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おっさんとおやすみ(1)

「マスター! これ可愛くないですか!?

どうです? ねぇ、ほら。ねぇ!?」

再び警戒モードに入り野生の言語で威嚇してくるマナを

串焼き肉で一発で手懐けて、俺たちは服屋に直行した。


マナはひっきりなしに服を取り換えるうえに

全部試着して俺に見せつけてくるので随分時間がかかってしまった。

ただ2つ幸いだった事がある。

多少の好みの違いはあったものの、どれも本当に可愛かったので

何も気を遣わずに思った事をそのまま口に出すだけで良かった事と、

彼女があまりボキャブラリーに関しては要求してこなかった事だ。

とにかく褒めてもらえればなんでもいいらしい。


「ヘルメスの分も今度買ってあげるからな」

俺が心の中で呟くと彼女がビックリして見上げた…気がした。

「わ、私のですか? 体はマナと共有なので必要ありませんが…」

「いいじゃん。俺が見たいんだよ。

今度二人で来た時ゆっくり選ぼう。な?」

「……マスター……」

髪の色も変わるし雰囲気違うんだよなー。

そうだ、動きやすいのとか好きそうだし

ポニーテールにするためのリボンでもプレゼントしよう。


なーんて思っていると

「まぁーすたー! ちゃんと聞いてます!?」

おっとと今日のMVPがおかんむりだ。

ただもうそろそろ決めてくんないかな…


ギルドでの手続きはすんなりといった。

宿屋で所在地の証明割符をもらうのも面倒臭いので

委託保証金を払ってその場で登録を済ませてもらう。

これなら何件か仕事をこなせば後で返ってくるので

現金があるならこっちの方がお得だ。


「ぷはー!」

夕食をとって部屋で体を拭くと生き返った心地がする。

なんか昨日の晩から色々あって死ぬほど疲れた気がする…

今日はもう早く寝ようそうしよう。

倒れこんだベッドが気持ちいい。


「マスターと一緒に寝るー!」

マナが抱き着いて俺の中に入ってきた。

その…アストラル的な意味で。

そっちの体のまま一緒に寝てくれてもいいんやで…


目を閉じると光が在った。

心の中でマナが話しかけてくる。

「まーすたー。夕飯のパンはちょっと硬かったけど

露店で買ってもらった串焼き肉は美味しかったですね~。

でも私本当は甘いものに目がなくて~。」


先ほどの夕飯の話から始まり、それ自体はすぐ終わった。

でも次の話。今日買った服の話…

と言うか服選びの時の話をあ~だこ~だ言い出すと

それがすっっっっっっっっっっっごい長かった。


俺は眠くて死にそうになって生返事を繰り返していると

マナは俺の子供の頃はどうだったとか仕事なにしてたのかなどと質問しだした。

「あぁ、俺は…」なんて返事をしようとすると

彼女は「ふーん。そうですかー。あ、それでですねー!」と、

速攻で聞き流して再び自分の話をはじめた。

彼女の中では俺の話も聞いてあげたから次は自分の話、という事なんだろう。

でも違う。俺は話を聞いてもらいたいんじゃない。眠たいんだ…!


彼女の話は続いた。

犬派か猫派か聞いてきたので猫と答えようとすると

強引に犬派に誘導しようとぐいぐい押してきた。

ときおり興奮するとまぶたの裏でどったんばったん大騒ぎして

強烈な光の点滅がクソみたいに眩しかった。

そして話は家を買うとしたらどういうのが好きかという話に至り…


「うるせぇぇぇぇぇええええええ!!!!!!!」

俺は布団をはねのけて絶叫した。

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