教師ミシュリーヌ
あれからもう少しで二年が経つ。あの時三年生だった子供達も今では四年生、そしてこの四月で五年生となる。
そんな新学期目前の春休み、私とクリスは結婚式を挙げた。場所はローランド神教会クタナツ寺院。神官長のネイチェル様が立会人を務めてくださった。この人って私が二歳参りで初めてここに来た頃からおじいさんなんだよね。一体何歳なんだろう。
「ミシュリーヌ! おめでとう!」
「騎士団の副長と結婚だなんて羨ま死ね!」
「やっとあんたも片付いたわね!」
「おめでとー! 飲みすぎたら子供に悪影響出るよー!」
「みんな……ありがとう!」
同じクタナツで生まれ育った仲間たち。私以外みんな結婚して子供もいる。今までは羨ましくて仕方なかったけど。これからは旦那の愚痴や子育ての文句を言ったりできるんだ。
クリスのご両親が元貴族だったのには驚いたけど、平民の私を快く受け入れてくださって嬉しかったなぁ。
私もやっと親孝行できたと思ったら今度は、孫はまだか孫はまだかと会うたびに言われている。こればっかりはね。
ちなみに、パーティーで聖女様が言われたクリスに若くて可愛い子を紹介するって話。聖女様の二女、キアラちゃんのことだった……確かに若くて可愛い子だし……
なんでまだ四歳なのに私より魔力が高いのよ……
そして、あちこちへの挨拶まわりが終わり新居も決まった。家族持ちの騎士団員用の一軒家。広くも新しくもないけど気に入った。これからしばらくは二人だけの生活、だんだん家族が増えていくのかなぁ……
色々あったけど生活が落ち着いた頃にはもう春休みも終わりかぁ。生徒達には何て言おう。そっか、私もう『ウネフォレト』じゃないんだ……
ミシュリーヌ・レインフォレイト。あんまり変わった気がしないかな。それでも全然違うよね。学校ではどうしようかな。
ついにこの子達も五年生かぁ。この一年で卒業なんだよね。四年間この子達の担任をしてきたけど、色々あったなぁ。
いつの間にかいなくなった子。昼休みに決闘して死んだ子。一家でクタナツから逃げた子。それでも今日まで生き残った子供達。みんなかわいい私の生徒。
よーし! 今日もがんばろう!
「みなさんおはようございます。今日から卒業まで頑張っていきましょうね。
私ごとですが春休みに結婚しました。家名が変わりましたが、訂正するのも覚えるのも面倒でしょうから今年度はウネフォレトでいきます。」
うわぁ……拍手されちゃった。あれから三十一歳になっちゃったけど嬉しいなぁ。あぁ泣きそう。でも、だめだめ。
さあ、授業を始めよう!
これにて完結です。
お読みいただきありがとうございました!
この話の本編は『異世界金融』というクタナツ生まれの少年カースの成長を描いたものです。
ウネフォレトはカースの担任の教師ですね。
最終話は本編では『203、カース、五年生』
https://ncode.syosetu.com/n5466es/203/
とリンクしております。
聖女イザベルやその夫アランの活躍など、色々書いてますので気になりましたら『いせきん』本編を読んでみてやってくださいませ!