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おっさんと森の中

「も、もう歩けない…」

俺たちは森の中を歩いている。


あの後俺たちはなんとかマナに話を聞いてもらえるようになったので

事情を説明しようとしたのだが。

「こんな人気のない場所でうじうじやってないで

こまけぇこたぁいいから飲みながら話そうやぁ!」

と、言われひとまず街を目指す事になった。

流石光の精霊。明るいワー。


「え、マスター男の人なのに馬乗れないんですか?

プークスクス。ダッサァwwwww」

繋いでいた馬を外してヘルメスの後ろに乗せてもらおうと頼んだら

思いっきり煽られてしまった。

きっと彼女は自分が優位にたっていると思いこんでしまったんだろう。

「私がマスターに動物の扱いってやつを教えてあげますよ! てゅや!」

そう言って振り返った彼女のドヤ顔は忘れない。


馬と言うのは臆病で繊細な動物だ。

草を食んで下を向いていたところへ

死角から自慢のジャンプ力で思いっきりダイレクトに飛び乗られたんで

大層驚いたんだろう。

ヒヒィンと大きく前足を振り上げて背中のモノを落とすと

彼は全力で走り去ってしまった。

取り残される俺たち…

マナは「うぎゃーーーーー」とか言いながら

後頭部をおさえてゴロゴロと転がっていた。

…そして今に至る。


森の中で全力で迷子になられたらもはや死活問題である。

流石に取り返しがつかないのでヘルメスに交代してもらって

マナは俺の中にひっこんでもらったのだが…


「あはは。暑苦しいなぁ、ここ。うーん……出られないのかな?

おーい、出してくださいよ。ねぇ?」

残念ながら光の精霊にとって俺の心の中の居心地は最悪だったらしい。

牛乳を拭いて3日目の雑巾の匂いがすると言われた。

顔は見えないがきっと目が死んでる気がする。


「わ、私は好きですよ? マスターの心の中。

真っ暗で…本当に何もなくて…」

ヘルメスちゃんの優しさが目に染みる。畜生、泣けるじゃないか。

だからもうやめてください。マジでお願いします生まれてきてすいませんでした。

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