深夜の喫煙室にて
プロローグ
3月某日まだ寒の戻りで乾いた冷気が深夜の街を覆う東京の都心のある大手新聞社の編集フロアの片隅の喫煙室で二人の男がこんな会話をしていた。
「またか?」
初老のいかにもベテラン社員風の男はしかめっ面をしながら愛用のオーガニック煙草をくゆらせながら言う。
「またですよ、、、、」
答えたのはこちらはだいぶ若そうな若手の社員だろうか。
「これで7年連続だよな?」
「そうです、、」
「仏の顔も三度までとか二度あることは三度あると言うけどな、7年とか異常事態とちゃうか?」
「ホントですよね、今年こそは駄目だろうって皆な言ってましたからね。何しろ相手があの藤江聡太ですから、賭けても良いってひと沢山いましたよ。」
「おいおい、、まさかお前賭けたりしとらんよな?」
「まさか!って、ホントは賭けてもいいかなって少々は思いましたよ、でも未来は不確定だし、元々うちの親父が賭け事好きで、お袋だいぶ苦労したんで、お袋からは、お前大人になっても賭け事だけはせんときって、事あるごとに言われてましたからね、、」
「いいお袋さんやなぁ、賭けんで正解やったやんか。、」
初老の男はこう会話を締めくくると、燃え尽きかけたタバコをグリグリともみ消し言葉を繋いだ。
「さあ、ゲラも全部やり直しや、藤江勝ちでさっきまとめたやつな、ぜんぶぱぁや、お前残業出来るだろ?」




