第3日:国の情報
・アキ視点
「じゃあ、各国の詳しい情報とか情勢を教えてくれないか?」
「分かったわ。まずは、私達がいるこの大陸についてから話しましょうか。この大陸はナディリア大陸って言うの。この世界で二番目に大きい大陸ね」
へー、異世界っていうから中世ヨーロッパ時代と同じような文明だと思ったけど、他大陸に渡れるくらいの発展はしてるんだな。しかし、こっちでは"魔女狩り"みたいな歴史はねーのかな? 後で聞いてみるか。
「ナディリア大陸にある国はそうね、小国や属国を除いたら、五大国があるわね。まずは、私が住んでいたアーズ竜王国から説明するわね」
「アイリスが住んでいた国、いつか行ってみたいね」
「だな、機会があったらそのうち行ってみるか」
竜王国って言えば、ファンタジーでは定番だよな。
まあ、まずは情報だな。これがないと迂闊に行動も出来ねぇ。ましてや、俺達がこうやって異世界にいる以上、勇者召喚とかは絶対にありそうだしな。……テンプレみたいに馬鹿ばっかのクソ共じゃなければいいんだが。
「ええ、また今度ね。それで、アーズ竜王国は竜族が治める国よ。丁度いいから種族の説明もしていくわね。竜族は誇り高き種族であり、強さも尋常ではないわね。そんな種族が治めてる国だから、この大陸で一番賑わっているわね」
「へー、すごいな,やっぱ、竜族っていうのはかっこいいもんだよな」
「そ、そうかしら? って、何であなたがそんなことを知ってるの?」
「ん? ああ。私達の世界って、異世界系の本が売ってて、それに竜族とかも登場するんだ。だから知っているの」
「へー、そんな書物が出回ってるのね。あなた達がいた世界って」
「ああ、そうだな。文明はすごく進んでるな」
「いつか行ってみたいわねぇ。っと、それより、説明の続きを話すわね。アーズ竜王国には、代々、ヴァリオレイン家の巫女の後継者が継ぐ、《神殿》があるの。私達の一族には光魔法を持った神竜種が定期的に産まれるの。その子が巫女の後継者なのよ。私もそのうちの一人ね」
なるほど。……神竜種の存在は少数だと推測出来るな。だが、アイリスのヴァリオレイン家は定期的に神竜種が産まれるって言ってたが、そんなこと有り得るのか? これも要研究だな。
「竜族の神竜種って寿命はどのくらいなんだ?」
「んー、そうね。大体5000年くらいかしら。あ、神竜種は、五代くらいの間隔で産まれてくるわ」
「なら、普通の竜族はどのくらいなんだ?」
「そうねぇ、1000年くらいね」
「ふぅん、先代の神竜が亡くなりそうになったら新しい神竜が産まれて来るんだ。なんか、遺伝子とかの関係かな?」
「よく遺伝子なんか思いついたな? 普通そんなこと分からねーぞ?」
「前にお兄ちゃんが遺伝子の研究してて、私も少しだけ話を聞いたからね」
おいおい、あかりのお兄さんすごいな……。
そういえば、あいつもそういう遺伝子の操作とか組み換えの話をしてたな。あいつは科学系統の天才だったからなぁ。あの研究は俺も手伝ったりしたからな、よく覚えてる。まあ、あの力が発見されてなかったら不可能なものだったけどな。
……今思い出したんだが、あいつらと1ヶ月後に会う約束してたんだった。どうすっかなー。創世魔法で帰れたらいいんだが。まあ、おいおい試してみるか。
となると、このログハウス以外にも、研究をする所や国にも活動拠点が必要になってくるな。
「じゃあ、続けるわね。次はレディウス帝国ね。この国は、一言で言うなら完全実力至上主義ね」
「へぇ……それはすごいな。だが、それでちゃんと国が回っているのか?」
「ええ、あの国の帝王は賢王だから。それに、実力至上主義も軍や騎士、魔法師団だけだからね」
「なるほどな」
「だけど、賢王がいない代の時は大丈夫なのか?」
「ええ、そうね。愚王が帝王の時代は本当に酷かったわ。民には高い税をかけ、他国に侵略戦争を次々と仕掛けていたわ。……まあ結局、身内によるクーデターにあって、代替わりしたけどね」
やっぱ、どの世界にもそういう類いのクズはいるよな。
しかし、軍とかは結構な人数を必要だよな? 完全実力至上主義って言うからには、ほとんど全員がそれ相応の実力を持っているのか? そんな人数をどうやって集めているんだ? それか、将軍とかの一部の人物が相当な実力なのか……。ちょっと、帝国に興味が湧いてきたな。
「なるほどなー。今はどうなんだ?」
「今は真の賢王と言われる程の人物よ」
「へぇ、それは一度会ってみたいな」
「…………そんなおいそれと会えるようなもんじゃないわよ。じゃあ、続けるわよ?」
「ああ、頼む」
「じゃあ、次はリディア聖国ね。この国は、時の女神セレナ様を崇めている国よ。この国は、すごくいい国でね。私もよく訪れていたわ」
「どんな国なんだ? アイリスがそう言うくらいだから気になるな」
「ええ、この国の王はね、世襲制なの。代々、リディア教の聖女か聖者が王として国を率いるから、国は穏やかだし、作物も安定して採れているから、国としては最高ね」
へぇ、まだ、王などが存在する文明の中で不作も起こらず、安定して供給出来ているのか。この世界では、確実に戦争が起きてる筈なんだが、そんな中で一体どうやって栽培しているんだ? コツとかあるんなら、是非とも教えて貰いたいな。家庭菜園とかやってみたいし。
「次は、ルーゼン魔国ね。ここは、魔族が治める国ね。魔族は閉鎖的な人種だから情勢とかは知らないわ。ただ、今代の魔王は女性だっていう噂が流れているわ」
ふーん、この世界では、魔王とか魔族は敵ではないんだな。
しかし、魔王……ねぇ。魔王をこっちに引き込めれば魔法の研究とか捗りそうだなぁ。
魔国の詳しい情報を集められればいいんだが……。
今度、偵察機とか作って、隠蔽して送りこんでみるか。
「へー、じゃあ、魔国との交流はないのか?」
「国そのものとはないわね。だけど、例外はあってね、外の世界を見てみたいって言う魔族の人は少数いるの。で、私も人づてに聞いたんだけど、魔国は内部争いが頻繁に起こるそうよ。人類で言うところの貴族による魔王の後継者争いがのせいでね」
「なるほど。魔王はそれに打ち勝った者がなれるのか。帝国とはまた違った意味で実力至上主義の国なんだね」
「地球の政界みたいだな、そういうところは。まあ、地球よりこちらの方が内容はましだが」
「……そろそろ次にいくわね? これでこの大陸最後の国、レティシア王国ね。この国は、正直に言って、もう終わってるわね」
「と言うと?」
「国の土地と民達には一切問題はないの。でもね、貴族社会が腐ってるのよ」
「ああ、なるほど。要するに、レディウス帝国の愚王の時代と同じような感じってところか」
「ええ、そうよ。と言っても、レティシア王国は何代も続いているから帝国よりも悪いわね」
「……それは、アイリスが終わってるって言うのも頷けるな」
「ただ、貴族の中で一人だけ真っ当な人物がいるのよ」
「まじか? 貴族全体が腐ってんならそんな人物なんか普通はいないだろうに」
「まあ、貴族と言っても、爵位の無い公爵令嬢だからね。真っ当だからこそ周囲の貴族には疎まれているけど、家族には利益をもたらすから、両親からは可愛がられているそうよ」
「……よくそんな娘が産まれたな。普通ならその子も腐るだろうに」
「ええ。でもあの令嬢は国民には聖女と呼ばれて慕われているわね」
腐った貴族社会、国民に慕われ聖女と呼ばれる公爵令嬢。うん、嫌な予感しかしないな!
だって、こういうのってテンプレだろ? 邪魔な者は、適当な理由をつけて犯罪者にして、最低でも国外追放、最悪なら死刑になったりするからな。
「それは…………」
「何よ? 何か気になることでもあったかしら?」
「あるにはあるが、先に他の大陸や国の情報を聞いておこう」
「そう、分かったわ。なら続けるわね。レティシア王国は数年前、大昔の秘術、勇者召喚を行ったのよ」
おっと、ここで勇者召喚が来たか〜。
腐った国で勇者召喚…………うん、これは駄目なやつだろ。絶対クソ勇者だろ。
「異世界のニホンから来たとあのクソ勇者共が言っていたわ」
「クソ勇者って……まあ、それは後で聞くとして、数年前って、正確には何年前だ?」
「えーと、そうね、大体4年前くらいかしら」
となると、戦争が終わった直後くらいに召喚されたのか。となると、どんな奴らが召喚されたんだか。ま、とにかく聞いてみるしかないか。
「そうか、ありがとな。それで、クソ勇者っていうのは?」
「ええ、私もね、仕事の関係であいつらと話したことがあるんだけど。素行は悪いし、男共は私の胸や身体をジロジロと舐めるように見られるし、果てには俺の女になれ、これは勇者命令だ、とか抜かすのよ?」
「うん、それはクソだな。まず、他国の重鎮に勇者命令(笑)とか土台無理な話だろ」
「ええ、だから丁重にお断りしたわよ。でも、その一件で彼らに対する印象は最悪ね」
「そりゃそうなるわ」
だが、これでますます例の公爵令嬢が危ないかもな。後、勇者の件も興味あるし、何日かしたらレティシア王国に行ってみるかな。
「よし、これでもう、ナディリア大陸の大国の情報は全部教えたから、次はフォルス大陸かしらね」
「よろしくー」
「まずは、シンシア皇国ね。この国は、魔法に特化しているわね」
「じゃあ、研究所とかあるのか?」
「ええ。魔法研究所もあるし、魔法学院っていうのもあるわ」
「へぇ、面白そうじゃないか」
魔法の研究か。その研究内容を是非見てみたいな。魔法の詳細は全部分かったんだが、使用方法とかはまだ研究してみないといけないからな。それに、いろいろと便利道具も作りたいし。
「私は何回か研究資料を見たことがあるけど、結構すごかったわ。間違いなく最先端の技術ね」
「そんなにすごいのか?」
「ええ。新しい魔法の定義、魔法使用方法の新技術とかね。魔法のあらゆる方面で次々と新しい技術が出ていたわ」
「その情報は秘匿とかはされていないのか?」
「秘匿はされているわよ。ただ、私みたいな特殊な立場の人物には秘匿情報を開示しているようね」
「それは……すごい余裕だな。戦争だって起こるだろ?」
「ええ。多分だけどね、実際に余裕なんだと思うわ。だって、次々と新しい技術を開発するんだもの。他の国々が追いつける訳がないわ」
「なるほどね。そりゃ確かに道理だな」
「でしょ? なら次にいくわね。次は、ザンバキア帝国ね」
「二つも帝国があるのか?」
「ええ、昔は他の大陸なんて存在しないとされていたからね。他の大陸なんて見つかれば王国や帝国なんて複数になるわよ」
「そういうことか」
確かに昔、他の大陸が見つかっていなかったのなら、王国や帝国がいくつあってもおかしくないな。
……そうだ、国だけじゃなくて、年や月、日、時刻、四季の関係とかも聞かねーとな。
「ザンバキア帝国は、有り体に言えば、奴隷制度が激しい国ね」
「……奴隷制度、あるのか」
「あっ、奴隷制度って言ってもあなた達が想像するような人権を無視するようなものは一部を除いてないわよ。その制度は昔の英雄が廃止したからね」
「そうなのか」
「ええ、今では借金奴隷と犯罪奴隷の二つがあるわ。借金奴隷は人権が確保されているわ。売られたお店で働けば、いつか自分で返済し解放できるわ。犯罪奴隷は犯罪の重さ、回数によって刑罰が異なるの。王族などの暗殺などの場合は死刑ね」
「へぇ、そこら辺はちゃんとしてるんだな。奴隷制度って言うんだから法律があるのか?」
「ええ、あるのだけれど、どこにでも闇はあるのよね。借金奴隷でも犯罪奴隷でもない違法奴隷もいるのよ」
「やっぱりそういうのもあるのか」
「ええ、闇市場の者達がどこからか美しい女性を攫って、貴族に売るのが多いわね」
やっぱり、奴隷もいるか。地球でも奴隷制度はあったからな。文明が進んでいないこの世界では無くなりはしなかったんだろうな。しかし、奴隷制度の法を作った英雄は素直に尊敬するな。だって、こんな世界で違法奴隷を無くしてはいないがほとんど無くなったんだぞ? これは本当にすごい。
「ゲスだな」
「ええ、ナディリア大陸でも主にレティシア王国で違法奴隷が蔓延っているわ」
「……そうか。まあ、今は考えても仕方ないな。次にいこう」
「そうね。じゃあ、次はリーン共和国ね。ここは、森人族の女王が束ねる巨大な森の中にある国よ。様々な種族が少数で集まって奴隷もいない平和な国ね」
「例えばどんな種族がいるんだ?」
「んー、獣人族に森人族、土人族、人魚族がいるわね。ただ、外に出れば差別によって奴隷にされるから絶対に森の外には出てこないわね」
「……その、差別っていうのは何だ?」
「人族はね、人族至上主義を掲げているの。まあ、竜族と龍族はその限りではないけどね」
「そうなのか?」
「ええ、竜族と龍族は人族からは崇められてるから。だから、他の種族は卑しい穢れた種族として奴隷として働かせているのよ」
「まじか……そりゃ、そういう国作るわ」
「まあ、竜王国でも人族以外の種族も受け入れているからね。ある程度は抑えられているのよね」
「そうか、ならまだましなのかねー」
「ええ……完全には無くならないもの」
「そうだな。……さて、次に行くか」
「分かったわ。次で最後ね。最後はソリティア大陸にある統一国家太陽神国よ」
「大層な名前だなー」
「そうねぇ。でも、その名前に似合う程の国なのよ」
「そんなにすごいのか?」
「ええ、王族や全貴族による奴隷制度完全廃止にたったの2%の税金、その他も色々と政策をしているわね」
「そ、それはすごいな。その国は絶対に行きたいな」
「私も一回は行ってみたい!」
「ふふっ、そうね。話してて私も行きたくなって来ちゃったわ」
奴隷制度完全廃止かー。ほんと、太陽神国ってすごいな。この世界の文明で奴隷制度完全廃止に税金2%って普通やってのけられねーぞ? しかも、全貴族も行動って、腐った貴族が一人もいないのもすげーな。
「なぁ、秋」
「何だー?」
「もう夜も遅いし、そろそろ寝よう?」
「あー、そうだな。そうするか」
「あ、今日は私、アイリスと寝るから」
「えっ!?」
「そうか、分かった。おやすみ〜」
「うん、おやすみ」
「ふぅ…………分かったわ、おやすみなさい」
さて、明日からは忙しくなるな〜。あかりとアイリスと一緒に行動計画を詰めていかねーとな!
いやー、課題が毎日出て、忙し過ぎますね。小説を書く暇がないですよ。
これから秋達はどこに向かって進んでいくのか楽しみですね。
ではでは、また来週!!