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生存率小数点以下

 令は準備室で思いもかけない人達に出会った。


「よぉ! 思ったより早かったな」


 こう言ったのは最初の対戦相手の三好軍曹だった。


「聞くところによると最上位に望むんだって? ご愁傷様」


 これはお兄さんの横田だ。


 そして最後の女性の日下部が、

「これは忠告だけど、八角棒は止めなさいね。それが効果があるのは人間だけだから。化け物には刀のような切り裂くことが出来る獲物でないとね。それから、刀でも魔法を付与していないと効果は無いよ」


 礼はなんと言って良いのか分からず、その場に立ち尽くしていると、先ほどの総監が、


「今生の別れになるかも知れないから、遺言とかあったらそこの紙切れに書くと良いぞ」


「え? 願い事でも良いのですか?」


「書くのは自由だ、が、実行される保証はない」


「だったら?」


「そうさ。遺言なんて、そんなもんさ。気休め気休め」


 その後、武器を選択させられ、そのままれいの亜空間に投げ込まれた。


『一体ここはどこなんだ?』


 そこに令の小人が、


「ここは政府が管理している亜空間ですよ。つまり偽りの空間。実世界とは繋がってはいません。だからですかね、化け物を飼育できているんですよ」


『化け物って!??? そんなものに会いたくもないんですが!!』


『そう言っても、向こうからやってきましたよ。旦那、頑張って!』


 令の目の前に出てきたのは大きな蜘蛛だった。


 その素早くジャンプして移動してくる蜘蛛は多分蠅取蜘蛛


『これってどうすれば良いんだ?』


『こいつは数十人は食っている奴ですからね。かなり手練れですよ。でもね、所詮は蜘蛛、昆虫ですよ。そこを攻撃すれば!?』


 なんとも理解しがたい助言だったが、令にはありがたく感じた。それは、

『所詮、昆虫か!』

 と、なにやら感じ取ったようだ。


 そこに蜘蛛からの攻撃が飛んできた。


 蜘蛛は尻からネバネバの糸を吹きかけたのだ。


 令は刀と思ったが、回避する選択をし右横にゴロゴロと転がっていった。体にはかなりの土埃がくっついただろうが、ほんの僅かでも糸の粘着力が弱まるかもと思ったのかも知れない。


 が、起き上がった令に、蠅取蜘蛛は飛びかかってきた。

 令は今度は前転で蜘蛛の体の下をくぐり抜け、た、かに思えたが、蜘蛛の腹が行く手を塞いだ。


『こんな腹!』

 と、令は刀で切りつけたが、蜘蛛の腹とは言え化け物の体だ。単なる刀では歯が立たない。それで令は女性が話したことを思いだし、


「地獄の業火我が剣となれ!」


 令が意識を発動させると刀から炎が立ち上りだした。が、令がその刀を振り回す前に炎が蜘蛛の腹に燃え広がり、蠅取蜘蛛が懸命に飛び跳ねだした。


『うん? 何がどうなった?』


 と、蜘蛛の状態が理解できないでいると、小人が説明し出した。


『やりましたね、旦那。蜘蛛は腹に書肺がありましてね、そこで呼吸をしているんですよ。そこを火で焼かれますと呼吸が出来なくなり、つまり死にますな』


 そう言ってる間に蜘蛛が動かなくなった。


『あれ? これで終わったのかな?』


『そのようですね。旦那はラッキーなのかも知れませんね』


『こんな状態になってラッキーはないでしょ!?』


 そう言ってると今度は人間のような化け物がやってきた。


『旦那、今度のは強敵ですよ!』


 小人に言われなくても分かってると思った側から攻撃され、またもや回避の一手で凌ぐ凌ぐ、逃げ回りそしてまたもやも逃げ回った。


『おい、これはどうしたら良いんだ?』


『旦那って聞いてばかりですね。少しは自分で考えたらどうです?』


『じゃ、どうやって考えるんだ?』


 ここまで小人に頼る令も情けないが、小人の方も過保護なのか、


『人型の化け物の弱点って何だと思いますか? 自分も人型ですよ』


 そう言われ令も考え出した。


 人型の化け物は武器を持って暴れまくっている、が、二本足の直立歩行だ。移動には体重移動を伴いワンテンポ遅くなっている。

 それを見分ければ回避も容易くなった。


 その上で小人から体重移動を伴わない回避を思い出させてもらい、軸足の回転で凌ぐ業を使い出した。


『そこです! 無防備になった化け物に魔法剣を突き刺すのです』


 こう、小人の指示でその化け物に止めを刺すことが出来た。


 安堵する令に、小人は厳しい表情で、


『今度のは人型ではありませんよ。ですから人間の常識を越えています!』


 これは万事休すかと令も覚悟を決めた。


 その化け物、ライオンの様相をし強さを誇示している。


 それで令も、

『うん? これは与し易いか? 要するの獣の理性だものな。ただ、能力値は高そうだ。実際に自分の攻撃が通じるかが問題か!?』


 そう判断した令は、先ほどの炎を刀に帯びさせ、一撃入れるつもりで間合いを詰めた。


『旦那、それは危ないですよ』


『なぜ? 試し打ちするだけだぞ?』


『相手の弱点を見破ったのですか?』


『いや、刃が通じるかどうか……』

 と言いながら令は一歩踏み出し、化け物と一瞬の交戦を果たした。


「うくくぅ!」

 交差した瞬間に令が化け物の尻尾に腹を打たれたようだ。


『だから言ったのに、あいつにどんな攻撃手段があるのか分からないでしょ。そう言うとこは間合いを取って相手を丸裸にしなければ勝てませんよ。もっとも、実力差があれば、それも問題にはならないでしょうが?』


『じゃ、実力は伯仲しているんだな?』


『今は、旦那の方が分が悪いですね。受けた傷が足を引っ張るでしょうしね。なら、いっその事カウンター戦術にしますか?』


『それしかなさそうだ。しかし、凌ぎきれるかな?』


『凌ぐしかないでしょ!』


 令はその後は風に柳戦法で受け流すことに全神経を使った。


 ライオンの攻撃は前足と尻尾の二パターンしか確認できなかったが、これならと令も応戦する気になった時、それを待ち構えていたのかライオンの方が回避行動をとった。

 空振りした令は前のめりになりつんのめって転がってしまった。


『しまった!』


 と思ったが遅かった。


 牙を剥いて襲いかかってくるライオンに、令は死ぬ思いで魔法に全てを託すしか無かった。


『氷の斬撃ーー!! 業火の炎!!』


 何を焦ったのか令は正反対の魔法を放った。


 しかし、ライオンの化け物は氷の刃に対応したために、次の炎には手遅れとなり全身が炎に包まれた。


「グォギョオオ!!!」


 そう吠えまくりながら転げ回る化け物に、その首をもらい受けると言わんばかりに襲いかかる令だが、もともと運動神経が鈍い彼のことだから、うまくいくはずもない。

 まるで畑を耕すように刀を地面に突き刺すばかりだ。


 それに見かねた小人が、

『旦那、魔法で止めを刺したらどうです? 刃に魔力を込めて放つんです』


『おぉ、そんな手があったのか!』


 令は喜んで斬撃を放つ、しかしながら、全くの出鱈目な魔法での斬撃だった、が、数発放って漸く仕留めることが出来た。


『これで終わったのか?』


『終わりましたね! おめでとうございます』


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