おっさんと奇妙な予感
闇の中にいた。地面の感覚はない。
俺は椅子に座っている事に気づいた。
目の前にはテーブルが…
なにかドシャっと視界に赤がはしった。
あぁ、そうだ。この少女は…
黒い人型の影と目が合う。
奴はニタリと笑い…
俺は恐怖の叫びをあげて走りだした。
エントランスには死体、死体、死体。
前と同じように俺は扉を開けて外に出ようとする。
開けた先はまた同じエントランス。
死体がさっきより近くにきている気がした。
なんど扉を開けても同じエントランス。そして死体。
繰り返すたびに死体が近くに配置される。
そして俺は
「おぼっ!?」
息が出来なくて目が覚める。仰向けで嘔吐物を逆流させてしまったらしい。鼻がツーンとする。思わず顔を横に倒す。
「がっ…! はっ!」
嘔吐物を吐き出そうとする力と息を吸い込もうとする力がぶつかり体がおかしな事になる。
「マスター!」
ヘルメスが心配して声をあげる。大丈夫だと言いたいけど声が出せない。
「マスター! 大丈夫ですか!? マスター!」
俺は息を整えるのにしばらくかかってしまった。その間ずっと彼女を心配させてしまった事が情けない。
「…マナがいない…」
ヘルメスが呟いて俺もあたりを見回す。すると窓が開いている事に気づいた。
「探すぞ」
そう言って立とうとした瞬間、激しい頭痛とともに視界が歪む。
「マスター!?」
悪夢の影響にしては異常すぎる。まさかこれは…なんらかの攻撃をうけている?!
「急ごう。マナが危ない」
俺たちは夜の街を走り出した。
俺達は魂の領域で繋がっていて、ある程度の距離までなら大体の距離と方角がわかるようになっている。
幸い、彼女はまだ遠くにいっていないようだった。
「こっちだ」
そして、酒場の路地裏を通り抜けたところで倒れているマナを発見した。
「マナ! マナ!」
慌てて駆け寄り、彼女を抱き起すとツーンと息が酒臭かった。そして
「おぼぼぼぼぼぼ」
彼女がゲロを吐き出した瞬間
「おぇぇええええ!?」
なぜか俺も同時に吐きだした。




