パーティーへの誘い
いや、考えようによってはチャンスだ。聖女様にならレインフォレイトさんを完全に治してもらえる。いくらかかっても私が後から払えば……
「お願いします! どうか彼を治してやってください! お代は後で私がなんとかしますから!」
「いえいえ、必要ありませんわ。先生にはうちの子がお世話になってるんですから。それに、この度はうちの子の発言でいたく傷つかれたとか。バカな子で恥ずかしいですわ。」
知られてる……私が授業をほっぽり出してしまったことを……
で、でもいい! 彼が治るなら!
「じゃ、じゃあレインフォレイトさんを治していただけるんですね!? あ、あの、ありがとうございます!」
「ただし、先生にも相応の覚悟をしていただきますわ? お金がないのですから当然ですわね?」
か、覚悟?
「わ、分かりました……彼が治るのでしたら……」
「では手をお借りしますわ。」
手を?
聖女様が私の両手を握った。一体何を……
「ねびっなっ!?」
な、何、今の……私の魔力が……全部吸い取られた……嘘……い、意識が……
「じゃあウネフォレト先生の魔力の分だけ騎士さんを治しておきますわね。」
おね、がいし、ま……
はっ? あ、朝? ここって……治療院? 私どうして……はっ! やらかしちゃった……
レインフォレイトさんに怪我させた上に聖女様に知られて、厚かましくも治癒を頼んじゃったんだ……
そうだった、それで聖女様に魔力を吸い取られたんだ……うわぁ体が怠い……一晩経っても回復してないなんて。どれだけ抜かれたんだろう。学校行かないと……
「お目覚めになりましたね。」
「レインフォレイトさん……ま、まさかずっと傍に?」
「当然でしょう。私のために全魔力を抜かれてしまったのですから。さぞお辛いでしょうに……」
辛いのは辛いけどお金がなくても治してもらえて助かったって気持ちの方が大きいかな。それに……
「この度は申し訳ありませんでした。街中で中級魔法なんて……どうかしてました……」
「いえ、何事もありませんでしたので。むしろクタナツ教師の実力を垣間見れてよかったですよ。風弾はどうにか防げましたが、あれはさすがに無理です。」
「嘘……」
あの程度、デルボネル先生ならさらりと躱すし、ナタリー先生ならふわりと逸らす。校長先生だったら……かき消してしまいそう。
「まあそれはもういいんです。ところで、悪いと思っておられるのでしたら来月代官府でお代官様の生誕パーティーがあるのですが、ぜひご一緒してください。あのようなパーティーに一人で行くなんて悲しすぎますからね。」
「お代官様の!? 勘弁してください! そんなドレスなんかありませんし! そんなに偉い人のパーティーだなんて! 場違いです!」
「気にすることはありません。ここはクタナツですよ? 身分差など大した意味を持ちません。先生だって上級貴族のお子さんも平民の子も平等に接しているでしょう?」
そりゃまあそうだけど……
そもそも上級貴族の子息と平民の子供達が同じ組で勉強してることがおかしいのに……だからいちいち態度を変えるのは面倒ってことはあるよね。
はぁ……仕方ないか。今回は私が悪かったんだし……鉱山送りにならなかっただけ良かったと思おう。
「分かりました。お供いたします。ですがドレスなんか持ってませんので平服ですよ? いいんですね!?」
「構いませんとも。お代官様が杓子定規なのは仕事に関してだけです。仕事以外の面ではかなり融通の効く方です。気楽に楽しみましょう。あ、私も礼服なんて持ってませんからね。」
騎士団の制服があるくせに……
はぁ……来月か……
パーティーなんて学生時代にお友達の誕生パーティーぐらいしか行ったことがないよぉ……それなのにクタナツの支配者であるお代官様のパーティーだなんて……
ドレス……着てみたいなぁ……