夏の海の乙女
真夏の真っ白い砂浜、青々とした波がざぶんざぶんと押したり引いたり忙しい。
鼻孔をくすぐる潮の香り。
照りつける太陽。真夏の熱風。十七歳の夏。
水着姿の私は右手にかき氷、左手にフランクフルトを一本持っていた。時たまフランクフルトをかじりながら親の待つ、砂浜のパラソルの下まで早足で急いだ。父親に頼まれたかき氷が太陽のせいでもうかなり溶けかかっている。溶けたらただの水だ。
急がなきゃ。
私は青空を見ながら歩いていた。
夏の海
女の色気
水着ギャル
面白くもない川柳を頭に浮かべながら、くだらないなあと首をひねるってよそ見をして歩いていたら、正面から人とぶつかった。
「あっすみません」
やってしまった。
私は頭を下げ、心のなかで許してと請うた。
顔をあげると大学生ぐらいの男の人が驚いた顔をして私をまじまじと見ていた。目がまんまるだ。
かき氷のシロップのかかった部分がスライドするように熱い砂浜の上に落ちてしまっていた。フランクフルトは無事だったようだ。
「大丈夫ですか?」
男性が私に言った。
「あっ大丈夫です」
私はエクボを作り微笑んだ。
ふと彼の水着の上の裸体に目がいった。
引き締まった褐色の上半身に六つのチキンナゲットがついていた。
「あっ、割れてる」
思わず私は頭の中で考えていたことが口から出てしまった。
「えっ」
男性が目を丸くする。
「あっすみませんっ!」
私は彼の横をすり抜け、大急ぎで走って行った。
朱い頰
恥ずかしいよう
夏の海
ぶつかった彼
私の初恋