじゃないでしょうか? だってまだ入ってないんですよ? しかも極めて政治的な、はっきり言えば、誰の目にもわかるような政治劇なんですよ? それをあてにしている? 騎士様……夢見がちなのは悪いことではありません。まだ騎士という名前に幻想を抱かれるのはご自由です。でもね、現実問題としてお金がないと食べていけないんです。それは分かっていただけますよね?」

 事実を確認されているだけだと言い聞かせて、ロズヴェータは自身の中に沸き起こるどうしようもない感情に蓋をする。最後に特大のため息を吐かれて、成果の確認という名の精神的拷問は終わった。

「これが、こちらの成果となります」

 受け取った書類に目を通すと、娼館の護衛と並行して確実な仕事をこなしている収支。書類作成代行に、中小の商家の荷運び等危険は少なく、体力さえあればこなせるものを中心にリスクを極力低減したやり方で収益を上げている。

 中でもロズヴェータの目を引いたのは、文官の下請けに類するものだ。普通は伝手が無ければ受けられないそれを、アウローラは難なく受けてこなしている。

「何かお言葉は?」

「大変、御立派な成果デス……」

 蚊の鳴くような声になっているロズヴェータは、魂すらどこかに飛ばしそうになっていたが、表情だけは真面目に取り繕う。騎士校で学んだことだが、このような時感情を表に出すと決して良いことはない。

「……まぁ、今後猛省して頂ければ構いません。で、次のお話です」

 今までどこか勝ち誇ったお嬢様然とした雰囲気を脱ぎ捨てて、アウローラは居住まいをただした。それは勝負を前にした勝負師の顔。

「ここだけの話、戦争が起こりそうです」

「──いつだ?」

「時期までは、まだ。けれど相手は西方の帝国ロスデリア」

ビスデリア(うそつき野郎)か……」

 アウローラはその瞳に呆れを浮かばせ、忠告を口にする。

「それ蔑称だからね、本人達には言わないように」

「そうなのか?」

「かつてのロマネアの後継者を名乗っているからね」

「もう、四百年以上前に滅んだ国だろう?」

「それを言い出すと歴史の授業になるわ」

 構わないのかという問いかけに、無言で首を横に振って否定をするロズヴェータ。それに苦笑すると、アウローラは本題に入る。

「恐らく騎士隊にも召集があるのでしょう? 派閥からの依頼という意味で重要なものになると思うから、気を付けてね」

「……ああ、勿論」

 戦争と呼べるほどの大きな戦は、珍しくはない。しかしながら、断片的に聞こえてくる情報だけでは、ロズヴェータには判断できるはずもなかった。

「……最後になったけれど、無事に戻ってきてくれて嬉しいわ。私の騎士様」

 そう言って席を立つとアウローラは邸宅の女主人のように指示を出して、自室に引っ込む。

「そうか、戦争か……」

 騎士としてそこに立つことを夢見て、ロズヴェータはぼんやりと高い邸宅の天井を見上げた。


◆◇◆


「では、調査結果を聞こうか」

 牛蒡を連想させる騎士ショルツは、副官からの報告に耳を傾けていた。調査の内容は、三頭獣ドライアルドベスティエの上官殺害嫌疑である。

「結論を申し上げれば、白かと思われます。しかし限りなく灰色ではありますが」

「上手く偽装した、という可能性は? チソッド商会と共謀の上ということであれば、可能だろう?」

「その線も考えて捜査をいたしましたが、残念ながら、チソッド商会はやはり手強く」

「ふむ……」

 疑念は当初からあった。

 素行不良な騎士ゲランから出された手紙は、簡潔極まるもの。理由も何もなく、ただそちらの任地に派遣するという旨のものだけ。経過や必要性など一切を省いたその文章から、偽造の可能性を疑ったが、文字自体は間違いなく過去の文章と見比べても本人の者と照合できた。

 状況証拠は揃い過ぎている。

 ゲランを旗頭としたチームの各組から、ゲランとロズヴェータが功績でもめていたという証言が確かに取れている。また街中の噂でも、当時騎士団同士が一触即発の雰囲気にあるという噂も確認できた。そして何より、ゲランの騎士隊及びゲランの影響力が強い騎士隊が行方不明となっている。

 これでは、疑わない方が難しい。

 しかしながら、決定的な証拠はない。ロズヴェータの騎士隊が街を出発したのは、ゲランの騎士隊よりも前になる。それを追う形でゲランの騎士隊が出発していったことは確認できているため、ロズヴェータの騎士隊が積極的にゲランの騎士隊を襲ったという図式は考えずらい。

 だとすれば、反撃をされたゲランの騎士隊が壊滅したという形だが、それにしてはショルツが見たロズヴェータの騎士隊の損耗が小さすぎる。もし行方不明となっている二つの騎士隊を無傷に近い状態で返り討ちにしたというのなら、その実力はいかほどのものか。

 状況的には不意打ちに近い形で襲われたはずで、二つの騎士隊を相手にして無傷で返り討ちにするなど隔絶した実力差があるか、相当な幸運に恵まれなければ不可能なことだ。

 しかも、誰一人として生かさず証拠を残さないという残酷さをもって。

「念のため、組合ギルドには報告を。派閥には、私から報告しておこう」

 副官の返事を聞きながら、ショルツはロズヴェータの騎士隊の危険度を図りかねていた。自身の手並みを見せるようにして予備として拘置していたのも、彼らの実力と危険度に危惧を覚えたからだ。ショルツの騎士隊全体に、緊張感を持たせた警戒態勢を取っていたのも、ロズヴェータの騎士隊からの不意の襲撃に備えるため。

 ただ、それとは別にショルツがロズヴェータに抱いた感想は、騎士校を出たての新米騎士という印象だった。良く学び、周りともかかわり方を少しづつ覚えていく段階の少年という印象だった。

 その印象との落差もまた、恐ろしいと感じてしまう。

「あれが、偽装というのなら、大したものだが……」

 小さなショルツの呟きは、誰にも聞こえず消えていった。




ロズヴェータ:駆け出し騎士



称号:同期で二番目にやべー奴、三頭獣ドライアルドベスティエ隊長


特技:毒耐性(弱)、火耐性(弱)、薬草知識(俄)、異種族友邦、悪名萌芽、山歩き


信頼:武官(+2)、文官(+2)、王家(+3)、辺境伯家(+3)


同期で二番目にやべー奴:同期の友好上昇

三頭獣ドライアルドベスティエ隊長:騎士隊として社会的信用上昇

毒耐性(弱):毒からの生還確率が上昇。

火耐性(弱):火事の中でも動きが鈍らない。

薬草知識(俄):いくつかの健康に良い薬草がわかる

異種族友邦:別の種族がある一定以上仲間に存在すると発現、異種族の有効度上昇

悪名萌芽:行動に裏があるのではないかと疑われる。

山歩き:山地において行動が鈍らない。

信頼度判定:

王家派閥:そういえば、そんなのいたかな?

文官:最近割と活躍しているみたいじゃないか。

武官:こいつ、悪い噂も聞こえるが……。

辺境伯家:使える駒に期待。


副題:ロズヴェータちゃん、できる上司に疑いの目を向けられる。

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