おっさんと光のぽんこつ
「でははじめましょう。」
少女の体からカクッと力が抜け、
俺の中に何かが入ってくる。
呼び出す精霊の名前はマナに決めた。
ヘルメスの時よりはいくらか落ち着いていたので思い出したのだが、
そういや娘が出来たらこんな名前にしようとか思ってたんだっけ…
勿論彼女なんか出来た試しがないので意味のない妄想だったんだが。
ちなみに男の子だったらカイルの予定だった。
目を閉じて体に浴びる光を感じる。
次いで草木に当たってキラキラと生命力が溢れるようなイメージを浮かべる。
その一つ一つを頭の中でより集め、
天の川のような煌めく粒の束にして、少女の体に注ぎ込む。
「煌めきよ。輝きよ。命の賛歌を携えて。
我が名はゲオルグ。
其の愛と喜びをささげ、心を共にする事をここに誓わん。
出でよ光の精霊! 汝が名は…マナ!」
命名の口上を述べると、光の粒が渦を巻いて
強烈に少女の体に吸い込まれていった。
「マスター。成功です。」
頭の中に直接ヘルメスが呼びかける。
少女の髪の色が白銀に変わっていき、目を開いた。
「ハイドーモぉ! はじめま…っ」
そして次の瞬間、顔を苦痛に歪めた。
「し…てぇぇぇぇぇぇええ?! イタイイタイイタイタイ!!!」
あれほど可憐だった少女が女の子が見せてはいけない顔を見せる。
「な、なんですかこれ?! おなか! おなか凄い事になってる!!」
「お、落ち着いて!」
手順はわかっていたはずなのだがパニックが伝達する。
「マスター。今から言う言葉を復唱させてください。」
「わ、わかった。」
ヘルメスの声でいくらか落ち着きをとりもどし、しっかり手を握る。
「こんな状態で呼んでしまってごめんよ。
でも頑張って。お願い! 君は光の精霊でその体は回復魔法を使えるんだ。」
我ながらなんて怪しい文句だろう。
ボクハワルイモンスターじゃないよって言われた方がまだ信じられそうだ。
少女は尋常じゃない痛がりようで視線を合わせるどころじゃなかったが
だが他にどうしようもないので信じて呪文を唱える。
「光を浴びて」
「ひ、ひかりを…あびてぇ…」
「命が栄える」
「い、いのちがぁ… は、ひゃ、ひゃぇぇぇ…」
少女は脂汗を流して痙攣している。かなりやばい。
「愛と喜びの奔流よ。」
「あ、あいと…よろこ…アダダダダダァ!!」
「マナ! がんばって! ヒッヒッフー。ヒッヒッフー。」
ヘルメスが俺の手を通してエールを送る。
でもさぁ…気持ちはわかるけどそれなんか違うくない?
「マナの名において権限せよ。」
「マナノナニ…ぅお痛ってぇぇぇぇ!!!」
「ヒール…ライト!!!」
光が彼女の体を包んだ。