最後に見た君の顔は、
君が学校に来なくなったのはいつからだろうか。
最後に見た君の顔はどんな顔だっただろうか。
君は今何をしているのだろうか。
そんな事を思いつつ今日も僕は、
君のいない学校に来ている。
僕の通う高校では途中で来なくなったり、
急に中退する生徒が他の高校に比べて少し多い。
学校自体に大きな問題があるという訳でもないのだが。
そしてある日君が学校に来なくなった。
何も言わず君は姿を消したんだ。
最初の二、三日は風邪でもひいたのだろう。
そう思っていた。
でも君の姿はその時から一度も見ていない。
僕が君に対して好意がある事は、
自分でもとっくに気づいていた。
君ともう一度会いたいと毎日思っていた。
君ともう一度喋りたいと毎日思っていた。
でも僕は君の連絡先さえ知らなかった。
君の事を好きなったのは、
一年の文化祭の時だった。
そして君の姿を最後に見たのは、
二年の文化祭の時だったか。
もう一ヶ月も前になるか。
一年の文化祭の時、
友人と一通り屋台を周り終えて、
友人と分かれてトイレに行った後の事だった。
廊下を歩いていると突然後ろから肩をポンポンと叩かれた。
「すみません、あの...」
透き通った女性の声が聞こえて振り向いた。
そこに君が居たんだ。
「ハンカチ落としましたよ」
透き通った声で君が言った。
「あ、ありがとうございます」
白く細い手で僕にハンカチを手渡し、
君は微笑んでくれた。
真っ直ぐに伸びたロングヘアーに白く細い肌、
そして眩しい笑顔の君に僕は恋をしたんだ。
それから運良く何度か話せる機会があり、
結構仲良くなった。
下校時間が合い一緒に下校した事もあった。
緊張して余り話せなかったが、
それはそれは幸福な時間だった。
そして君に恋をして一年が経った日。
そう文化祭の日。
君が居なくなってしまう日。
僕は君に告白しようと考えた。
文化祭中何度か君を見かけたがお互い友人と居て、
声をかけれる機会がないままだったり、
チャンスがあっても勇気がでなかったり。
君が居る焼きそばの屋台に買いにも行った。
君は僕に気づくとまた透き通った声で話しかけてくれた。
それでも僕は切り出す事も何処かに誘う事もできなかった。
そしてそのまま文化祭が終わってしまった。
自分の情けなさを改めて感じながら、
文化祭後のキャンプファイヤーを眺めていた。
暗い夜の真ん中で燃えるキャンプファイヤーの炎は、
一際眩しく輝いていた。
腰掛けていたフェンスから腰を上げて、
ふと隣を見た時だった。
少し先の方にキャンプファイヤーを見つめる、
君が居たんだ。
キャンプファイヤーの炎に照らされた君の顔は、
どこか少し切なげでもあった。
その顔に見惚れたままの僕はまた勇気が出ず、
今はこの顔を眺めておきたいと思った。
するとしばらくして君が僕に気づいた。
その時見た君の顔が、
僕が最後に見た君の顔だった。
どんな顔をしていたかはもう忘れてしまった。
その日から君の姿は見ていない。
もう一ヶ月か。
僕はまだ君に気持ちを伝えられていない。
今日放課後に君が学校の来ているという噂があった。
担任に呼び出されて職員室に居るという噂だった。
僕は真っ先に職員室へ走った。
でもそこに君の姿はなかった。
廊下に出て校舎中必死に君を探したよ。
これで最後かもしれないって思ったんだ。
最後に気持ちを伝えたいって思ったんだ。
夕日に照らされた放課後の校舎で僕は君を探し続けた。
僕の通う高校の校舎は迷路の様に入り組んでおり、
無駄に広く、無駄に教室がいっぱいあった。
そんな校舎に苛立ちながらも僕は必死に君を探した。
どれくらい探し続けていただろう。
疲れ果てて中庭のベンチに座り込んだ。
ハンカチを使う事も忘れて、
制服の袖で汗を拭いながら息を切らした。
ふと中庭から一階の窓の方を眺めていた時だった。
窓の奥の一階の廊下を女の子が通ったのが見えた。
君の姿の様に見えた。
いや確かにあの女の子は君だったのだと思う。
痛く重い足をあげて俺は後を追った。
君の居た一階の廊下に向かいまた必死に探した。
汗など拭く暇もなく探し続けた。
でも君の姿は何処にもなかった。
疲れ果てて再び中庭に戻り、
ベンチに寝転び空を見上げた。
いつの間にか僕は眠っていた。
夢を見た、君の夢を。
その夢の中で君は僕に落としたハンカチを手渡していた。
そして君は僕に微笑みかけていた。
初めて君と僕が出会った日の夢だった。
そこで目が覚めた。
目をこすって起き上がり、
夕暮れ時の暗い廊下を俯きながら歩いた。
今思い出したよ。
僕が最後に見た君の顔は確か、
あの時みたいに僕に微笑みかけてくれていたんだった。
「あの...ハンカチ落としましたよ」
その透き通った声に僕はゆっくりと振り向いた。
ご読了ありがとうございました。m(_ _)m
今回の小説はいつも以上に青春色強めに、
書いてみました。
自分でもこんな少し切なくでも良い青春を、
送れたら良いなと思えるくらいの、
作品にはなったので割と僕の中では、
良い作品の出来たかなと思います。
この作品を書くきっかけとしては、
リアルで僕の通う場所である女の子が、
突然来なくなって数日連続で休んでいたので、
もしかしたらもう来ないのかもなと思いながら、
この作品を思いつき書かせていただきました。
リアルの世界と少し連携して、
その女の子が来るか来ないかで終わり方を、
変えるようにしてみました。
結果その女の子は次の週には普通に来ていたので、
この終わり方にさせていただきました。
来なければ少し前の時点でおしまいにしようかと、
考えておりました。
話は変わりますがリアルが想像以上に忙しいので、
これからはもしかしたら月一更新が、
途絶えるかも知れませんのでご了承ください。
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